ページの先頭です。
本文へジャンプする。
サイト内共通メニューここまで。

会長声明・決議・意見書(2015年度)

ヘイトスピーチを許さず、差別禁止基本法の制定を求める会長声明

2016年03月11日更新

近年、外国籍住民の集住地区を含む地域の繁華街や観光客が多数訪れる場所などで、しばしば、人種的憎悪や人種的差別を扇動又は助長する言動(以下「ヘイトスピーチ」という)が行われている。

神奈川県川崎市においても、昨年11月8日に「反日汚鮮の酷い川崎発の【日本浄化デモ】を行います」と告知され、集合場所の公園で「川崎に住むごみ、ウジ虫、ダニを駆除するデモを行うことになりました」と宣言されたデモが行われている。2016年1月31日にも同種デモが繰り返され、その回数は2013年5月以来12回に及んでいる。

ヘイトスピーチは、対象とされた外国籍住民の個人の尊厳(憲法13条)や法の下の平等(憲法14条)などの基本的人権を著しく侵害するばかりか、社会に誤った認識と偏見を広め、憎悪や差別や暴力などを助長するものであって、人種差別撤廃条約はこれを明確に禁じている。

この点、国連自由権規約委員会は、日本政府に対し、2014年7月24日に採択された総括所見において、差別、敵意又は暴力の煽動となる、人種的優越又は憎悪を唱道する全ての宣伝を禁止するべきと述べ、人種差別的な攻撃を防止し、また、加害者を徹底的に捜査・訴追・処罰するため、全ての必要な措置を講ずるよう勧告し、さらに、国連人種差別撤廃条約委員会は2014年8月29日に採択された総括所見において、人種差別を禁止する包括的な特別法を制定することなどを勧告した。

もとより、表現の自由の重要性は言うまでもないが、他者の人権を侵害し、差別と憎悪を扇動又は助長する言論は、表現の自由の濫用であって、許されないことは当然である。

京都朝鮮学校襲撃事件について、京都地裁は、人種差別撤廃条約上の「人種差別」に当たるとして、高額の損害賠償及び同校付近での街宣行為の差し止めを認め、大阪高裁も、最高裁もこの判断を維持した。また、2015年12月には法務省人権擁護局が勧告を発し、2016年1月には大阪市がヘイトスピーチの対処に関する条例を制定した。

神奈川県においては、外国籍県民の県政参加を促進するために外国籍県民かながわ会議を設置するなど多文化共生に取り組んでおり、また、神奈川県川崎市においては、外国籍住民との共生を求めて長きにわたり学校教育、社会教育の場で研鑽が積まれ、外国籍住民の公務就任についての検討と実践も積み重ねてきた。

私たちは、基本的人権の擁護と社会的正義の実現を使命とする弁護士として、ここに、ヘイトスピーチを決して許さないことを明らかにするとともに、国に対して、人種的差別禁止の理念並びに国及び地方自治体が人種的差別撤廃に向けた施策を実施するに当たっての基本的枠組みを定める基本法を制定することを求める。

2016年(平成28年)3月10日
横浜弁護士会
会長 竹森  裕子

 
 
本文ここまで。