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消したい情報

2013年06月11日大本 淳弁護士

何か知りたいこと,わからないことがあるとき,何を使ってそれを調べますか。おそらく圧倒的大多数の人が「インターネット」と答えることでしょう。

ありふれた話ですが,インターネットというのは本当に便利なのです。誰に対しても平等で,昼夜問わず,場所も問わず(スマートフォンをお使いの方も多いでしょう),大抵のことに一通り答えてくれます。

さらに,一度流れた情報はいつまでも消えず,瞬時に,どこまでも伝播させる能力を持っています。これに関連しますが,2012年に,欧州連合が「忘れられる権利」という考え方を提案し,話題になったことがありました。大雑把にいえば,インターネット上の個人データを,データ管理者に削除してもらう権利のことです。

自分にとって不都合な情報を忘れてほしいという気持ちは,わからないではありません。しかし,時間も空間をも超えてインターネット上に無数に散らばる,情報という無体物を,まるでシュレッダーにかけたり,あるいは消しゴムをかけるかのごとくきれいに抹消することは,容易ではないでしょう。それに,あちこちで削除が認められたら,インターネットの便利さや自由さが損なわれてしまうことにもなりかねません。

しかし一方で,若いときに犯した犯罪の報道がインターネット上に残り続け,その先10年も20年も就職できなくなるとしたら,それもまた困ってしまいます。その情報が社会全体の利益になるのか,本人に与える不利益はどのくらいかなど,様々な事情を考慮しつつ,削除すべきか否かを慎重に考える必要があるのです。

ところで,インターネットと比べて人間の脳はどうでしょう。個人差はありますが,過去の辛い記憶というのはいつしか忘れていきますね。また,五感の全てで情報を捉えることは,せいぜい画像と音声だけのインターネットには決してできないことです。生身の人間の脳というのは,なんて柔軟で器用なのだろうかと,ふとそんなことを感じてしまいました。

 

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