横浜弁護士会新聞

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2000年11月号(2)

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参加会員 活発な議論を展開
 九月一二日午後三時より、当会館五階大ホールにおいて、刑事弁護ガイドライン(以下「ガイドライン」)に関する、会員による討論会が開催された。
 松本素彦副会長の司会進行で行われたこの討論会には、パネリストとして日弁連刑事弁護センター副委員長の岡田尚会員、横浜弁護士会刑事弁護センター事務局長の金子泰輔会員、同センター委員の小川光郎会員が参加した。以下は各パネリストの報告である。
▼岡田会員(結論)ガイドライン策定に賛成である。
(理由)もともと、日弁連刑事弁護センターにおいて、被疑者国公選弁護に関するマニュアルを作成しようという流れがあった。ところが最近になり、政治的な流れの中で、被疑者国選問題が急浮上し、それと同時に刑事弁護における弁護士の質の確保の必要性が言われるようになった。従ってこのまま事態を放置すると、国が独自のガイドラインを策定し、弁護士活動に不当な制限を加えるようなおそれも生じかねない。そのためには、日弁連自らが策定に動き出すべきである。
▼金子会員(結論)現状では、賛否は留保せざるをえない。
(理由)ガイドライン問題が議論されるようになってまだ日が浅く、議論が十分整理されていない。ガイドライン第二次案を検討しても、何を想定しているのか意図がよくわからないところがある。規定することの是否はともかく、内容的には、問題のある、或いは不必要な規定が多いのではないか。
▼小川会員(結論)ガイドライン策定に反対である。
(理由)策定賛成派は、「人質司法」「監禁司法」について、問題意識を持っていないのではないか。ガイドラインは、弁護士の活動を懲戒をもって恫喝するものに等しい。法務省の作成した「問題弁護二九事例」に取り上げられているのは、問題弁護などではなく、むしろ熱心な弁護活動である。
 以上のパネリストの報告後、意見交換となったが、共同受任禁止の規定をどう考えるか、いわゆる不熱心弁護活動へ会としてどう対応していくのか、日弁連刑事弁護センター合宿でのガイドライン第二次案決議は効力を有するのか、日弁連の悲願である被疑者国公選実現との関連はどうなのか等、参加会員らによって活発な議論がなされた。
(小川 佳子) 


 基本的人権の擁護・確立のために優れた活動をした個人・団体を表彰する横浜弁護士会人権賞も、今年で五回目となる。
 昨年度の受賞者は「神奈川県インドシナ難民定住援助協会」であったが、受賞にあたって、今後の活動の大きな励みになるとして大変喜んでいただいた。
 今年度は、外部選考委員を次の方々に改選させていただいた(アイウエオ順)。
  加藤 彰彦氏(横浜市立大学教授)
  佐木 隆三氏(作家)
  篠崎 孝子氏(有隣堂代表取締役会長)
  増田れい子氏(ジャーナリスト・エッセイスト)
 応募・推薦は九月一一日に締め切られた。今年度は、時期を異にして新聞等に何回か掲載されたこともあり、長年にわたって地道に人権擁護活動に取り組んできた一五団体・個人から応募・推せんがあった。
 選考委員会は一一月一六日に開催されるが、豊富な応募・推薦を前に、受賞者をだれにするのかについての意見集約に苦労するのではないかと、うれしい心配をしているところである。
(横浜弁護士会人権救済基金運営委員会委員長 輿石 英雄) 


 九月二二日、当会館において、破産管財人初任者研修会(研修委員会主催)が行われた。同研修会は、近い将来に初めて破産管財人に就任することが期待される修習期五一期及び五二期を中心とした弁護士登録五年目までの会員を対象として、破産事件業務全般について素養を深めるという趣旨で企画されたもので、四四名の会員が参加した。研修会は前半と後半の二部制で行われた。
【第一部】
 「破産概論」と題して、横浜地裁の富盛秀樹書記官が講演した。内容は、破産申立手続と破産管財事件の事務処理の流れを一通り概観するものであったが、裁判所の事務処理の運用を中心に解説がなされ、実務を理解する上で不可欠の内容であった。
【第二部】
 「破産管財事件をめぐる法的諸問題について」と題して、同じく横浜地裁の近田正晴裁判官が講演した。内容は、管財業務の中で一般的に生じる問題について解説をするものであったが、管財人として事件を処理する場合の心構えや、管財人報酬についてもふれるなど、非常に興味深い内容となった。
 破産事件については、最近の経済情勢や事件数の増加に伴い、従来の取り扱いとは異なった実務の運用がなされてきている部分もある。今回の講演の内容は、初任者だけでなく、既に破産管財人としての経験を有する会員にとっても有益な内容が含まれていた。いずれ、破産懇や、一般会員研修会等を通じて会員に周知していくことが望ましいと思われる。
(研修委員  若田 順) 


 「横浜弁護士会」から「神奈川県弁護士会」等への会名変更につき会内で賛否両論が交わされる中、会名変更に反対する会員有志の集会が一〇月一〇日(火)ワークピア横浜において開催された。
 会名変更に反対する会員の呼びかけで約三〇名程の会員が参加し、現在の会名変更への動きについて活発な議論がなされた。
 出席した会員からは、深刻な財政難の中で相当の出費を強いられる、アンケートも委員会設置もないままでの会名変更手続は問題であるなどの意見が出され、今後は会員に広く呼びかけて、会名変更に反対する運動を開始・継続していくことになった。
 なお、すでに右集会を受け「横浜弁護士会有志の会」として会員への呼びかけが始まっており、会名変更反対集会の開催も予定されている。

― 広報委員会から ―
 「横浜」か「神奈川県」か。会名を巡って論争が続く。一方、司法改革の論議に集中するため、会名論争は休戦してはとの意見もある。微妙で難しい局面だが、本紙においては中立の立場から十分な情報を伝えてゆきたいと考えている。ご意見があればお寄せいただきたい。


 九月二六日、当会館において、働く人の権利相談研修会「実践・労働紛争と解決手続」が開催された。この研修会は、人権擁護委員会内に昨年設立された「働く人の権利に関する部会」が主催する研修会の第二弾である。
 当日は、岡田尚会員が講師を務め、三四名の会員が参加した。
 最初に「労働事件は特殊思想的事件でなく、一般民事事件である」との総論が解説された。労働事件は人の生活の基盤に関わり多様な問題が発生するが、特殊専門的な分野ではないという点が強調された。相談については、解雇や賃金不払、労災、労働条件改善等多様な相談について解決の道筋も多様であること、相談・解決機関として労基署、県労働センター、組合などがそれぞれの役割を有していることが紹介された。
 法的手段に関しては「仮処分が原則であり、本訴が例外」という大原則が紹介された。労働事件では、仮処分の手続中に和解で迅速な解決が図られる事案が多いとのことである。また、解雇を例に、解雇予告を未払賃金に充当する、雇用保険の仮給付を受ける、復職を希望する場合は労働組合を利用するなどのノウハウが紹介された。質疑応答では、仮処分に担保が不要であること等が解説され、盛況のうちに研修会を終えた。
 研修後、岡田会員からは「労働事件は権利救済だけでなく社会的意義も大きい。広い取組を」と熱い思いが語られた。
 当会では、本年一一月から毎木曜日、定例の「働く人の法律相談」窓口が始まる。長引く不況の中で、当会の取組が期待されるところである。
(佐賀 悦子) 

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