横浜弁護士会新聞

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1999年4月号(1)

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公益活動・委員会活動の義務化
本年二月二四日午後一時、当会臨時総会が本会会館大会議室にて開催された。この日の臨時総会は、会員の公益活動及び委員会活動についての横浜弁護士会会則の一部改正、会員の公益活動及び委員会活動についての会規、およびそれに付随して必要となる実施規則および委員会通則の制定を議題とするもので、その是非につき会員の承認を得ることを目的としたものである。
一号議案 なぜ義務化なのか
 最初に、一号議案として、今回の横浜弁護士会会則の一部改正が審議され、「弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現を達成するため、会規の定めるところにより、公益活動及び委員会の委員としての活動に積極的に参加するものとする。」という規定の新設につき提案理由が執行部から示された。その内容は、本会の会員が公益活動及び委員会活動に積極的に参加すべきことを明らかにし、市民に対する弁護士および弁護士会の信頼を得るとともに、自らその業務と社会的使命を自覚し規定することで、押し寄せる司法改革の波を乗り切ろうというものである。
 趣旨説明の後、引き続き、質疑、応答、意見表明に移り、執行部の案に反対する意見として、次のような意見が出された。
1.根本的には弁護士の個々の活動全てが公益性を持っているもので、依頼者の事件の処理を通じて弁護士は社会に対する公共的義務を果たしている。一年、五年、一〇年と各弁護士の経験によってどのような公益活動をするかは個々の弁護士の判断に委ねるべきであり、一律に義務化することはおかしいのではないか。
2.仮に、義務化するとしても、公益活動の実現にとって他に方法がない最後の手段として行なわれるべきであり、弁護士会は今までどのような努力をしてきたのか、国選の問題や、「多重会務者」の加重負担の問題は、個々的な対応で処理できるのではないか。  
3.義務化は、自由独立であるべき弁護士の活動を阻害することにならないか。  
 これに対して、賛成の意見として、次のような意見が出された。
 この時期に公益活動を宣言することは、会務をしていない会員への参加の呼びかけであるし、社会への宣言であり、アナウンス効果により他会に呼びかけて、弁護士会の全国的なうねりを作り、ややもすれば失われがちな弁護士への信頼を回復するという点で意義は大きい。
 その後、採決に移り、出席会員一〇六名中、賛成八四、反対一〇、意見留保八、で必要な得票数三分の二以上の多数により、一号議案は可決された。

二号議案 義務化の中身は
 二号議案は、一号議案の横浜弁護士会会則改正に伴い、その内容および参加のありかたを定めるための「会員の公益活動及び委員会活動に関する会規」の制定につき是非を問うものである。
 この会規では、公益活動としては、昨年八月に実施された会員に対するアンケート結果により公益活動としての位置付けが高く、義務付けについての賛成率の高かった法律相談、国選弁護、当番弁護士、法律扶助、官公署からの委嘱委員のほか、あっせん・仲裁センターのあっせん・仲裁人、日弁連交通事故相談センターのあっせん担当員とされ、また、公益活動の追加の必要性が生じた場合には、会長が常議員会の議を経るという条件のもとに、個別に追加指定できるとされている。
 義務化される委員会活動としては、本会、日弁連、関弁連、法律扶助協会その他の規則で定める関連団体における委員会の活動を対象とし、県民集会実行委員会や協同組合バザー実行委員会等の一時的に設置される委員会活動は除かれている。
 会員は、年齢が七〇歳以上とか、健康上の理由等、一定の事由がある場合を除くほか、毎年度、これらの公益活動および委員会活動に、それぞれ少なくとも一つ以上は参加しなければならないとされている。
 参加については、直接的強制はされていないが、会長は参加していない会員あるいは必要な程度に参加していないと認められる会員に対し、口頭または文書によって参加を要請できるとしている。
 さらに、勤務弁護士については、その活動参加を支援するよう、雇用している弁護士の協力義務が規定されている。
 二号議案については、圧倒的賛成多数により可決された。なお、参加の程度については、配布された参考資料としての実施規則案によれば、公益活動については、法律相談、国選弁護人、当番弁護士活動が年二回以上の処理、法律扶助事件等が年一回以上の処理、委員会活動については三分の一以上の会議への出席が予定されている。

三号議案 委員会通則
 三号議案は、委員会活動の義務化に伴い、本会の委員会の設置及び運営、委員の選任の手続き及び方法につき「横浜弁護士会委員会通則」の制定につき是非を問うものである。
 この議案については、次のような二つの修正動議が提出された。
 最初の修正動議は、同通則第一〇条4項の「同一の委員会の委員への再任は、連続して三期までを標準とし、委員の長期固定的な配置が生じないようにするものとする」という規定につき、後段の「…委員の長期固定的な配置が生じないようにするものとする」という部分を「委員会所属年数が長期、中期、短期の委員が均衡を保って配置されるようにするものとする。但し、当該委員会に関連する日弁連及び関弁連の委員・幹事等並びに地方自治体などの外部委員等を務める委員を除く」と修正するよう提案された。
 修正動議を求める理由について、提出者の武井共夫会員から執行部案につき次のような懸念が指摘された。
1.委員会活動の中心を担っているベテラン・中堅委員や将来の中心を担うべき若手委員が連続三期の制限によって委員となれなくなることにより、委員会の活力を損なう可能性が高い。
2.日弁連や関弁連の委員会や自治体などの外部委員として活躍するためには、当会委員会で一定の経験や、実績を積むことが望ましい、またその活動をバックアップ・サポートするためにも本会の委員会に足場を保有していることが望ましい。
3.委員会活動の活力が損なわれることは社会・市民への信頼を損なうことにつながりかねない。
 なお、任期三期については、執行部から、任期三期を「標準」とするというもので、運用については弾力的に行うことが可能であるとの説明がなされた。
 この修正動議については同様の懸念、また三期というのは活動を制限するようにも読めるが、熱心な人、やりたい人にはやらせるべきではないかという点から、賛成する意見が出された。これに対し、一部の会員の活動に偏りがみられる、長い年月やっている会員や、専門化が却ってマイナスに働くことがあるのではないか、いままで委員会通則がなかったことの方がおかしいのであり、細かい欠点のために制限自体が制定されなくなっては意味がなくなってしまう、という点が指摘され、執行部案に賛成する意見が出された。
 次に出された修正動議は、岡村会員からなされたもので、通則第一条の目的につき「会員全員の委員会活動の参加を促進し、会員間の会務の公平な分担を図るとともに、委員会活動の公正かつ透明な運営を確保することにより、本会の委員会活動の活性化を促進し、あわせて、会員の対外的な公益的活動への積極的参加の機会及び弁護士業務遂行の充実を期する機会を確保することを目的とする」とあるところ、主目的である委員会活動の活性化は判るが、活性化と公益的活動等とは別のものであり、なぜ公益的活動への積極的参加の機会等を目的とする必要があるのか、特に任期については三年を「標準」とするとあり、その運用に当たっては第一条の目的に戻って解釈しなければならない場合も生じるが、副次的な目的を入れることによって曖昧になるおそれがある。したがって、副次目的である「あわせて、会員の対外的な公益活動への積極的参加の機会及び弁護士業務遂行の充実を期する機会を確保」の部分を削除すべきというものである。
 これについては、執行部より、委員会活動は弁護士会の柱となるものであり、副次的に公益目的をいれることにより社会・市民の信頼を得る上では意味がある旨の説明がなされた。
 引き続き、修正動議から採決が行われ、岡村三穂会員の修正動議につき賛成三六、反対四三、意見留保一七で棄却された。次に、武井共夫会員の修正動議につき採決が行われ賛成三五、反対五〇、意見留保一〇で棄却された。最後に、執行部案につき採決が行われ、賛成五一、反対三一、意見留保五で承認された。

今後の課題
 本臨時総会で、会員の公益活動及び委員会活動の義務化に関する会則等の執行部案は承認されたが、重要なのは公益活動にしろ委員会活動にしろ、本来の目的である市民や社会の信頼を勝ち取ることができるか、その運用による実績作りである。制度作りは終わったとしても、真価が問われるのはこれからである。そのためには、委員会活動にしろ公益活動にしろ弁護士としての生きがいや魅力を感じることのできるテーマを設定できるか、また参加した会員が隔てなくフランクにかつ真摯に議論を展開できるかが重要と思われる。そのような下で始めて自発的な会員の参加が可能であり、かつ各活動も実のあるものになるのではなかろうか。
 なお、この日同時に四号議案として横浜弁護士会刑事弁護センター運営委員会設置会規(会規第15号)一部改正の件が、第五号議案として綱紀委員選任の件(三名)が議題とされ、四号議案については執行部案が承認され、第五号議案については、馬場俊一、川島清嘉、小口千恵子各会員が綱紀委員として選任された。

山ゆり
 今年も、多くの新入会員を迎える。私が当会に入会したての頃、「弁護士は事件屋とどこが違うか、バッチの有無だけでないことは確かだが」と先輩弁護士から尋ねられたことがある。「法律上の専門知識の点では全くレベルが違うのではないか」と答えたところ、「執行妨害専門、企業を舞台とする専門事件屋は、若いなまじの弁護士より遙かに知識はあるぞ。企業内でも、日常扱っている専門分野では社員は非常にレベルが高いよ」と返された
 スペシャリストとして恥じない弁護士になるため、今後も特別法をも含めて一生懸命勉強しろという意味かと思ったが、違った
 「社会が弁護士という一業務に特別な資格を与えているのは、専門的な知識以上に公正であることを求め、それを実現する能力を期待しているからだ」と教えられた。仮に依頼者であっても社会的公正に反した権利の実現はありえない事を知らせることは我々の重要な職務である
 先日、逗子市での弁護士の常駐型相談体制の検討の件が報じられた。整理回収機構では中坊弁護士以下、常駐体制で多数の弁護士が業務に従事している。地方自治体においては外部監査が実施され、弁護士に就任が求められている。これからは、一層代理的側面以上に社会的公正の実現に心を配る場合が多くなるのであろう
 私の五年間に亘った本紙の編集も本月号をもって任期満了する。「身近な司法の実現」と「公正で透明な社会の実現」とは、車の両輪である。本紙が些かでもこの目標に役立ち得た事を念じつつ。長い間ありがとうございました。 (庄司 道弘)

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