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もしもその時が来たら

2020年07月03日狩倉 博之弁護士

 緊急事態宣言により裁判所の期日が取り消され、法律相談も中止され、この4月は弁護士になって以来20数年ぶりに、仕事や弁護士会の活動に追われることのない時間を過ごしました。来し方行く末を考える機会を与えられ、家族や事務所のスタッフ、顧問先・依頼者からの日頃のご恩に感謝し、自分にとって本当に大切なものを確認できたような気がします。

 宣言中、裁判所や弁護士会はその機能を停止したといわざるをえません。新型コロナウイスの感染拡大防止のため致し方ないことではあったのでしょうが、ほぼ全面的にまで停止するほかはなかったのだろうかとの思いもあります。裁判所や弁護士は利用者の権利や自由を護り、実現することを使命とし、時に利用者の生命にも関わる立場にあると自負してきましたが、宣言下でも治療にあたり続けた医療現場の情報に接するにつけ、司法の脆弱性を感じずにはいられませんでした。何よりそのような状況が大きく社会問題とはならなかったことは、司法の社会における必要性の程度を表しているようにすら思え、とても残念でした。

 さりとて、私自身、偉そうなことが言えるような行動がとれたわけではなく、事務所こそ開けてはいましたが、業務時間を短縮し、予定のない日は臨時休業にし、面談も自粛していました。これではいけない。こんな時だからこそ自分を必要としてくれる人のためにできることをしようと考えられるようになったのは、ゴールデンウイークを目前にしたころで、感染予防をできる限り図りつつ業務を継続するための体制整備を大慌てで開始しました。マスク着用、手洗い、消毒は宣言前からお願いしてきていましたが、所員と依頼者に徹底してもらい、面談スペースを限定して、事務所内のそこかしこにアクリル板を設置し、換気に努めるようにしました。リモートによる面談ができるようPC、カメラ、スピーカーフォン、ヘッドセット等を準備し、各種インターネットサービスも導入しました。毛嫌いしてきたSNSも所内の緊急連絡のために始めることにしました。

 人類の歴史は感染症との闘いなどと言われますが、それを克服することで今日の進歩と進化があるのだと思います。新型コロナという不幸な経験を今後にどのように活かしていくのかが重要だと思います。緊急事態宣言は解除されましたが、第2波、第3波が予想され、いつかはおきるだろう大地震も避けて通ることはできません。最高裁判所は緊急時の業務のあり方を検証するようです。弁護士会はどうするのでしょうか。もしもその時が来たら、その時は司法が機能し、社会的役割を果たせていることを心から願っています。

 そのような大きな課題に対し私自身は無力ですが、自分の身の丈にあったところで、身近な大切な人たちのために、できる備えをしていきたいと思っています。

写真1
写真2

事務所内のアクリル板

 

執筆者情報

弁護士名 狩倉 博之
事務所名 狩倉総合法律事務所

 

こちらに記載の事務所情報等は執筆当時の情報です

 
 
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