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会長声明・決議・意見書(2020年度)

司法修習『谷間世代問題』の是正及び貸与金の返還の猶予を求める会長声明

2020年07月10日更新

  1. 司法修習「谷間世代」の発生及びその不救済という問題

     1947年に司法修習制度が開始されて以来、司法修習生には公務員の初任給並の給与が支給されてきたが、この給与は2011年採用の新第65期司法修習生から打ち切られた。市民、弁護士等の社会運動により、2017年に裁判所法が改正され、同年採用の第71期司法修習生から司法修習を行うために十分な金額とは言い難いものではあるが、修習給付金の支給が開始された。しかし他方、無給だった新第65期から第70期までの司法修習生に対しては、何らの救済措置が取られなかった。この無給の間の修習生は谷間世代と呼ばれ、無給の間希望者は生活費の貸与を受けたことから多くの者が多額の負債を負う結果となっている。
     
  2. そもそも法曹養成は国の責務であること

     司法制度改革審議会最終意見書では、法の支配の貫徹する社会を築いていくには、法曹の役割が格段と大きくなること等を明確に謳い、法曹をいわば「国民の社会生活上の医師」の役割を果たすべき存在として位置づけている。すなわち、法曹は社会的インフラであり、法曹養成は社会的インフラの整備にほかならない。それゆえ国は、すべての司法修習生に対して修習専念義務を課し就労などの経済活動を原則として禁止しており、このような義務を課す以上は、司法修習期間中の最低限の生活を保障することは当然かつ必須の施策である。また、最低限の生活保障は、経済的基盤にかかわりなく全ての人に法曹の道を開き、法の支配の基盤をなす多様性のある法曹を確保・育成するために不可欠である。したがって、司法修習期間中の生活資金の支給は、法曹養成制度の根幹であり、国が責任をもって継続的に実施していくべきものである。
     しかしながら、国は、法曹養成制度の理念を軽視し、前述のとおり新第65期から第70期までの谷間世代の6年間に限り生活資金を支給せず、これまでその問題の指摘を受けてきたにもかかわらず、未だ是正しようとはしない。
     
  3. 速やかな是正措置の実現と返済猶予

     当会は、2019年度から、司法修習制度の理念を少しでも実現すべく、日本弁護士連合会が実施中の谷間世代弁護士に対する一律の給付金(20万円)制度に加えて、当会独自にできる限りの経済的支援策として、総額30万円の給付金を支給する制度を実施している。
     もっとも、これらの支援内容は、谷間世代が司法修習中に受け取るべきであった生活資金にはほど遠い。
     国は谷間世代が司法修習期間中に受け取るべきであった生活資金を支給するための立法措置を今からでも講じるべきであり、その施策が実現するまで、貸与金の返還を猶予する措置をとるべきである。
     当会では、2018年3月22日には「『谷間世代』の貸与金の返還期限の猶予を求める会長声明」を、また、2019年2月22日には「法曹養成制度の理念に基づき『谷間世代問題』の是正を求める総会決議」をそれぞれ発出した。これらは、谷間世代に対する貸与金の返還について、他の世代との不平等解消の措置が講じられるまでの間、その返還を猶予するよう求めているものであるが、引き続き、国に対して要請するものである。
     
  4. コロナ禍における緊急の要請

     国は、本年(2020年)4月7日、新型コロナウイルス感染症を対象とする新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、神奈川県を含む都府県を対象に緊急事態宣言を発令した。その後、5月25日、同緊急事態宣言は解除されたが、多くの個人事業主や法人の営業利益は大幅に落ち込み、経済回復の見通しがたたない状況にある。
     弁護士の業務においても、ほとんどの裁判期日が取り消されたほか、弁護士会、法テラス、自治体及び各種事業者団体等が主催する法律相談の大半も中止や一定の制限を受け、コロナ禍によって経済的打撃を受けている。
     このような状況下にもかかわらず、国及び最高裁判所は、例年通り、本年7月末に新第65期、第66期、第67期の司法修習生であったものに対して、約30万円の返済を請求する予定である。
     これらの世代は、弁護士登録から6年ないし8年目の若手であり、経済的基盤が盤石ではないものが多く含まれるところ、コロナ禍の経済的打撃も加われば、いっそう経済的に追い込まれてしまうことは明らかである。
     前記2で述べた法曹養成制度の理念における国の責務からすれば、国は、現在のコロナ禍の状況に鑑みて、災害を理由とする個別の返済猶予の申請(裁判所法67条の3第3項)を待たずに、貸与金の返済義務を負うものに対して、一律に、返済猶予すべきである。
     当会は、国に対して、本年7月末に迫る返済請求について一律の返済猶予を緊急に求める。

以上

 

2020年7月9日

神奈川県弁護士会

会長 剱持 京助

 

 
 
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