横浜弁護士会新聞

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2005年6月号(1)

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法科大学院、この1年を振り返る 法科大学院教員座談会
 法科大学院がスタートしてから1年が経過した。そこで、当会会員の法科大学院教員にお集まりいただき、さまざまなテーマについて本音で語る座談会を開催した。
出席者(敬称略) 川島清嘉 杉原光昭  輿石英雄 若田順(以上、横浜国立大学法科大学院) 森田明(神奈川大学法科大学院) 安田英二郎(関東学院大学法科大学院) 澤野順彦(立教大学法科大学院)
授業開始までの準備
▼授業開始までにどのような準備をなさったのでしょうか
 文部科学省にシラバス(自分が担当する全授業の講義予定表)を提出しなければならないのですが、これがなかなか大変でした。1コマずつに何をやるかをかなり詳しく書かなければならず、本当にできるのかどうか自問自答しながら四苦八苦して作りました。
輿石 担当科目の「高齢者・障害者問題」は、当初週1回の予定が3日間8コマの集中講義ということになり、8コマ分のレジュメを一度に作成しなければならなくなって、これが非常に大変でした。
授業の工夫・苦労
▼実際の授業で工夫されている点やご苦労されている点をそれぞれお聞かせください
澤野 担当科目の「民法基礎演習T・U」では、判例百選を教材として使用しましたが、解説部分だけではなく、1審から全ての判決文を読ませました。また、学生のレベルもまちまちなので、裁判の合議体を意識して3人1組で学習させました。
川島 担当科目の「法曹倫理T」では、裁判所・検察庁を訪問して仕事のやりがいを話してもらったり、企業法務や知的障害者施設の人にも話をしてもらいました。
杉原 担当科目の「民事実務演習」では、学説・判例がこうだからという答えは許さず、自分がどう考えているのかを重視しました。議論が白熱して授業を2時間以上延長したり、それでも足りずに私の研究室にまで来て議論を続けるなんてこともありました。
輿石 自分自身が現実に扱った事件や新聞報道など、なるべく具体的事例を使って説明しました。
 最近の学生は自宅で起案させると時間をかけて資料を探すので、よくできます。ただし、それでは本当の力がつかないので授業内容をあえて事前に知らせず、その場で考えさせるようにしています。
安田 私はその反対で、ほぼ毎回課題を出します。こちらとしては、たくさん教えたいのでレジュメを詳しくしたいのですが、そうすると学生はかえって勉強しなくなるというジレンマがあり、苦慮しているところです。
森田 担当科目の「リーガルクリニック」では独自性を持たせようとして、地方自治や国際人権についての相談も受け付けています。また、他の科目では1週間前倒しで授業内容を学生に対してパソコンで発信するシステムをとっているので、これは正直大変です。
若田 私は、今年8月に3日間の集中講義を担当する予定ですので、まだ手探りの状態です。学生にとっては新司法試験に合格するのが最大の目標なので、新司法試験をにらんだ授業をやるべきか、非常に悩んでいます。
共同担当科目における他教員との連携
▼科目によっては研究者教員等と共同で授業を担当する場合がありますが、その際に他教員との連携についてご苦労されている点はありますか
川島 具体的事例の提供は実務家教員、学問的問題の解説は研究者教員、という役割分担でやっています。実務家教員と研究者教員の意見が対立すると学生は喜びます。お互いに遠慮してしまうと議論が盛り上がらずよくないですね。
 私が担当している刑事系科目では、実務家は事例をたくさん持っていませんので、少し民事とは違いますね。また、刑法の因果関係など近時大きく動いている判例・学説の分野では、研究者・学生は知っているのに実務家が知らないなんてこともあり得ますので、私自身も勉強しています。それから、連携とは少し違いますが、単独で持っている科目もお互いに授業参観をして相互にチェックしあっています。
法科大学院教員と弁護士業務との両立に関する苦労
▼法科大学院教員と弁護士業務との両立で特にご苦労されている点はありますか
森田 新しい事件をなるべく受けないとか、会務や重要な役職を減らしてもらったりして、とにかく時間を作るよう心がけています。
安田 弁護士の仕事は波があります。これに対し、授業は毎週必ず来ますので、なるべく早く帰って自宅で準備をしています。夜中まで準備することもあり、大変といえば大変です。
 授業以外にも教授会が月1回程度あります。また、各自1つは委員会に所属しなければならず、それなりの負担はあります。
学生の印象など
▼学生に実際に接してみて、どのような印象を持たれていますか
川島 1コマ90分の授業について平均4〜5時間の予習をしており、今までの法学部の学生と比べれば、勉強量は圧倒的に多いと思います。ただ、予習に時間をとられてしまって復習の時間がないことで学生は悩んでいるようです。
杉原 学生は総じて意欲は高いし、熱心です。ただ、何をどこまでやったらいいのか分からないままやっている感があります。これは、教える側にも多少責任があるかもしれませんね。
▼学生と授業以外で交流することはありますか
澤野 一定の時間帯に学生が研究室に自由に出入りできる、「オフィスアワー」という制度があります。また、私の担当科目の「民法基礎演習」では早期に学生とコンパをして、各自の気質を把握した上で、それを授業に生かすよう心がけました。
▼学生から授業の評価を受けることはあるのですか
川島 横浜国大では、前期・後期に各2回ずつ学生から教員評価アンケートをとります。その結果を大学院側で取りまとめて、個々の教員にフィードバックするシステムになっています。
澤野 立教も同様ですが、他の教員の情報もある程度分かりますので、自分の授業の参考となります。学生の要望を吸収する点においても、学生による授業評価は意味のある制度だと思います。
1年経っての感想など
▼最後に、1年経っての感想・反省点・抱負などをお聞かせください
森田 自分自身のためにも非常に勉強になったというのが実感です。
輿石 学生との交流が楽しく、やって良かったと思います。クリスマスには寄せ書きまでもらいました。ただ、双方向の授業をめざしていたのですが、集中講義であったためレジュメの準備に時間を取られてしまい、そこまで手が回らなかったのが反省点です。
若田 私の担当はこれからですが、ある意味人生をかけている学生の期待をきちんと受け止められるよう自覚して授業に臨みたいと思っています。
▼本日はありがとうございました。今後もがんばってください。
(聞き手 二川裕之)


山ゆり
 4月に目の手術をした。手術といっても病気治療ではなく、視力矯正術(LASIK)である。ご存知のない方のために申し上げると、角膜の表面を機械でカンナのように削ってフラップ(蓋)を作り、フラップをめくってレーザーで角膜内部を削り屈折角度を矯正した後、フラップを元に戻すというものである
医師の説明によれば失明の危険はなく、手術時間は両眼でたった20分とのこと。ただし、誰でもできるものではなく、強度の近視であると角膜内部をより深く削らなければならないため、角膜の厚みと近視の度合いとの相関関係により、約4人に1人は手術適応がない。LASIKを受けた有名人はプロゴルファーのタイガー・ウッズ。プロ野球選手や芸能人も多数やっているそうだ
さて私の場合。術前の視力は左右ともに0・04。分厚い眼鏡やコンタクトレンズを常に手放せない状態であった。ところが手術終了後10分ほど休憩して目を開くと、世界が一変した。術後の視力は右1・5、左1・2。入院の必要はないし、手術をした翌日から仕事もできる。術後の痛みも多少の異物感のみで、それも1日で解消した
この手術には最大の難点が1つだけある。手術時は目に局所麻酔をするので全く痛みはない。ただ、自分の角膜を削られているのが全部見えてしまうのだ。
(二川裕之)

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