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会長声明・決議・意見書(2018年度)

辺野古沿岸への土砂投入を中止し,普天間飛行場代替施設の建設について 根本的に見直すことを求める会長声明

2019年01月25日更新

昨年12月14日、政府は、普天間飛行場代替施設の建設予定地である沖縄県辺野古沿岸部に土砂投入を開始した。これに先立ち、同月10日、沖縄弁護士会は、政府に対し沖縄県民の民意を尊重することなどを求める総会決議を可決した。同総会決議でも言及されているとおり、普天間飛行場代替施設の建設については、かねてより多くの沖縄県民が強い反対の意思を表明してきたところである。2014年11月には故翁長雄志氏が、2018年9月には玉城デニー氏が、それぞれ、建設の反対を掲げ、県知事選挙に当選したが、このことにも沖縄県民の民意は端的に表れている。

そもそも、今回の土砂投入は、沖縄県が、埋め立て予定地に軟弱地盤が存在していることが明らかになったことなどの新たな事情を理由に埋め立て承認を撤回したにもかかわらず、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき、国土交通大臣に対し、審査請求と執行停止申立を行ない、執行停止が決定されて実施されている。しかしながら、行政不服審査法は、「国民の権利利益の救済」を目的としているところ、国が公有水面埋立法によって与えられた「固有の資格」にありながら、一般私人と同様の立場で審査請求や執行停止申立を行うことは許されないと言わざるをえない。この点、多数の行政法学者も「行政不服審査制度を濫用するものであり、法治国家にもとるものといわざるを得ない」という声明文を公表し、厳しく指弾しているところである。

すでに沖縄県には、国土の0.6パーセントの土地に米軍専用基地の70パーセント程度が集中しており、米軍基地を原因とする深刻な事件や事故が絶え間なく発生しているばかりか、騒音等の被害も著しく、生活環境や自然環境の不可逆的破壊などの甚大な被害が継続している。

普天間飛行場代替施設の建設は、それに加えてさらなる重い負担を沖縄県民に負わせるものであり、沖縄県やその住民の意思を無視してそれを強行することは、地方自治や民主主義という憲法の根本理念を踏みにじるばかりか、沖縄県民を差別しその尊厳を傷つけるものであると断言せざるを得ない。

そして、神奈川県においても、例えば厚木基地では、深刻な騒音被害が続いているが、それに加えて2018年だけで数十回もオスプレイが離発着している。また、2018年10月には、多くの地元住民が不安を訴える中、横田基地にオスプレイが5機正式配備されており、今後首都圏上空で極めて危険な低空飛行訓練等が行われることも想定され、ひとたび墜落等の事故が起きれば取り返しのつかない大惨事が発生しかねない。さらに昨年10月には、相模総合補給廠に、米軍の国内の弾道ミサイル防衛部隊を指揮する新司令部が駐留を始めており、米軍の一方的な意向で同補給廠の機能が強化されている。このように沖縄県で行われている自治体や県民の意向を無視した米軍の基地強化は、神奈川県内の住民にとっても同じように非常に切実で重大な問題である。

よって、当会は、2016年2月10日の会長声明に続き、国に対し、地方自治体及び住民の意向を十分に受け止めて判断するため、辺野古沿岸への土砂投入を直ちに中止し、改めて普天間飛行場代替施設の建設について根本的に見直すことを求めるものである。


2019年(平成31年)1月24日

神奈川県弁護士会

会長 芳野 直子

 
 
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