横浜弁護士会新聞

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20003年2月号(4)

 
新人弁護士奮闘記 第54期 田中 弘人
たかが一年されど一年
 「今まで何してた?」
 実務に入ってからの一年、自問自答の連続であった。
 司法試験合格までに六法の基本を身につけ、司法修習ではその実務への生かし方を学んだはずであった。しかし、これがそのまま実務で生かされることは少なかったように思う。依頼内容が「私道」、「登記」、「税」等々これまでの分野外の問題であったり、事件処理のポイントが法律論より適切な事件処理方針の見極めにあったり、あるいは抽象的に法律上の権利があることは明白でもその具体的内容の確定が難しかったり等々、その理由は様々である。司法修習で学んだことをそのまま生かすことができず、思わず冒頭の言葉になったのである。
 しかし、弁護士の活動領域のこの広さである。司法修習で、学んだことだけで乗り切れるわけがないということに気づくのには、それほど時間はかからなかった。となれば、あとは、未知の問題にどう前向きに対処できるかであろう。実務をこなすには余りに無知であることを正面から受けとめ、面倒くさがらずに資料にあたる。先輩弁護士に尋ねる、官公庁に直接聞く、等々とにかく未知のままにしておかないように心がけねば依頼人の信頼に応えられるわけがない。「未知の問題に前向きに対処する」。今となっては当たり前のことだが、この言葉を体験的に学ぶことができたことが、この一年で最も大きな収穫だったように思える。
 ただ、活動領域の広さ及びこれからの弁護士生活の長さを考えれば、この一年で解消できた未知は、ほんの僅かに過ぎない。とすれば、自分の弁護士活動一年目は「たかが一年」でしかない。ただ、自分なりに収穫の多い一年という面からは「されど一年」ともいえるのではないかと、密かに思っているのもまた事実である。充実した弁護士生活一年目。支えてくれた諸先輩弁護士及び事務局に感謝しつつ、二年目に向けて気分を新たにしているところである。

賀詞交換会・新年会開かれる
 一月一〇日、ロイヤルホールヨコハマにおいて、恒例の賀詞交換会が開催された。横浜地方裁判所所長、横浜家庭裁判所所長、横浜地方検察庁検事正を来賓として迎え、七九名の会員が和やかに集まった。
 池田会長の年頭挨拶では、当会の財政が好転しているとの明るい報告がなされた。
 また、長年当会に貢献してきた会員に対する表彰式がとりおこなわれ、会長より各々に表彰状と記念品が授与された後、川又会員が被表彰会員を代表し挨拶を行った。自らの戦争体験を振り返り、有事法制問題、弁護士費用敗訴者負担問題等、未だ弁護士として取り組むべきことがあるとの、気概溢れる内容であった。
 引き続き、夕方から中華街の同發新館において、新年会が催され、会員及び弁護士会事務局職員が懇親のひとときを過ごした。一同お楽しみの福引きでは、一等デジタルカメラ、二等折りたたみ自転車という豪華商品を巡って、会場は熱く盛り上がった。
被表彰会員(表彰順、敬称略)
一 本会在会三五年の会員
   矢野勝人・武下人志・関孝友・佐久間哲雄・佐藤直・横溝徹・佐藤卓也・大木章八・横山秀雄・澤野順彦・塚越隆夫・川又昭・山登健二
二 本会在会五〇年の会員
   塩田省吾・永田喜與志・小林徳太郎
三 法曹在職五〇年以上にして本会在会二五年の会員
   石原定美
四 喜寿の会員
   大津丞・根本孔衛・・野村幸雄・杉山修・蕪山嚴
五 米寿の会員
   有重保・永田喜與志
六 卒寿の会員
   石原定美・野本三千雄
七 白寿の会員
   田中盈

私の修習日記
ただ今、弁護修習悪戦苦闘中
第56期司法修習生 衛藤 正道
 弁護修習は意外に(?)大変だ。これがこの二か月間の弁護修習の一番の感想だ。
 第一に、私の指導担当の勝山先生の下には、多種多様な事件が持ち込まれる。賃金請求に、交通事故・医療過誤の損害賠償請求、あるいは借地・借家や破産の相談に、刑事弁護等々。私は、これら事件の中のいくつかについて、訴状や各種申立書、弁論要旨等を起案する。当然、知識面で知らないこと、わからないことがたくさん出てくる。そんなときは、まず自分で調べることから始まる。研修所の白表紙を始め、各種基本書や実務書を読んだり、インターネットを利用して調べる。私の調査力は高がしれている。しかし、不明点、疑問点が全てわかるわけではない。そこで次に、先生に尋ねる。先生は、過去の類似事件の記録を引っ張り出すなどして、わかりやすく説明して下さる。時には、「聞いてみれば」と、裁判所にダイアルし、受話器を手渡す。「お尋ねしたいのですが、建物収去土地明渡請求訴訟で、土地所有権に基づく場合、建物の価格は訴額に加算するのでしょうか?」と、ぎこちない声で、民事受付に尋ねたこともあった。とにかく、いろいろな方法・手段を駆使し、多種多様な事件について、様々な起案を適切かつ迅速にしなければならず、弁護修習は大変だ。
 第二に、弁護修習は、混沌とした事実や証拠を、裁判所に納得してもらえるように自分で整理しながら起案するので大変だ。先生は、自分が言いたいことのみを話す依頼人からも、必要な情報を聞き出していく。そして、依頼者からの話と提出された文書等から、事実関係を明らかにし、事件の争点や決め手を把握し、事件処理方針を決める。私は、それから起案するのだが、実務経験がない故に、先生とは異なり、事実関係や事件の争点・決め手がよく理解できていないことがある。また、白表紙起案のように、整理の仕方がある程度予測できるような形で、事実と証拠が示されていない。そのため、いざ起案するとなると、何から、どう手をつけていいのか戸惑うことが多い。
 第三に、弁護修習は、体力的にも大変だ。弁護修習の前の刑裁修習では、一日中裁判所内にいて、裁判官室と法廷との間を行き来すればよかった。しかし、弁護修習では、昨日は東京地裁、今日は横浜拘置支所、明日は千葉地裁と移動が続くこともある。しかも、滞在時間が数分のこともある。まさに、弁護士には体力勝負の面があると実感した。
 このように私にとって、弁護修習は苦労の連続だが、当然、喜びもある。苦心した起案が完成したときの達成感は何ともいえない。また、最初の一か月は事件の記録を十分に読むことができず、法的手続についても不勉強で、先生のお話を一方的に聞くことが多かった。それが二か月目に入り、何とか先生と議論(「話合い・会話」という方が正確か)ができるようになったもの、自分が少しだけ成長した気がして何だか嬉しい。
(指導担当 勝山勝弘会員)

訃報
お悔やみ申し上げます
扇 正宏 会員
平成一四年一二月二一日
ご逝去
享年八〇歳
大正一一年一月二日生
平成四年二月二〇日当会入会

いろいろな相談にお応えします。
横浜弁護士会総合法律相談センター
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編集後記
 正月に膝を負傷して、しばらくの間右足を引きずっていた。そんな足で一〇〇メートル先の店に買物に行ったら、これが遠い。時間はかかるし足が疲れる。足が悪いと歩くことがこんなに大変だったとは。怪我した夜は楽な姿勢が見つからず寝返りも打てず痛み止めで寝た。病気や怪我は経験しないと分からないようです。
 新理事者も決まり、ようやく来年度の弁護士会を考えられるようになりました。
デスク 安田英二郎 一面担当 市川 統子 二面担当 伴  広樹
三面担当 岩田 武司 四面担当 浜田  薫

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