横浜弁護士会新聞

2010年7月号  −3− 目次

裁判員に選ばれたときに備えて 法教育センター
 海老名市立中央公民館から、当会の法教育センターへ申し込みがあり、5月14日、第1回講義を担当した。
 海老名市立中央公民館では、平成18年から2年ごとに裁判員制度に関する講座を開催しており、私は平成18年、20年とも、その講義の一部を担当した。
 今回は、全5回の講座が企画され、その中には裁判員制度、法廷傍聴、模擬裁判などが盛り込まれており、かなり多彩な講座になっている。このうち、今年は、最初の講義を私が担当し、その後2回にわたる模擬裁判を田中恒司会員、上平加奈子会員、飯島倫子会員の3人が担当することになっている。
 法教育委員会が運営する法教育センターでは、学校に出かけて授業をする出前授業のほか模擬裁判も行っていて、今回のように、結果として裁判員裁判の広報としての役目も担う場合がある。模擬裁判や裁判員裁判を通じて、裁判制度そのものはもちろん、法的なものの考え方や法の価値について考えてもらうきっかけになればいいなと思っている。
 ところで、弁護士が裁判員裁判について説明するのは、色々な意味で良いことだと思う。弁護士側から見た、この制度が導入された意義も伝えられるし、なにより、裁判官や検察官では(言いたくても)言えないことが、弁護士なら言えたりすると思う。「ホントのところ、裁判員制度ってどうなのよ?」「大変すぎない?」なんて話も、裁判員制度を多角的に見て、よりよい方向に進める為に必要なことだと思う。
 皆さんも機会があったら是非担当してみてください。自由にしゃべると、きっと楽しいんじゃないかと思う。弁護士って自由業なんだなぁってしみじみ実感できる(そんなところで実感しちゃいけないのかもしれないが)。
(会員 青木 康郎)

新こちら記者クラブ 裁判員裁判 もっと工夫を
 4月に横浜に転勤し、久しぶりに裁判取材を担当している。今春まで2年間は大阪府警担当で、25人が死傷した個室ビデオ店放火事件や相次いだ児童虐待事件を取材した。捜査当局と同時進行で材料を集め、筋書きの見えぬ事件の全容を少しずつ解き明かす取材から、そろった材料の吟味が主となる法廷へ。攻守が入れ替わった気持ちだ。
 裁判員裁判の取材は初めてで、変化の大きさに戸惑っている。
 特に驚いたのは、検察側の立証方法の変化だ。ビジュアルを駆使した冒陳メモを用い、主張を伝えるため細やかな工夫がある。
 一方の弁護側。弁護士会新聞だから思い切って率直な感想を書くと、検察の勢いに負け気味ではないだろうか。
 例えば、被告が供述する事実関係の信用性が争点になった裁判。証人尋問は精神鑑定の評価にかかわる大事な内容だったのだが、そのことがわかるように説明されたのは残念ながら尋問後。尋問の最中は、もっとも白黒つけたいポイントがどこなのかがイマイチわからなかった。
 法律家にとっては言わずもがなだったのかもしれない。公判前整理を繰り返し、裁判官と検察官は争点を熟知しているという事情もあるだろう。だが、裁判員は素人だし、事件については真っさらだ。
 「まさかと思ったが午前中に選任され、あれよあれよという間に法廷にいた」。裁判員経験者に共通する感想だ。「もっと心の準備の時間がほしい」という人もいる。そんな裁判員に主張をどう伝えていくか。検察も弁護側も、きっとまだまだ改善の余地がある。
 法廷での有意義な攻防を期待しています。
(朝日新聞横浜総局 太田 泉生)

常議員会のいま 新しいことにチャレンジ
会員 彌重 仁也(42期)
 私は、平成20年10月に第一東京弁護士会から移ってきました。昨年末の同期会で、同期の方がもう何度も常議員をしていることを聞いて、私も少しは何かしないと申し訳ないと思い、今回常議員になりました。ということで、私は期ではかなり経験を積んでいるはずですが、実は、全く経験がなく、常議員の務めは、新しいチャレンジといえます。まだ数回の出席に過ぎませんが、これまで感じたことなど少し述べたいと思います。
 まず、事前に送付される資料がかなり充実していて、しっかりと準備されていることに感心しました。担当者の方がその内容をよく検討されていることを示していると思い、そのご苦労に頭が下がります。
 次に、当日の議事の進め方が整然としていて、また議案の説明がわかりやすく、私のようにあまり会務の経験がなく、知識不足の者であっても、その場の説明で理解することができます。
 また、会議の雰囲気は、常議員会の議題にもよるのかもしれませんが、比較的和やかな雰囲気で、私のような初めての者も極度に緊張しなくてよいのが助かります。
 最後に、極めて微力ではありますが、常議員としての務めを少しでも果たすことができるように努力していきたいと思いますので、どうか宜しくお願いいたします。

当会会員に対する犯罪行為について
 すでにご承知のとおり、本年6月2日、当会の前野義広会員が事務所で執務中、突如事務所を訪ねてきた男から胸部等を刃物で刺され亡くなるという事件が発生しました。突然の理不尽な暴力により命を奪われた前野会員、そしてご遺族の皆様には、心より哀悼の意を捧げます。
 現場の状況・目撃情報等からすると、この事件は、前野会員の受任していた業務を妨害しようとして行われたものである可能性が極めて高いと考えられます。誠に痛恨の極みです。
 当会の意見表明としては、事件当日に会長談話、6月11日に常議員会決議を公表しましたが、他方、関連委員会や会員有志の方々には極めて迅速な対応をしていただきました。犯罪被害者支援委員会には6月6日のご葬儀以降ご遺族や前野会員の事務所スタッフに対する支援、マスコミ対応等に取り組んでいただいております。ご葬儀当日には多数の関係者が参列されましたが、前野会員の同期の方々には受け付事務等でご協力をいただきました。前野会員が担当されていた事件については、有志の方々の積極的なお申し出により引き継ぎ態勢が整えられています。業務妨害対策委員会からはいち早く全会員向けに業務妨害対策の呼び掛けがなされましたが、本件を踏まえた対策についての議論を始めていただいております。
 この事件は被疑者も検挙されておらず、まだ何も真相解明がなされていません。前野会員の死を決して無駄にしないためにも、会を挙げてこの問題に取り組み、このような痛ましい事件が二度と起こらないような方策を追求していかなければならないと思います。

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