ページの先頭です。
本文へジャンプする。
サイト内共通メニューここまで。

飲食宅配サービス

2021年07月02日俵谷 俊輔弁護士

 新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、多くの方々が在宅勤務や外出自粛といった生活を送られ、飲食店につきましても酒類提供の自粛が要請されるなど、新たな生活様式が求められる時代が到来しております。このように、外で思うように飲食ができず自粛生活が続く中で、私は、お店で提供される飲食を自宅にいながら楽しめる、Uber Eatsや出前館に代表された飲食宅配サービスを頻繁に利用するようになりました。

 これらの飲食宅配サービスは、消費者がアプリ等を使用して飲食店に注文をすると、宅配サービス会社が店舗の近くにいる配達員に依頼をし、依頼を受けた配達員が自転車やバイク等で店舗の商品を受け取りに行き、商品を消費者の下に配達する、といった仕組みとなっています。

 宅配サービス会社は、食事の配達そのものを提供するのではなく、配達をする配達員と消費者とを繋げる「マッチング」サービスを提供している点に特徴があり、このような配達員の労働の仕組みは「プラットフォーム型労働」とも呼ばれております。

 飲食を提供するお店にとっては、人件費の削減や新たな顧客に対する売上の拡大につながるメリットがあるのに対し、配達員としても、仕事終わりに副業として働いたり、自由に好きな時に働けるといったメリットがあります。

 もっとも、この「プラットフォーム型労働」には、利用者数や配達員の増加に伴い、その働き方が社会問題になりつつあります。

 宅配サービス会社は、配達員を労働基準法上の労働者ではないと判断しており、配達員は個人事業主とみなされています。そうすると、配達員には労災保険法が適用されず、配達中の事故などに対する十分な補償が受けられない、契約内容が配達員に不利益に一方的に変更されてしまう、解雇規制がない、などの問題点が指摘されています。

 現在、日本においては、これらの配達員の労働者性に関して明確に判断した裁判例等がないのが現状ですが、諸外国においては、労働者性を認めた裁判例も出てきており、配達員たちの労働組合結成の動きなどと合わせて、新たなサービス・働き方の行く末を注視していきたいと考えております。

 

執筆者情報

弁護士名 俵谷 俊輔

 

こちらに記載の事務所情報等は執筆当時の情報です

 
 
本文ここまで。