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お茶にしませんか

2017年10月20日芳野 直子弁護士

 私は、静岡県の東部で育った。

 そう!静岡県東部と言えば、世界遺産の「富士山」が鎮座する地域である。静岡の景勝地は、富士山との調和が必須である。ただの海岸や松林に、富士山があるだけで、あら不思議!日本一の風景が出現する。そんな中で、私が最も美しいと思うのは、整然と広がるお茶畑から望む富士山の風景である。なんといっても、私の通った中学校は周囲をお茶畑に囲まれており、お茶の摘みの様子は、穏やかなふるさとの風景でもある。夏も近づく八十八夜に、中学校で唯一許されたバイトである新茶の茶摘みで同級生たちが小遣い稼ぎにいそしんでいたのも懐かしい。

 静岡のお茶の歴史は、明治時代から始まる。幕府が倒れて、徳川の領地であった駿河の国に戻ってきた多くの旧幕臣たちが、お茶を育てることで再起をかけたのが、静岡のお茶の始まりだという。富士の裾野に、美しく刈りそろえられたお茶畑に、凜とした武士道の精神を感じるのは、そんな名残なのかと思う。

 そのお茶畑の風景が、変わってきている。耕作が放棄され、ぼうぼうに枝が伸びたお茶畑ならぬお茶林があちこちに出現しているのである。お茶の木は日本庭園の植木のような形だと思い込んでいたが、茶摘みをしないお茶の木は単なる雑木のようである。雑木越しに見る富士山の風景は、野趣あふれすぎて、武士道とはほど遠い。

 どうしたんだ~茶畑よ!と叫びたくなってから、ふと気がついた。

 私は、緑茶を飲まなくなっている!もしかして、茶畑の衰退は私のせいか?昔は、ご飯と一緒に緑茶、食後に緑茶、一息ついて緑茶、暇つぶしに緑茶、お客さんが来たら緑茶と、毎日何杯緑茶を飲んでいただろう。なのに、今は何を飲んでいるのか。台所を見渡すと、コーヒー、紅茶、ウーロン茶、プーアル茶、コーン茶、ルイボス茶、ハス茶等々、世界のありとあらゆるお茶が並んでいる。

 なんと私の狭い台所に、グローバル経済の拡大による、地域社会の没落と格差の問題が隠されていたのである。富士山は、愚かな人間(私だ!?)が新しいものに飛びついて、これまで長年かけて培ってきたものを失っていく様子をきっと、少し悲しい気持ちで眺めているに違いない。

 さあ、今日は仕事を早めに切り上げて、お茶にしましょう。おいしい緑茶はいかが?

写真1

整然と広がる茶畑

写真2

野趣あふれすぎる茶林

 

執筆者情報

弁護士名 芳野 直子
事務所名 横浜法律事務所
事務所住所 横浜市中区相生町1丁目15番地第二東商ビル7階
TEL 045-662-2226
Webサイト https://yokohamalawoffice.com/

 

 
 
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