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会長声明・決議・意見書(2014年度)

最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明

2014年07月11日更新

 神奈川県の現在の最低賃金は、1時間868円(平成25年10月20日効力発生)にとどまっているが、本年も、中央最低賃金審議会における最低賃金改定の論議を受け、神奈川地方最低賃金審議会において神奈川県の地域別最低賃金が定められることとなっている。

 我が国の最低賃金制度は、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定等に資することを目的としている(最低賃金法1条)。

 従前、 最低賃金の影響を受けることの多かった非正規労働者(パート労働者等)は主に家計補助的なものとみなされていた関係で、そのことが低賃金を正当化する理由にはならないにもかかわらず、最低賃金制度やその水準が社会的な関心を集めることも少なかった。

 ところが、近年、非正規労働者の数が全労働者の4割近くを占めるまでに著しく増加し、 その結果、主として家計を支える役割を担う非正規労働者も多数現れた。そして、 いわゆるワーキングプア層として、非正規労働者の賃金水準の低さが問題視されるに至った結果、これに密接に関連する最低賃金制度の「すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網( セーフティネット) 」としての機能に、注目が集まるようになってきた。

 したがって、神奈川県における地域別最低賃金の具体的な水準を設定するにあたっても、かかる最低賃金が有するセーフティネットとしての機能に着目し、最低賃金でフルタイム働いた場合に、十分生活していけるだけの水準が確保されるよう検討されるべきである。

 この点、平成20年7月に施行された改正最低賃金法は、地域別最低賃金を定める際に考慮を要する労働者の生計費について、「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性」を求めている(同法9条3項)。

 ところで、平成25年8月以降生活保護基準が引き下げられた結果、厚生労働省の試算の方法をそのまま用いれば、乖離額が解消しているようにも見える。

 しかしながら、そもそも生活保護基準の引き下げにより、最低賃金と生活保護との逆転現象の解消が図られることは、本末転倒である。

 その上、仮に生活保護基準引き下げを前提としたとしても、1か月あたりの労働時間を、厚生労働省試算が用いる173.8時間ではなく、厚生労働省平成25年毎月勤労統計調査の結果である145.7時間を用いると、生活保護を時給換算した額は、1000円を超えるのである。しかも、厚生労働省試算では、12~19歳単身を前提としているが、子育て世帯を前提とすると、生活保護を時給換算した額は、さらに多額となる。

 したがって、到底、最低賃金と生活保護との逆転現象が解消されたとは言い難い。

 現在、円安の進行により、電気料金、小麦粉、食用油等、光熱費や生活必需品の価格も上昇し、さらには消費税の増税も加わり、県民の生活の困難さが増しており、最低賃金の引き上げは急務である。

 したがって、神奈川県の地域別最低賃金は、大幅に引き上げられるべきである。

2014(平成26)年7月10日
横浜弁護士会
会長 小野 毅

 
 
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