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会長声明・決議・意見書(2015年度)

消費者庁・国民生活センターの地方移転に反対する会長声明

2015年12月11日更新

政府は,「まち・ひと・しごと創生本部」に「政府関係機関移転に関する有識者会議」(以下,「有識者会議」という。)を設置して,政府関係機関の地方移転について検討している。その中で,徳島県からの提案を受け,消費者庁と国民生活センターを同県に移転することが審議されている。

当会は,消費者被害の防止と救済のため消費者庁や国民生活センターの在り方に関して意見を述べてきているが,消費者庁・国民生活センターを地方移転することは,両機関の機能から不適当であると考えるので反対である。

有識者会議は,官邸と一体となり緊急対応を行う等の政府の危機管理業務を担う機関,中央省庁と日常的に一体として業務を行う機関,移転すると機能の維持が極めて困難となるもの等の提案は検討対象としない,としている。

この考え方は妥当であり,典型的には自己完結的な業務を担うような機関は移転に適している。しかし,消費者問題は多数省庁に分散して担われているという特徴があるため,その司令塔として消費者庁が創設された経緯がある。そして,重大事故の発生時には,官邸と一体となった緊急対応を行うとされたのである。現実にも,消費者安全の重大事故と発生時には官邸・担当大臣の下で緊急対策本部を速やかに開催し,関係省庁と連携して対応することとしている。例えば,メニュー表示に関する偽装表示事案においては官房長官の下で,冷凍食品からの農薬検出事案においては担当大臣の下で,関係省庁と連携しその司令塔となって速やかに対応している。

また,日常的な業務にしても,消費者基本計画を考えれば明らかなとおり,消費者庁は,多数省庁の消費者政策の企画について協議し,施策の推進状況を検証・評価・監視を行うことが求められている。そのため,常に関係省庁との協議等が必要である。むろん,消費者庁は消費者法の整備を行う責務があり,新規立法や法改正の作業が頻繁に行われているが,消費者法は多数省庁所管分野と関係するため関係省庁との協議が不可欠である。

このように,消費者庁は,各省庁に関わる消費者問題について,政府全体として一元的に推進するという性格をもつ。

さらに国民生活センターは,消費者基本法第25条に定められた消費者行政の中核的実施機関として,消費者庁と連携して,諸問題を検討して関連省庁に意見を述べ,地方消費者行政を支援し,消費者・事業者・地方自治体・各省庁に情報提供を行っている。その役割を果たすためには,各省庁に近接し日常的に連携できる場所にある必要がある。

以上からすれば,消費者庁・国民生活センターは,緊密な連携の下に消費者行政を推進すべきであり,それらの地方移転は機能上から不適当であるから移転の対象とすべきではない。

 

2015(平成27)年12月10日

横浜弁護士会     

 会長 竹森 裕子 

 

 
 
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