横浜弁護士会新聞

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1999年6月号(3)

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 事務員研修は、現在年三回実施している。最近では四月五日に「刑事訴訟手続と刑事弁護」(講師は金子泰輔会員)というテーマで行ったところ、普段あまり知る機会のない刑事事件の流れがわかったと大変好評であった。
 今後も、参加者の経験年数の違いや各事務所での仕事内容の多様性等を踏まえた上で、「毎日の業務にすぐ役立つ」をモットーに企画していきたいと思う。会員の方々のご理解・ご協力をお願い致します。(研修委員 若田 順)

 四月二三日午後六時、当会会館において、犯罪被害者支援制度の学習会が開催された。
 既に昨年五月より犯罪被害者相談を実施している静岡県弁護士会犯罪被害者相談担当委員の白井孝一弁護士と横浜「いのちの電話」相談活動に長年携わってきた有田トモ子氏を講師に招き、体験を踏まえた実践的な講演がなされた。
 講演では、被害者の権利の確立の問題のほかにも犯罪被害者を巡る心のケア(STSD:心的外傷後ストレス障害等)の理解や行刑制度の問題、ボランティアと専門家との連携・協力の必要性等様々な課題が指摘され、岡本会長以下参加者一同、犯罪被害者問題に対する認識を新たにするものであった。


●就任挨拶●

実のある審議を心がけたい

議長 永井 朗 

 平成八年度に常議員でしたので、三年振りということになります。前回のときは佐伯議長のもとで副議長をさせていただきました。このときは気楽に常議員を楽しんでいました。まさか、後に議長になるとは思ってもいませんでしたから、佐伯議長の進行を見ていて、唯感嘆するだけでした。果たして、私に議長職が務まるのか、大変不安に思っています。殊に、自ら勝手に会務五〇歳定年説を採用し、ここ一・二年会務から全く遠ざかっていましたので、殆んど会務のことは分かりません。このことで不安も募るのですが、また、ある意味では新鮮な気持ちで審議を聞くことができるのかとも思っています。
 いずれにしても、一所懸命させていただくつもりでいます。副議長に箕山洋二会員が就任しましたので心強く思っています。
 高荒前議長の話によりますと、最近の常議員会の審議時間は大変長時間に亘るとのことです。民主主義には時間がかかるということは十分承知しているつもりですが、人間の集中力には限度がありますので、できるだけ時間を短縮しながらも、実のある審議を心がけたいと思っています。
 議長就任時の挨拶で、議長提出議案として、会議中の喫煙を可とする案を提出しました。残念ながら、圧倒的多数で否決されてしまいました。議長の思ったとおりの進行にはならないようです。
 こんな議長ですが、一年間宜敷くお願い致します。
活発でダイナミックな常議員会に

副議長 箕山 洋二 

 今回が四回目の常議員ということになります。最初の二回は皆勤であったと思いますが、平成三年度の常議員の時は、思いがけず寒河江常議員会議長から皆勤賞として、蟹缶三缶のセットをいただいた思い出があります。何時の頃から皆勤賞が出されるようになったのかは定かではありませんが、何時の時代も出席率向上に頭を悩ませていたのかも知れません。
 今回、常議員の個人紹介において、多くの会員が皆勤を目指すと発言されており、頼もしく思っております。副議長としては永井議長を補佐することが職務と思っておりますが、出席したくなる常議員会運営を目指したいとも考えております。そのためには、年毎に膨大となっている資料を、常議員全員が事前に読み(大変な努力を要する作業ではありますが)、出席者全員が自分なりの発言をする(尚、副議長の発言も最小限はお許しいただきたいと思います。)、活発でダイナミックな常議員会に是非したいと思っております。
 その結果、皆勤賞が続出したとしても、永井議長は喜んで素敵な皆勤賞をふんだんに用意する事と思います。

不動産競売事件の現状と民事執行法の改正について

横浜地裁判事 吉田  徹 

 横浜地裁本庁における不動産執行・競売の新受事件の概数は、平成八年一九五四件、九年二〇一九件、一〇年二一〇三件と引き続き増加傾向をたどっている。当庁第三民事部では、売却率向上のため、広告掲載紙の拡大、物件明細書閲覧室の拡張、評価の充実・適正化といった方策を講じてきた。一般参加者の増大が予想されることを踏まえ、平成九年一〇月には、横浜弁護士会において「競売不動産買受人の代理人のために」と題する講演会(担当・島村雅之裁判官)を実施したところであるが、買受人からの法律相談等に対しては変わりなく積極的な取組みをお願いしたい。加えて、昨年一二月一六日、「競売手続の円滑化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が施行されたので、ここでは、申立債権者に周知願いたい改正点について簡単に説明させていただきたい。
 まず、滞納処分による差押えが先行している不動産について、競売手続を進行させるためには、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律九条の続行決定を経る必要があるが、新法では、相当期間内に公売が実施されていない不動産であれば、旧法で必要とされていた徴収職員に対する催告を経ることなく、直ちに続行決定を申請することが可能となった(同法八条三号)。これまで、続行決定の申請がされないまま放置される事件も生じていたが、こうした事態を回避するため、先行滞納処分がある不動産の競売申立ての際は、続行決定の申請も同時に行っていただきたい。なお、滞納処分が直前に行われたため、差押登記後の登記簿謄本の送付を受けて初めて先行滞納処分の存在が判明することがある。こうした場合も続行決定の申請を勧めているので、その旨の連絡を受けたときは速やかな対応をお願いしたい。
 次に、保全処分の新たな類型として、入札等において買受けの申出がなかった場合で、対抗できない占有者が売却を困難にする行為をしているとき、差押債権者は、次回の売却で買受けの申出がない場合に自ら物件を買い受けることを申し出た上、占有者を排除し執行官等に保管させることが可能になった(法六八条の二)。執行法上の保全処分については、平成八年の改正を受け、申立件数は若干増加傾向にあるものの、活用が不十分な面も見受けられる。当庁では、申立人との面接等を通じ、事案に即した適正迅速な事件処理が実現できるよう態勢を整えているので、売却促進のため一層の活用を図っていただきたい。
 さらに、入札等の方法で売却を三回実施しても買受けの申出がなく、かつ、更に売却を重ねても売却の見込みが乏しいときには、所定の手続を経て競売手続を停止し、取り消すことが可能となった(法六八条の三)。また、執行裁判所は、差押債権者に対し、売却を困難にしている事情について調査を求めることもできる(規則五一条の二)。複数回売却を実施しても買い手のつかない物件は、物理的性状や占有関係等、売却を困難にする事情をはらんでいる場合が多い。こうした場合、保全処分の活用を始めとした障害の除去や買受希望者の探索において、差押債権者が積極的な役割を果たすことが期待されている。規則に基づき執行裁判所が調査を求めた場合、差押債権者は、物件の現状を把握した上、売却不奏功の原因を分析し遅滞なく報告していただきたい。

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