横浜弁護士会新聞

2009年3月号  −4− 目次

国際交流活動の推進 上海市律師協会と友好協定締結へ
 当会の国際交流活動は平成15年に韓国の水原弁護士会と姉妹提携を結んだのが始まりと言えるが、その後平成17年4月に国際交流委員会が設置されて以来、水原弁護士会との友好関係を維持発展させつつ、これに加えてそのほかの国とも積極的な国際交流を図るようになった。
 実践的な国際交流の相手先を委員会が検討する中で、現在の国際社会において中国が無視できない存在であることから、弁護士会が中国と交流することは会員だけでなく法的サービスの提供を会員に求める企業、市民にも有益であると考えるようになった。
 ことに上海市は横浜市と友好都市関係を提携していること、上海には神奈川の地場企業が多数進出しており法的アドバイザーとしての役割を当会会員が担うことが求められていることなどから、上海市律師協会(中国では弁護士のことを律師と言い、弁護士会に相当するものとして律師協会が存在する)と交流することは神奈川県下の弁護士を束ねる当会として大いに意義があることと判断するに至った。
 
中国屈指の律師協会
 上海市律師協会の設立は1980年であるが、上海市の弁護士の数は急激に増えており、現在の上海市律師協会の会員弁護士の数は9000名を超えており中国屈指の律師協会である。その活動は、律師法、律師協会章程に基づき、弁護士の職務規範の制定及びその職務の監督、法律事務所の経営についての指導を行うことが主たる業務となっている。
 平成18年10月には当会の視察団が初めて上海市を訪れたが、その際上海市律師協会からも当会と友好協定を結ぶことを希望する旨の表明があり、以来友好協定締結に向けた具体的な準備が進められてきた。
 平成19年8月には横浜メディア・ビジネスセンターで開催された第25回横浜・上海経済技術交流会議に国際交流委員会委員が参加して上海市人民政府経済委員会の委員らと懇談し、平成19年11月には上海市人民検察院検察官が当会を訪問するなどして上海との関係を深めて行った。
 そのような活動を経て昨年10月に当会の訪問団が再び上海を訪問して上海市律師協会と協定締結に向けた具体的な協議を行い、その結果友好協定の締結が確認されるに至った。
 
間もなく調印式
 当会の会内手続も昨年12月の常議員会の承認を得て完了し、本年3月頃の協定締結を予定していたところ、今般、4月28日に上海市の律師多数を横浜に迎えて横浜市中区山下町のホテルニューグランドで友好協定調印式と記念祝賀会が開催されることに決定した。
 祝賀会には神奈川県、横浜市、当会以外の法曹関係者、横浜国立大学、神奈川大学、関東学院大学法科大学院などの関係者も多数出席される予定であり、単なる弁護士会の行事ではなく社会に広く認知していただく機会と位置づけている。
 なお、日本の他の弁護士会では上海市律師協会との正式な友好協定の締結は、第一東京弁護士会に次いで当会が2番目となる。
 今後上海市律師協会とは、会長及び会員の相互訪問に加え、弁護士会活動についての情報交換及び意見交換(ホームページ、新聞などの活用、実務マニュアルの双方交換)、研修会の開催、相手国への弁護士、律師の短期研修の派遣と受け入れなどを予定している。
 昨年会員向けに開催された「中国民事紛争処理の実務」講座も参加会員数112名という盛況ぶりで会員の中国への関心の高さは実証済みであり、今回の調印を契機に多くの会員が中国に関心を持ち友好を深めるとともに、渉外法律実務に携わり紛争の予防と解決に積極的に当たることが期待されるところである。
(国際交流委員会 副委員長 橋本 吉行)

新こちら記者クラブ 仕事と家庭の両立は・・・
 民放テレビ各社は現在、1人〜2人の記者で神奈川県内の事件・事故、裁判、県政・市政、米軍関係などをカバーしています。
 大きな事件があれば現場へ行って取材・リポート撮り、取り上げるべき裁判は事前に周辺取材・傍聴して原稿化、そして県や市の興味深い取り組みから、はたまた「サルが出た!」などという暇ネタまで……。神奈川県は広く、「これでもかっ!」というほど毎日色々なことが起きます。
 「記者とはそういうもの」と言ってしまえばそれまでですが、当然、家族とのプライベートな時間もなかなか取れず、正直、心が折れそうになることもしばしば。年齢的にも、もう少し時間にゆとりのある部署への異動も考えていました。
 そんな入社11年目、結婚9年目のわたくしに去年夏、めでたく初子が産まれました。多くの人がそうらしいのですが、あまり仕事熱心とはいえない私にも「父親の責任感?!」が芽生え、「この子だけは路頭に迷わせまい」と固く決意。心機一転、今の社会部で頑張る気持ちになっていました。
 しかし……、朝、出掛けるときの我が子の寝顔。当然、朝、仕事に行く時間が遅くなり……。妻から不定期に送られてくる子供の写メ。「きょうは早く帰っちゃおう」と夜回りをしなくなり……。夜中、2時間おきに鳴り響く泣き声。睡眠不足がたまり、昼の仕事がおろそかに…。気づいたら以前より増して、仕事に身が入っていないような。仕事と家庭、いかに両立させていくべきか、本当に難しい課題です。
 と、緩――い話を書いてしまい申し訳ありません。まもなく始まる裁判員制度、これは子供を差し置いても取材しないとなぁ……。
(テレビ朝日 羽根 哲哉)

理事者室だより11 新たな責任の時代に向けて
副会長 工藤 昇
 世界中の多くの人と同じように、私も、オバマ大統領の就任演説には感銘を受けました。特に、前政権の負の遺産の中で、不安とともに幕を開けた2009年という年を「新たな責任の時代」と位置付けたことは、かの国の健全な再生力を世界に強く印象付けるものだったと思います。
 2009年、人類が月に降り立ってから40年になります。5歳の幼稚園児だった私にとって、40年後の世界は遠い想像のかなたにありましたが、少なくとも、そのころには気軽に月旅行ぐらいには行けるような、明るい未来が待っているのだろうと思っていました。
 実際に2009年の年明けに広がっていたのは、妙に居心地の悪い胸騒ぎに満ちた世界でした。各地で紛争が絶えず、経済大国を標榜したこの国の真中には、仕事も住む場所も奪われた人々が身を寄せ合っていました。それは、5歳児が想像した世界とはかけ離れたものでした。後世、この年から大変な時代が始まった、と言われることになるのかもしれません。
 しかし、2009年は終わりではなく、何かの始まりであることは確かです。それが終わりの始まりか、再生の始まりかは、道しるべのない中で、私たちが決めていかなければならないことなのでしょう。
 未来を定めていく上で、私たち弁護士が果たすべき役割は、大変大きなものだと思います。社会に対する責任を、職業上の理念としてもっとも自覚しているのは、私たち弁護士だと思うからです。お世辞にも会務に熱心だったとはいえなかった私が、この1年を通じて感動を持って眺めてきたのは、このことでした。社会に生かされている存在として、よりよい社会のために、利益を度外視して奮闘するこの稀有な職業は、その一員であることに、やはり誇りを持ってよいものだと思っています。
 弁護士を取り巻く環境も、決して楽観できるものではなく、特に、これから経験を積もうとする若手の方には大変なことも多いとは思うのですが、「新たな責任の時代」を支えるべき者の一人として、頑張っていきましょう。

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