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会長声明・決議・意見書(2023年度)

袴田事件の迅速な再審公判を求める会長談話

2023年07月12日更新

袴田事件の迅速な再審公判を求める会長談話

 

 戦後5件目となる死刑確定者に対する再審開始が確定した袴田事件について、検察官は、本年7月10日、静岡地裁で行われた打合せで、再審公判で有罪立証を行う方針を明らかにした。

 袴田事件については、袴田さんが逮捕されてから57年、静岡地裁で死刑判決が言い渡されてから55年、最高裁で死刑判決が確定してから43年が経過しようとしている。再審開始決定が確定した第2次再審請求が申し立てられてからでも、既に15年以上が経過しており、本件の審理は異常ともいえる長期間に及んでいる。

 検察官の即時抗告を容れて再審開始を認めなかった東京高裁決定を取り消し、審理を東京高裁に差し戻した2020年の最高裁決定では、5名の最高裁裁判官のうち2名が、これ以上再審請求の審理に時間をかけるべきではなく、差戻しではなく直ちに再審開始決定を出すべきだとの反対意見を述べていた。

 検察官は、それにもかかわらず、差戻し後の東京高裁の審理では、1年以上もかけて「みそ漬け実験」を行った。その結果は、かえって袴田さんの無実を裏付けるものであった。東京高裁は、本年3月、複数の専門家の意見も踏まえた上で、検察官の即時抗告を斥け、静岡地裁の再審開始決定を支持する決定をした。

 その後、検察官は、更に4か月近くをかけ、ようやく有罪立証の方針であることを明らかにした。

 既に検察官には立証準備のため十分すぎる時間が与えられており、検察官がこれ以上再審公判の進行を遅らせることは、著しく正義に反するというほかない。

 袴田事件の再審公判には、国民の司法に対する信頼がかかっている。静岡地裁に対しては、検察側の追加立証に対する弁護側の検討・反証の機会は十分に確保しつつ、既に再審被告人である袴田さんの「迅速な裁判を受ける権利」(憲法37条1項)が侵害されている現状に鑑み、速やかに再審公判を開始するとともに、連日的開廷の活用等により迅速な審理を実現し、早急に再審判決を言い渡すよう強く要望するものである。

2023年7月12日

                   神奈川県弁護士会

                               会長 島崎 友樹

 
 
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