横浜弁護士会新聞

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2000年1月号(1)

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横浜弁護士会会長  岡本 秀雄
 新年明けましておめでとうございます。いよいよ二〇〇〇年の開幕です。景気の回復も思うにまかせず、戦前に戻るかのような立法が続く中、司法界も激動の時代を迎えようとしています。明治維新や戦後の司法改革にも勝るとも劣らないといわれる大改革が進められようとしています。日弁連は、「官僚司法」から「市民による司法」への転換をスローガンにして司法の根本的転換を求めています。裁判官任用制度をキャリアシステムから法曹一元制に改革し、陪審制や参審制の実現を目指しています。現在の裁判制度において、市民のコントロールが及ぶのが、最高裁判所の裁判官に対する国民審査制だけであり、市民の司法参加が調停員制度と検察審査会等に限られていることを考えると画期的なことです。これは、私達弁護士にとっても革命的ともいえる大きな転換です。私達弁護士の事務所形態や弁護士の意識変革なしには実現不可能なところです。法律事務所の法人化を含めた共同化が実現しなければ法曹一元制の実施は不可能なことです。弁護士任官制度が推し進められて以降、今日まで当会からは未だ一人も任官者は出ていません。弁護士任官にしても、任期満了後、再び弁護士に戻ったとき仕事を再開する法律事務所がなく、新たに事務所を開設し、依頼者も獲得していかなければならないとしたら余程恵まれた人以外誰しも二の足を踏むでしょう。
 また法曹一元が実現している国では、任官した人がジャッジとして高い評価と尊敬を受け、またその任官者がいた法律事務所もそのことを誇りとしているとのことです。裁判官に任官することが社会的に高い評価を受け、法曹として法曹仲間からも尊敬を受け、且つ弁護士に復帰してからも生活を維持するのに苦労をしないような環境を作っていかなければならないでしょう。
 法曹一元制は、日弁連の積年の課題です。「法曹一元は幻想か」、当会の横浜弁護士会新聞の平成一〇年一一月号の見出しです。私達は法曹一元制を幻想に終わらせてはならないと思います。就任以降、会内合意を目指し努力してきたつもりですが、皆様のご意見は如何でしょうか。
 法曹人口増加、司法試験合格者を何名にするか、これとの関連で急浮上しているロースクール構想にも目が離せません。
 任期は残り三ヵ月になってしまいましたが、次期執行部にバトンタッチをするまで会の先頭に立って頑張るつもりですので、よろしくご協力のほどお願い申し上げます。

山ゆり
 子どもの頃、大晦日の夜に風呂に入ると母が新しい下着と寝巻きを用意しておいてくれた。父親に聞くと、子どもの頃には盆と正月だけに新しい下着と足袋がおろされたという。母が出してくれた新しい衣類を着ると、年始を迎える新鮮な気持ちがわき上がったものだった
最近は我が家でも実家でも大晦日の夜に新しい下着も出さないし、新しい寝巻きも出さない(もちろん足袋も)。いつもの服装でいつもと余り変わらない食事をして、紅白歌合戦を見ながら「年末か−」などと気の抜けたことを言い合っている
いつの間にか世の中には物があふれ、欲しいものはいつでも何でも手に入るようになった。普段は物を大切に使い正月などの特別な日にわざわざ新品をおろす家庭はどのくらいあるのだろうか
これほど物があふれて豊かな社会になったのに人々はいつも何かに追われ、常に欠乏感に襲われている気がする。不況による生活苦の他に、安易に借金を繰り返して多重債務となった方の事件も尽きない。多重債務に陥る原因はもちろん様々だし、貸す側の問題性はいうまでもない。しかし、あまりに気軽に「借金」を抱える人々を見ると、私達日本人の金銭感覚、経済観念はどこか少し狂ってはいないかと不安になってしまう
多重債務事件の処理を続けながら、お金がなくとも物がなくとも精神的な幸福感を味わえることを思い出して欲しいと心から願い続けている
両親のおかげで物を大切に使う癖が身に付いた私は、すり切れた一〇年選手の財布を未だに使い続けて、家族から少し呆れられている。
(佐賀 悦子) 

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