横浜弁護士会新聞

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1999年11月号(1)

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県民集会第2回プレシンポ 法曹養成制度を考える
どうして今ロースクール構想なのか
 九月二九日、弁護士会館五階大会議室で、「法曹養成制度−ロースクール構想−を考える」集会が開催された。七月二一日の「法曹人口問題を考える」集会に続く、県民集会プレシンポ企画第二弾である。
ロースクール構想とは
 まず最初に、当会司法制度改革審議会対策特別委員会副委員長で、ロースクール構想問題を担当している藤村耕造会員から、現在司法改革との関連で問題となっているロースクール構想のアウトラインについて解説がなされた。
 藤村会員の解説によれば、日本でのロースクール構想は、アメリカ型ロースクール構想と、日本の大学・大学院修士課程を改革してロースクール化を図ろうとする日本型ロースクール構想の二つに大別される。かかるロースクール構想が登場してきた現実的要因としては、大学法学部での法学教育の危機的状況の打開と、司法改革(法曹の質の改善、法曹人口の増大)の視点からの法曹教育の見直しの必要性という異なる要因が挙げられるということであった。
司法研修所・ロースクールの実態からの考察
 続いて、当会の川島清嘉会員が、かつてカリフォルニア大学バークレー校ロースクールに留学したことがあり、また、昨年まで我が国の司法研修所民事弁護教官を務めた経験に基づき、司法研修所とロースクールの実態を踏まえた法曹養成制度の課題・指針について話した。
 川島会員によれば、従来の司法研修所教育の、法律実務家としての最低水準の確保等の優れた成果を維持しつつ、修習生数の増加・修習期間の短縮といった流れに対応してゆくには、研修所は、実務家養成の専門機関に特化していく必要があるのではないか。他方、アメリカのロースクールは、弁護士養成を目的とする教育機関であり、広範なバックグラウンド(専攻・年齢・人種・性別)を有するところに特徴があるとされる。その上で、我が国において、今、ロースクール構想のような大きな制度改革をする必要性については疑問を呈し、むしろ現在の法曹教育の課題を解決するためには、各教育機関・制度の目的と責任範囲を明確にし、欲張らないことの重要性を指摘するとともに、他分野の専門家を法律家にするような法曹養成も考えていくべきではないかという意見を述べた。
ロースクール構想の具体案
 さらに、第二東京弁護士会会員で、長く法曹養成問題に取り組んできた遠藤直哉氏から、同氏が副委員長を務めている法曹養成二弁センターでまとめた法科大学院(ロースクール)制度及び研修弁護士制度を介して法曹一元を実現しようとする案の説明がなされ、また、遠藤氏自身の見解も交え、実務・研究・教育の統合を目指す、あるべきロースクール構想ひいては法学教育一般についての提言がなされた。
 すなわち、遠藤氏によれば、今後は、法教義学(実務)と法創造学(研究)との統合を図ることに努め、これを教育の内容にするとともに、その手段として、既存の法科大学院を抜本的に改革・拡充し、これに合わせて司法試験の改革を目指すべきであるとされる。
会場からの質疑・応答
 その後、質疑応答に移ったが、会場からは、ロースクール構想と法曹一元との関連性や法曹人口のコントロールの問題等様々な角度からの質問が出され、ロースクール構想という突然現実味を帯びてきた問題に対して理解を深めようとする会員の熱意が窺えた。
 最後に、遠藤氏から、ロースクール構想について、弁護士会が、早急に自由かつ多様な意見を提示してゆくことの重要性が指摘され、横浜弁護士会からも積極的な提言がなされることへの希望が示された。
 午後五時過ぎに始まった集会は、熱心な質疑応答が続いたため、当初の予定を大幅にオーバーして午後七時半ころ閉会した。
(中村 俊規) 

「修習生の2000年問題」などを協議
-平成11年度地弁協開催-
 司法研修所と日弁連共催の平成一一年度地域別弁護修習連絡協議会大規模会が、九月一四日横浜弁護士会館で開催された。
 この協議会は地弁協と略称され、単位会の規模ごとに全国各地で行われて、修習指導に関する情報や意見の交換がなされる。
 大規模会は、当会のほか東京三会、千葉県、名古屋、京都、大阪、兵庫県の大都市単位会の各会持回りで開催され、研修所教官や各会修習委員などを交えて行われる。
 その内容は、第一部の協議会と第二部の修習生との座談会となっており、今回の協議会では、主として修習期間の短縮に伴う各会の弁護修習カリキュラムの改善項目、施設介護実習やマスコミ実習などを含む今年度スタートの社会修習の実施状況、そして「修習生の二〇〇〇年問題」とも言われている平成一二年の二期重複卒業による就職難対策など、重要な項目について熱心に意見発表や報告がなされた。
 また、第二部では、五二期と五三期の計二〇名の修習生が若々しい元気な発言を連発し、いずれも盛会となって、夕刻の懇親会をもって無事開催地会の任務を終えることができた。
(司法修習委員会副委員長 遠矢 登) 

山ゆり
 司法研修所が和光に移転して五年になる。先日、和光で修習した当会会員の飲み会があった
「和光会」と称し、四八期と四九期で二年前に始めた会だが、現在は五〇期と五一期を加え、その人数は潜在的には一〇〇名近くにもなる。先日も三〇名あまりが出席し、大いに盛り上がった
弁護士に成り立てのいわゆる「若手弁護士」の飲み会であり、仕事上の失敗談、弁護士会の委員会や部活動のことなどが主な話題となっていた。四八期、四九期の中には事務所を独立した者や独立する予定の者も出始めており、独立に関する情報交換も行われていた
堅苦しい話や政治的な話題(?)はなく、終始和やかなままに一次会を終え、麻雀組、カラオケ組、飲み屋組等に分かれ、二次会三次会へと流れていった。日頃交流のない会員との友好を深める良い機会となった
当会の新規登録者は、修習修了直後の者だけで毎年二〇名前後にも達している。司法試験合格者の増員で今後さらに増えることも予想されている。期の近い会員間でさえも、名前や顔がわからないといったことになりかねない状況である
和光で修習したというだけのつながりだが、司法研修所で修習したということが法曹の共通基盤であることを再認識させられた
ロースクール構想が司法改革、法曹養成の争点の一つになっている。大学等からいくつかの試案も出されているようである。法曹人口の増加やロースクール導入についての是非はともかくとして、弁護士さらには法曹の一体性に対し、十分な配慮がなされるべきではないだろうか。
(狩倉 博之) 

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