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会長声明・決議・意見書(2018年度)

法曹養成制度の理念に基づき『谷間世代問題』の是正を求める総会決議

2019年02月25日更新

1 昭和22年に司法修習制度が開始されて以来、司法修習期間中、司法修習生には公務員の初任給並の給与が支給されてきたが、この給与は、新第65期司法修習生から打ち切られた。その後、第71期司法修習生から修習給付金の支給が開始されるまで、6年間に亘り修習期間中は無給となり、希望者に対して生活費を貸与したことから多くの者が多額の負債を負う結果となった。当会は、無給で修習期間を過ごした新第65期から第70期までを谷間世代と呼び、平成30年3月22日には「『谷間世代』の貸与金の返還期限の猶予を求める会長声明」を発出し、谷間世代に対する貸与金の返還について、他の世代との不平等解消の措置が講じられるまでの間、その返還を猶予するよう求めた。

しかしながら国は、かかる声明に沿うことなく、同年7月から貸与金の返還を請求し返金を受けている。当会は、かかる国の行為に抗議するとともに、この問題の根本的な解決に向けて、次のとおり決議する。

2 司法制度改革審議会最終意見書では、法の支配の貫徹する社会を築いていくには、法曹(弁護士・裁判官・検察官)の役割が格段と大きくなること、国民が自律的存在として主体的に社会生活関係を形成していくためには法曹の協力を得ることが不可欠であることを明確に謳い、法曹をいわば「国民の社会生活上の医師」の役割を果たすべき存在として位置づけている。

すなわち、法曹は社会的インフラであり、法曹養成は社会的インフラの整備にほかならない。それゆえ国は、戦後長きに亘り統一の司法修習制度を構築し、司法試験に合格して法曹を目指す司法修習生には、給与を支給することによりその生活を保障して法の支配の担い手の養成に努めてきた。国が、すべての司法修習生に対して修習専念義務を課し就労などの経済活動を原則として禁止するのは、法曹養成が社会的インフラ整備という公的な性格を有するからであり、司法修習生に修習専念義務を課す以上、司法修習期間中の最低限の生活を保障することは当然かつ必須の施策である。また、最低限の生活を保障することは、経済的基盤にかかわりなく全ての人に法曹の道を開き、法の支配の基盤をなす多様性のある法曹を確保・育成するために不可欠である。したがって、司法修習期間中の生活資金の支給は、法曹養成制度の根幹であり、国が責任をもって継続的に実施していくべきものである。


3 しかしながら国は、法曹養成制度の理念を軽視し、前述のとおり新第65期から第70期までの谷間世代の6年間に限り生活資金を支給せず、これまでその問題の指摘を受けてきたにもかかわらず、未だ是正しようとはしない。

当会は、本日、司法修習制度の理念を少しでも実現すべく、独自にできる限りの経済的支援策をとることを決定した。もっとも、その支援内容は、谷間世代が司法修習中に受け取るべきであった生活資金にはほど遠い。

そもそも法曹養成について本来的責任を負っているのは国であるから、国は谷間世代が司法修習期間中に受け取るべきであった生活資金を支給するための立法措置を今からでも講じるべきである。また、その施策が実現するまで、貸与金の返還を猶予する措置をとるべきである。私たち神奈川県弁護士会は、このような谷間世代の問題を抜本的に解決するための国の施策の実現に向けて、引き続き活動を続けていくことをここに決議する。


2019年(平成31年)2月22日
 神奈川県弁護士会 臨時総会

 
 
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