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会長声明・決議・意見書(2018年度)

憲法記念日会長談話

2018年05月02日更新

日本国憲法が施行されて71回目の憲法記念日を迎えました。

憲法は国のあり方を示す国の最高規範であり、基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義を3原則としています。そして、憲法に基づく政治を立憲主義といいます。立憲主義は、あらゆる思想信条を超えて、私たちが共有する理念です。

憲法の3原則は、大日本帝国憲法の下、さまざまな人権が制約され、また戦争で多くの筆舌に尽くしがたい犠牲を生んだことへの深い反省に基づいて打ち立てられた私たちの社会の基本原理です。

基本的人権の尊重は、「個人の尊重」という理念に基づくもっとも大切な原理ですが、いまなお、超高齢社会を迎えての高齢者への対応は十分と言いがたく、過労死などをはじめ働く人を巡る環境が大きな問題となっているばかりか、女性が置かれた社会的・経済的な地位も平等にはほど遠いレベルにあります。また、外国人や障がい者、性的少数者などへの差別も根強く残っています。私たちが、解決していかなければならない課題が山積しています。

国民主権は、この国のあり方は最終的には国民が決めるという民主主義の根幹をなすものです。しかしながら、厚生労働省の不適切データ、財務省の文書改ざん、自衛隊の日報隠し問題など次々と事実が国会に伝えられなかった事態が明らかになっています。このことは、主権者である国民及びその信託を受けた国権の最高機関である国会の判断を誤らせる危険があり、民主主義の根幹を揺るがす重大な問題です。早急に徹底した真相の究明と再発防止策が検討されなければなりません。

また、恒久平和主義についていえば、私たちの憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」て確定されたものであり、侵略戦争の禁止のみならず、戦力の不保持と交戦権の否認そして平和的生存権をも定め、崇高な理想を掲げています。これは、私たちが歴史から、戦争こそが最大の人権侵害であると学んだためです。現在、憲法9条1項2項を維持したまま、自衛隊を明記する憲法改正条項案が検討されています。しかしながら、自衛隊を憲法に明記することは安保法制で容認した集団的自衛権の行使等を前提とすることになり、これによりこれまでの恒久平和主義のあり方が根本から変更されかねません。これはまさに国の基本的なあり方についての大きな問題であり、主権者たる国民への十分な情報提供はもちろん、これを踏まえた憲法による「平和」をいかに実現するかについての国民・市民間での徹底的な議論が重要です。

神奈川県弁護士会は、憲法がいかされ、憲法に基づく社会が実現されるよう、今後もしっかり取り組んでいきたいと思います。そして、弁護士の使命である、基本的人権の擁護と社会正義の実現に向けて、より一層真摯に活動を続けていく所存です。

2018年(平成30年)5月3日
神奈川県弁護士会   
会長 芳野 直子 

 
 
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