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会長声明・決議・意見書(2017年度)

「神奈川県消費生活条例の改正骨子案」に関する意見書

2017年10月23日更新

 2017年9月27日,神奈川県(以下「県」という。)より「神奈川県消費生活条例(以下「条例」という。)の改正骨子案」(以下「骨子案」という。)が公表された。同骨子案につき,当会として,以下のとおり意見を述べる。


第1 意見の趣旨

 骨子案は,神奈川県消費生活審議会の答申をもとに策定され,高齢化やインターネットの普及等により多様化,複雑化する消費者被害の救済及び未然防止に資する内容となっており,当会としても大いに賛同するところである。今後,同骨子案に掲げられた項目が除外されたり,その方向性がぶれることなく条例改正が実現されることを望むとともに,事業者名等の公表や適格消費者団体への財政支援等,骨子案をさらに前進させた,より実効性のある条例改正がなされるべきである。


第2 意見の理由

1 骨子案は,特定商取引法の改正等への対応,消費者教育推進法の制定への対応,消費者施策の推進のための規定整備として,合計9項目の改正骨子を示している。いずれの改正骨子ともに,昨今の多様化,複雑化する消費者被害の実情を踏まえた必要不可欠な内容となっている。そこで,同骨子に沿った条例改正が是非とも実現されるべきであって,条例改正にあたって,骨子案で示された項目が除外されたり,また,その方向性がぶれるようなことがあってはならない。

2 骨子案(1)エにおいては,「訪問販売お断り」などのはり紙等により,訪問による勧誘を拒絶する意思を示している世帯への訪問を禁止することを規定することが示された。かかる規定の必要性については,当会の2016年10月21日「神奈川県消費生活条例の見直しに関する意見書」及び2017年6月9日「神奈川県消費生活条例の見直しに関する意見書~勧誘拒絶の意思表示と「訪問販売お断り」ステッカーについて~」で繰り返し述べてきたところである。訪問販売は,一旦勧誘が始まってしまうと消費者,特に断る力が低下した高齢者がこれを断ることは非常に困難である。全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録された相談情報によれば,県内の消費生活相談窓口に寄せられた「家庭訪販」にかかる苦情相談件数が年間6000件前後で推移していること,65歳以上の高齢者がその約半数を占めていることも,かかる訪問販売の実情を如実に表している。
 この点,事業者の営業の自由等の観点からの反対意見が予測されるところではあるが,事業者が「訪問販売お断り」などのはり紙のない世帯を訪問することは禁止されないのであるから,事業者の営業行為を不当に制限したり,萎縮効果を与えるものではない。また,はり紙により消費者の拒絶の意思が明確となることから後日のトラブルを防止することへと繋がり,この点では消費者のみならず,事業者にとってもメリットがある。その他,消費者が事業者に訪問を要望する場合や,取引形態からして訪問販売を拒絶していないと認められる場合(御用聞き販売のように継続的な訪問販売をしていたケース等)には禁止規定の適用が除外される旨の規定を設ければ,特に弊害が生じることもない。
 したがって,上記骨子に沿った改正が是非とも実現されるべきである。

3 骨子案(3)イにおいては,消費者の主体的かつ適切な選択を支援するため,県が行う消費生活に関する情報の収集及び情報の提供について規定することが示された。
同骨子の方向性については異論はないが,被害防止の実効性確保の観点から,以下のとおり,より踏み込んだ条例改正がなされるべきである。
 すなわち,当会の2016年10月21日意見書で述べたとおり,現行条例では,事業者名称等,事業者を特定する情報の提供もしくは公表が可能な場合が厳しく限定されているところ,同種被害の拡大に歯止めをかけ,被害の未然防止へと繋げるためには,簡易な手続により,被害発生の早期の段階において,事業者の名称や事業内容等の情報提供もしくは公表が可能となるような制度が必要である。改正条例においては,かかる被害防止に実効的な情報提供もしくは公表が可能となる規定を,是非とも設けるべきである。

4 骨子案(3)エは,県による適格消費者団体等への協力・支援を規定する。2017年5月時点において,全国で16の適格消費者団体が活動し,県内においても,近い将来適格消費者団体の認定が想定されるが,消費者被害が多様化,複雑化する現状において,今後,適格消費者団体による差し止め,また,特定適格消費者団体による訴訟等の活動は,被害の防止及び救済の両面においてより一層重要な位置を占めると思われる。当会の2016年10月21日意見書で述べたとおり,改正条例においては,県と(特定)適格消費者団体との間でスムーズな連携,情報共有が図れるような規定を設けることが不可欠であるとともに,(特定)適格消費者団体に対し,県が財政支援を含む幅広い支援を行うことが可能となるような内容の条項を設けるべきである。

以上


2017(平成29)年10月19日
神奈川県弁護士会
会長 延命 政之

 
 
本文ここまで。