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成年後見人日記 世にも不思議なお話

2018年08月27日三浦 修弁護士

 その人は、幼い時から非常に攻撃的な性格で猜疑心が強く、話す内容は意味不明だった。何代も続く名家の子どもとして生まれ、その人が家の承継者となった。

 大きな屋敷を相続したが、屋敷は大量のゴミで埋め尽くされ、台所には,家族の骨壺が桐箱に入ったまま、無造作に転がっていた。

 菩提寺の住職の話では、寺には先祖の広大な墓所があり、墓石の前に代々土葬の方式で葬られているという。私は、思い切って、墓石の前の土を掘り返し、実質上、墓を作り直して、しっかり3体のお骨の納骨をすることにした。

 墓所の整備が終わろうかというころ、出張先の私のところに、その人が脳内出血で倒れ病院に緊急搬送されたと連絡がきた。私はすぐには帰れず、翌日病院に行った。その人は精神的に不安定になると大声をだして暴れるので、どうなっているかおそるおそる病室に入った。

 その人はベッドの上で体を起こし、窓の外を見ていた。私に気づくとにっこりと笑いかけてこう言った。「先生,いろいろご迷惑をおかけしました。」

 私はびっくりした。いつも目を吊り上がらせて怒鳴っていた人が、にこやかに謝罪の言葉を発している。そして、出血量が少なかったのですぐに退院したが、退院後も介護の世話をする周囲の人たちにお礼をいうようになったのである。

 後で確認すると、脳内出血で入院した日は,先祖代々の墓所の整備が終わり、3体のお骨の納骨を済ませた日だった。つまり、墓所の整備をして納骨をしたら、脳内出血を起こして性格が劇的に改善したのである。私はその人のご先祖の「意識」を強く感じた。

 退院後のその人は,周囲に感謝しながら、施設で穏やかな生活を送った。今年亡くなられたが、棺の中のお顔は、笑みさえうかべ、実に穏やかな表情であった。

 

執筆者情報

弁護士名 三浦 修
事務所名 日本大通り法律事務所
事務所住所 横浜市中区日本大通18番地 KRCビルディング5階
TEL 045-664-5291
FAX 045-664-5292

 

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