横浜弁護士会新聞

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2004年3月号(2)

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韓国 水原(スウォン)地方弁護士会と姉妹提携─調印式と記念品交換行われる─
 「大韓民国の水原(スウォン)地方弁護士会が貴会との姉妹提携を希望している。できたら10月から12月に調印のため来日したいと言っている。至急御検討願いたい」このような連絡が神奈川県国際交流課から入ったのは昨年9月頃のことでした。水原地方弁護士会は首都ソウル近郊の京畿道(キョンギドウ)全域を管轄する韓国第二の規模の弁護士会です。ちなみに京畿道は日本の県に当たる行政単位で、神奈川県と姉妹提携をしており、水原市はその県庁所在地です。首都との位置関係や会のネーミングがどこか当会と似ています。ソウルやプサンの地方弁護士会は既に日本の弁護士会と姉妹提携をしており、スウォンも規模的に適当な日本の弁護士会を捜して当会に白羽の矢が立ったようです。外国の弁護士会と姉妹提携をして相互の司法制度などの情報交換や研究交流をする例は既に他会には相当数あることを確認して、当会もこの申し入れを受けることとし、10月の常議員会で承認をいただいて、その旨スウォン側に回答したわけです。
 姉妹提携受諾の返事をスウォン側にすると、ほどなく12月26日(金)に調印式のため当会を訪問したい旨の連絡が入りました。この日は当会の仕事納めであり、一旦は日程変更を申し入れましたが、スウォン側の強い希望で同日に調印式を行なうこととなりました。
 当日午前10時すこし前に、水原地方弁護士会の姜昌雄(カンチャンウォン)会長始め8名の先生方が来会され、弁護士・職員一同拍手でお迎えしました。その後、5階大会議室で第一回交流会議を開催し、双方の会長挨拶、出席者紹介、スライドによる当会紹介の後、両会長が「交流に関する合意書」に調印し、記念品の交換をしました。当会からは獅子を描いた鎌倉彫の飾り盆を贈り、スウォンからは新羅時代の古墳から出土した陶製騎馬人物像の複製(本物は国宝)をいただきました。役員室に飾ってありますから機会があれば御覧下さい。さて、今後は毎年交互に訪問し合い、共通課題の討論、研究を行なうことになっており、来年度は当会が訪問する番です。両会の交流が末長く充実したものになることを望んで止みません。

当会より贈った鎌倉彫の飾り盆(左)と
スウォンからいただいた
陶製騎馬人物像(複製・右)
(副会長 影山 秀人)

改正人事訴訟手続法の研修会 人事訴訟が家庭裁判所へ
 人事訴訟の管轄を地方裁判所から家庭裁判所に移管することを骨子とする改正人事訴訟手続法の施行が、本年4月1日と目前に迫ってきた。そこで、当会会員の研修を目的として、1月21日、横浜家庭裁判所から、近藤ルミ子裁判官をお招きし、改正人事訴訟手続法のポイントや具体的な運用についてお話をいただいた。応募が殺到したため、会場も県民ホールの大会議室に変更され、当日も座りきれない会員が出るほどの盛況で、会員の関心の高さが窺われた。
 研修は、午後3時から約2時間行われたが、(1)家事調停手続と人事訴訟の関係 (2)事実の調査 (3)参与員制度の3点を中心として解説がなされた。
調停と訴訟が同じ裁判所に係属するため、調停の内容が訴訟の結果に影響するのではないかとの点については、調停と訴訟とは手続的に完全に分離されており、調停で提出された資料や、話された内容が、当然に訴訟にも引き継がれるわけではないこと、調停記録を書証として取り扱うとしても、記録の取り寄せが必要であり、取り寄せた記録については、家事審判規則第12条により、裁判所による裁量が働くので、調停で無防備で話された内容がそのまま証拠として提出されることはないこと、といったことが話された。
2 事実の調査については、裁判官による審問、調査官による調査が考えられるが、附帯処分の判断に必要な範囲に限られ、証拠調べだけでは判断できない場合の付随的な処分に過ぎない点が強調された。調査の場面としては、離婚訴訟の当事者が互いに親権を譲らず、いずれが適当か証拠調べでは判断できない場合などが想定できる。しかしながら、養育費等の子の監護に関する処分や、財産分与等については、証拠調べによる判断が可能で、調査官による調査は全く考えていないので、過度な期待はしないで欲しいとのことであった。
3 参与員の制度については、争点整理が終わり、集中証拠調べの段階で、参与員の関与を想定しているとの説明がなされた。また、参与員については、既に一部の面接も終えているが、調停委員の候補の中からは選出していないとのことだった。
 近藤裁判官の解説は、「エースを送り出しました」という家庭裁判所所長の言葉通り、実際に予想される運用面も含めて、平易かつ詳細なもので、会員にも大変参考になるものだった。

債務整理を中心に忙しい毎日 吉川・林両氏による過疎地法律事務所の現状報告
 1月23日、当会会館において宮崎県弁護士会所属の吉川晋平氏と高知弁護士会所属の林良二氏を迎え、過疎地における法律事務所の話を聞く懇談会が開催された。両氏はいずれも最近まで当会に登録していた会員で、吉川氏は3年の期限付で日南公設事務所の所長となり、林氏は四万十川の辺りに新たに事務所を構えて経営に当たっている。
 まず、過疎地ならではの共通の事情として、依頼者や相手方の顔を街で見かけたり、用事もない人が事務所を訪れたりといった濃密な人間関係が報告された。そのためかプライバシーの観念も希薄であり、やや戸惑うところも。
 大方の予想に反したのは、これまでに一番仕事をしていると吉川氏に言わせるほど、債務整理を中心にした業務に追われている現状であり、泣き寝入りなどによって埋没した事件が、本来の解決の手段を見出している姿が浮き彫りにされた。
 地域との関係では、林氏が公設事務所を過渡的なものと捉え、地元に根付くことを主張したのに対し、吉川氏は、親密になりすぎるとやりにくいことを冗談交じりにあげ、2、3年で交代することが望ましいと話していた。
 両氏の話は、過疎地における法律事務所の意義と必要性について、会員の理解を深めるよい機会になったが、一方、地元との距離をどう置くかにも難しさが感じられた。
 なお、林氏は会場へのお土産にたくさんの文旦を持参し、大雅飯店での慰労会では、吉川氏が持参した地元焼酎が振舞われた。

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