横浜弁護士会新聞

2006年7月号  −1− 目次

悩みつつも明るく、ときには楽しく 木村体制始動 平成18年度通常総会
 5月24日、当会会館において、通常総会が開催された。木村良二会長から笑顔の所信表明があった後、すべての議案が満場一致で可決された。平成17年度決算は黒字決算となった。平成18年度予算は司法支援センターへの業務移行などの影響で前年度より赤字幅が広がるが、厳正な予算執行で平成18年度も黒字決算に導いてもらいたい。
会長挨拶(所信表明)
 木村会長は、所信表明において、自身が就任披露挨拶で言及した3つの課題、すなわち、司法支援センター開設への対応・ADRの整備・若手弁護士の育成支援が重要であることを改めて述べ、特にこの10月に控えた司法支援センター開設について全会員の協力を求めた。更に、これ以外にも重要な課題として、綱紀懲戒事務停滞問題に言及し、発生した問題は前執行部の段階で処理することができたが、今後とも、会務全般にわたり再発防止の対策を講じていきたいとした。今後導入される裁判員制度については、「裁判員劇」の実施等を通じて、弁護士が制度に的確に対応できるようにしていきたいと語った。会長は「悩みつつも明るく、ときには楽しく取り組んでいきたい。」と述べ、最後は笑顔で締めくくった。
議長・副議長指名
 議長には高橋理一郎会員・副議長には橋本吉行会員がそれぞれ指名された。
新入会員・退会者報告
 延命政之副会長から、60名の入会者と1件の弁護士法人の入会、18名の退会者があった結果、当会の現在会員数は、832名(外国法特別会員2名を除く。)と6法人になった旨の報告があった。
平成17年度会務報告
 小口千惠子前副会長より平成17年度の会務報告がなされた。
 平成17年度の会務の特徴は2点ある。第1点は、綱紀懲戒事務の大量停滞事故が判明したことであり、第2点は、司法改革実行元年といわれた年であったことだ。
 第1点については、事件管理を制度化し、複数担当制にするなどの対策がとられたほか、臨時総会を開催して会としての責任を明らかにした。
 第2点は、日本司法支援センターの設立・運営に向けての活動、裁判員制度実施に向けての模擬裁判の実施、労働審判制度実施に向けての模擬労働審判の実施、法教育センターの開設などである。
 その後、支部・調査室・財務室・事務局運営室や各委員会から、平成17年度の実績や、今後の方針について報告がなされた。
第1号議案 平成17年度 決算報告承認の件
 平成17年度会計担当の前田一前副会長から右議案につき報告がなされ、満場一致で可決された。
 報告によると、平成17年度は黒字決算であり、前年度より黒字幅が増加した。ただし、これは、新設の司法改革関連特別基金の収入に支えられたものであり、同基金を除いた財務状況は前年度とほぼ同じである。
第2号議案 平成18年度 予算議決の件
第3号議案 平成19年度 4,5月分暫定予算議決の件
 平成18年度会計担当の弓場正善副会長から右2議案につき、説明がなされ、満場一致で可決された。
 本年度の一般会計予算は赤字であり、前年度予算よりも赤字額が増加している。
 赤字額増加の主な原因は、司法支援センターへの業務移行に伴い、国選弁護人手数料収入と法律扶助協会人件費負担収入が減ること、同センターに移行する業務はあるが会の事務量自体が増加していることから職員数を減らすことができず職員費はむしろ増加すること、パソコンシステムの刷新に伴いリース料・同保守費が増加していることである。
 予算における赤字幅が拡大していることから、繰越金を考慮しなければ決算額は赤字も予想されるが、繰越金を考慮すれば、会費値上げの問題はすぐには発生しない見込みである。
第4号議案 各種委員会委員等推薦の件
 綱紀委員会、懲戒委員会、資格審査会の委員及び予備委員の選任が辞任・欠員のため上程され、満場一致で提案どおり可決された。

地域色豊かな未知との出会い
 「歴史的な大雪…。」と地元の人達にも言わせたほどの暴力的な?冬を越え、私が横浜弁護士会から山形県米沢市の公設事務所に赴任をして、はや1年が経った。ここ米沢では目下一斉に花が開いて春の喜びに溢れており、悩みを抱えて事務所を訪れる人々にもきっと春は来るだろうと言わんばかりの迫力に満ちている。横浜では意識することも少なかった四季折々の情緒・変化は実に見事である。
 この1年間、事務所開所後最初の相談が永小作権に関するものであったり、大雪で倒壊したビニールハウスの相談などがあったり…。渡された名刺の裏に上杉鷹山公の肖像画が描かれていることもあれば、興奮した相談者の話し言葉はさっぱり分からない…。また、百名山に囲まれた都市らしく、山岳事故の法律問題に関する講演を頼まれるなど、地域色豊かな未知との出会いに、喜びと戸惑いも少しだけ感じて、あっという間に過ぎていった。そして、仕事以外でも、冬は雪で趣味のテニスができないことから、新たにスノーボードを始め、地元のお祭りにも積極的に参加するなどして、地元の自然や文化を満喫している。っと、このようなことばかり書くと、「米沢に遊びに行ったのか!」とのお叱りを受けそうである。
 現在の事務所の状況は、幸い、予想以上に多数かつ幅広い分野の相談依頼が寄せられ、地元出身の事務局にも恵まれて、なんとか経営も軌道に乗ってきた。しかし、他方で、県外の悪徳業者の食い物にされ莫大な損害を被りながら、回復も難しいような事件の相談が後を絶たず、忸怩たる思いをすることも多い。また、米沢では、多重債務のみならず、医療過誤等の専門性の高い分野における事件も多く、とても私の事務所だけでは対応しきれない状況がある。加えて、地元企業の弁護士への期待も大きく、公設事務所の枠組みでは限界も感じているため、現在、法教育の普及を検討しており、地元定着法曹の養成と称して、事務所の空部屋を地元の司法試験受験生に開放する試みもしているところである。
 横弁の皆様からの応援を頂き、恵まれた環境の中で、弁護士不足の解消や様々な経験の機会を与えられたことに大変感謝している。残りの任期も、感謝の気持ちを忘れず、一生懸命、前進していきたい。
 暁 元会員)

山ゆり
 ローマ在住の作家、塩野七生氏が歴史事実と歴史認識の違いを厳密に考える時期が来ているという
 歴史事実は共有できるが、たとえば韓国人と日本人が歴史認識を共有することは困難である。そこで、アーカイブ(歴史的史料)の意味と価値は、前者をできるだけ客観的に探究することにこそある。但し、歴史事実もそれを記す人間が介在する点で主観を完全には払拭しきれない
 我が国にとって、最も必要でかつ不足している歴史事実は、昭和期以降ならびに米占領時のものである。学校の歴史教育に於いてもこの部分の欠落が目立つ
 例えば、彼の戦争で私の母の2人の兄は、1人はガダルカナル島で、1人は中国で還らぬ人となったが、同じ戦死であっても、その意味(歴史的認識)は異なるものである
 あの戦争全体が侵略か否かと評価することの無意味さは、歴史事実を丹念に調べることによって容易に気づく
 世界史的に言えば、1492年のコロンブス以来、白人の世界支配が開始されたが、歴史的事実として、当時少なくとも約200万はいたという北米先住インディアンが1890年頃にわずか35万人に減少し、南米の先住インディアスも約1億1000万人から1570年には約1000万人へと激減している
 この歴史的事実につき、白人の先住民への征圧・略奪等が認識されねばならないところ、これらを語るアーカイブが極めて少ないし、又、公教育では殆ど触れられていないところでもある
 さらには、キリスト教の神の名の下に、北・南のアメリカ大陸、アフリカ大陸の一方的な征服が敢行されたことは、重要な歴史的事実であろう。
(船橋 俊司)

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