横浜弁護士会新聞

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2000年10月号(3)

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研修委員会新規登録弁護士研修部会長 森田 明 
 今年一〇月から、修習期間が一年半に短縮された五三期生が登録するのを機に、「本会に入会した弁護士登録一年目の弁護士」に、一年間にわたり「新規登録弁護士研修」を実施することになった。
 五三期の新人弁護士は、まず司法研修所修了直後に二日間にわたり日弁連の集合研修を受講する。
 その後は各単位会で研修をすることになるが、その内容は各会ごとにさまざまである。
 横浜弁護士会では、去る七月に成立した新規登録弁護士研修規則に基づき、日弁連の新規登録弁護士研修ガイドラインに従って、(1)集合研修(従来の新人研修にあたる一日研修と、月一、二回のテーマ別の講義)、(2)個別研修(法律相談研修、刑事弁護−国選弁護・当番弁護士−研修)、(3)会務研修(委員会活動・会の行事への参加)を実施する。
 また、関弁連でも、小林嗣政理事長の尽力により、関弁連主催の集合研修を一一月中に半日かけて実施することとなった。
 新規登録弁護士研修には、弁護士一般の質の維持、向上を図り、ひいては法曹一元実現のための基盤作りをする意味がある。研修を通じて、「後輩法曹を養成するための人材を育成する」ことも一つの課題である。また、会の法律相談、国選弁護、当番弁護士等の業務の人手と質を確保し充実させるという現実的な効用も期待されている。
 研修委員会に設けられた新規登録弁護士研修部会では、司法改革委、刑事弁護センター、法律相談センター等の関係委員会から、さまざまな思いを秘めつつ参加した委員の中で議論を重ねながら準備を進めてきた。何分初めての試みで、他会の先例もなく、手探りの状態でスタートしようとしている。しばらく実績を重ねた上で、改めて会規制定による義務化をめざすこととなろう。
 新規登録弁護士を雇用する会員の方々には、新規登録弁護士が研修に参加することについて、ご理解とご協力をお願いしたい。
 また、個別刑事弁護研修では、できるだけ雇用弁護士の方に当番弁護士および国選弁護の指導担当をお願いしたいので、この点特段のご協力をお願いする。


 平成一二年六月一日、当会の正職員で構成される横浜弁護士会労働組合が結成され、小島綾子・鈴木ゆかり・諏訪要一職員の三名が執行委員に就任した。
 去る七月一九日、さっそく第一回目の団体交渉が行われた。冒頭、使用者側を代表して、当会の会長から「対等な関係を基盤として、協調的路線でいくことを期待している」との挨拶があり、その後組合執行部と担当理事者との話し合いに入った。双方とも初めはやや硬い表情であったが、次第に打ち解けた雰囲気となり、給与や職員厚生などの要求について率直な意見交換が行われた。
 当会では、活動の多様化と会員増にともなって事務量が飛躍的に増大し、以前から職員の慢性的な不足が言われていたが、財政の制約から増員は見送られていた。今回の組合の結成はこうした職員を取り巻く環境の悪化が契機になったものと受け止められている。
 しかし、職員の待遇問題を含め、当会の将来的運営を視野に入れた場合、会費収入に頼った現状から事業活動による収入増への転換を図る必要があると考えられており、今後、会員の理解と協力が強く求められることになりそうである。


11月1日に日弁連臨時総会開催
 9月14日の日弁連理事会において、来る11月1日に日弁連臨時 総会を開催することが承認された。
 法曹人口・法曹養成制度問題について
 この総会では、「法曹人口・法曹養成制度並びに審議会への要望に関する決議」が採決される予定である。この決議案は、七月の理事会にかけられ、二か月に亘り、理事会において審議されてきたものである。
 その内容は当初、
1、法曹人口については、その質を維持しながら、国民が必要な数を確保する。
2、法曹養成制度については、法科大学院(仮称)における教育を行なうこととし、弁護士会は主体的かつ積極的に関与する。
となっていた。
 この決議案に対しては、理事から多くの反対意見が出された。
 殊に、八月初に開催された司法制度改革審議会の集中審議のあとに発表された、佐藤会長の概略報告等によれば、
1、法曹人口については年間三〇〇〇人とすること、
2、法曹一元という用語は用いないこと、
3、判事補制度の廃止に踏み切らないこと、
となっていたため、これとの関係で日弁連執行部提案に対する反対意見が多く出された。
 関東十県会の会長は全員、この時点での決議案に対しては反対であった。そこで、十県会の会長は日弁連理事個人として、日弁連執行部に対して意見書を提出した。各人の意見は微妙に異なるものの、概ね、執行部提案の決議案は、司法制度改革審議会の概略報告に対する意見表明がないこと、特に同審議会が法曹一元という用語を用いていないこと、判事補制度の廃止に踏みこまなかったことに対する反対の意見表明がないこと、法曹の質の確保についての具体的提案がないこと、法科大学院(仮称)については、会内で十分論議されていないことを問題としていた。
 日弁連執行部は、十県会の会長の意見等をいれ、法曹一元の用語を加入すると共に、司法制度改革審議会に対する要望(判事補制度の廃止・法曹一元制の実現・陪審制度の早期実現)事項を入れ、九月の理事会に最終案を提示した。
 理事会において採決した結果、賛成六四反対一〇保留九であった。因みに、当会は常議員会での意見聴取を踏まえ、反対票を投じた。
 この決議案は、11月1日東京で開催される日弁連臨時総会で採決される。極めて重要な事柄であるため、多数の会員の参加と意見表明が求められる。
 弁護士法第七二条問題について
 なお、9月14日の理事会では、弁護士法第七二条問題(法律事務独占の緩和)も採決された。圧倒的多数(但、当会は反対)で、司法書士に対する簡易裁判所での補佐人としての権限を認める等とする日弁連執行部案を承認した。
 この問題については、今後も司法制度改革審議会で審議されるが、現時点では同審議会は、司法書士に対し、簡易裁判所での代理権を認める方向である模様である。
 

○臨時総会開催(9/6)
○日弁連執行部の決議案(11/1)について活発な議論
一号ないし四号議案は、いつも通りの人事案件。
 詳細は省略するが、日弁連リーガル・アクセス・センター運営委員に松井宏之会員、司法試験第二次試験考査委員に鈴木質会員が推薦された。これらは、いずれも関東十県会枠の人事であるが、同じ十県会枠の司法研修所弁護教官および最高裁判所裁判官については推薦しないことになった。
 五号議案は、今般の広告解禁に伴う会則改正に関する臨時総会開催の件である。
 従来も一定の範囲で広告は認められてはいたが、従来の会則は「原則禁止」であるのに対し、今回の業務広告の解禁では「原則自由」となるなど、原則と例外が入れ替わったことから、会則第二四条の二を改正する必要が生じた。会則改正が総会の権限であることから、今般の臨時総会開催となったものである。そして、この件に関しては、九月六日に臨時総会が開催されることの他、そこに提出される全ての議案が承認となった。
 議案としては、以上で終わりであったが、日弁連臨時総会(11月1日開催予定)に提出が予定されている司法制度改革に関する日弁連執行部の決議案に対する当会の意見をどうするかについて日弁連の理事でもある永井会長から、参考までに常議員の意見を聞きたいとの提案があり、この件についての議論が行われた。この日は、日弁連執行部の方針に反対する当会会員の意見書が配布された他、委員からも、積極的な反対意見や、条件付賛成意見が述べられるなど、非常に活発な議論が展開された。
 日弁連の執行部は、法曹人口の増加および法曹養成制度としての法科大学院(ロースクール)構想、さらには(一定の条件付ながら)弁護士の法律事務独占を認めた弁護士法七二条の改正にも積極的であるが、この日の常議員会の全体的な雰囲気は、こうした日弁連執行部の方針に絶対反対という訳でもないが、さりとて無条件で是認するような雰囲気ではない、何とも微妙なものであったように思われる。
 いずれにしても、この問題に関する理事者の今後の対応には大きな注目が集まろう。
 その他は報告事項であった。
 横浜弁護士会労働組合の定期大会が開催され、その時の決議に基づく理事者との交渉経緯や、懲戒事例(高額な報酬で問題になったケース)、さらには「会名変更」に関する会員集会が九月六日に開催されることなどが報告された。
(副議長 瀬古 宜春) 

常議員からズバリひとこと
 常議員会には毎回人事議案が提出される。そんな中、専門性の高い司法試験委員等の推薦は氏名だけでは十分な審理・判断が出来ないとの意見が出され、理事者としても今後は被推薦者の経歴等の資料も併せて提出することを検討するとのことだった。
 このことは、当会の委員会人事についても同様ではないか、と私は思う。毎度毎度、委員候補者氏名がズラリと並んだ資料が配布されるが、委員歴も所属委員会数も全く分からない。羅列された名前をボンヤリ眺めて「ああ、またあの人の名前が入ってる。お気の毒ですな」などと思うだけである。
 当会委員会通則は、委員会の活性化を目的に制定され、全会員の委員会活動参加・一会員は三委員会まで・委員の任期は連続三期まで、という原則を定めている。人事議案が淡々と処理されていく中、委員会通則の理念は一体誰が何処で実現するのか、と私は思う。
(四九期  阿部 雅彦) 

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