横浜弁護士会新聞

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2000年11月号(3)

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(4)足許のこと
 司法制度改革審議会や日弁連を舞台に、司法改革の議論が盛んである。弁護士が会えば、「どんなことになるのかなー」と話が出る。
 今回は、足許から「司法改革」というものを考えてみたい。「弁護士の敷居がたかい」これが、弁護士への最大の批判である。
 この批判にこたえるべく、今年一〇月一日から広告規制が原則自由化されたのだし、着手金の低額化・定額化の試みがあり、法律扶助事業の拡大も図られてきた。
 法律扶助は、一〇年程前までは他会に恥ずかしい程の実績しかなかった。しかし、今は、多くの会員の努力により、他会に自慢できるトップクラスの件数を積んでいる。
 法律相談センターは、すでに横浜駅東口、川崎、相模原、海老名、小田原、横須賀に設けられ、市民のニーズに応えてきた。
 市民法律講座も横浜だけではなく、藤沢などの外、県下各地で当会の弁護士が自治体と協力し実施している。横浜に優るとも劣らない二四〇名ほどが受講する相模原の例もある。
 行政人事の推薦依頼は、当会横浜本部あてに、県下の少なくない市町村からも来るようになった。各支部での事実上の推薦の例を含めれば多大な数となる。
 当会の会員自体が既に七二三名となり、うち二〇〇名以上が、横浜市以外に事務所をおいている。既に中規模単位会の人数である。
 そんなとき、弁護士会の会名の問題も司法改革と縁がある課題だなーと感じる。ある会員の文章に「電話帳で法律相談センターの名前もみたけれど、横浜弁護士会だから横浜市の弁護士しかいないと思ってこちらにきました」と言われたとの記述があった。なるほど、と思う。行政への人事推薦の担当をしているが、地元周辺の弁護士のみ教えてほしいという打診をされ推薦依頼に至らなかったこともある。今後、各自治体の外部監査人として弁護士を推薦したり、高等学校の司法教育のための派遣などもしていきたいと思う。そんなとき「神奈川県弁護士会」の方がはるかに通りがいいなーと感じる。
 司法制度の改革は、国単位の問題だけではない。「大きな司法」を実現すべく、当会自体がここ一〇年余、努力してきた。会名も、市民から見て、心理的な障害があってはならない、と思う。弁護士会はすでに事業体である。
 画龍点睛を欠いてはならないと感じる。既に「横浜」に愛着をもったが、自分の子どもの名前でもない。司法改革は足許から。
(副会長 滝本 太郎) 


関東弁護士会連合会定期大会
 平成一二年度関東弁護士会連合会(小林嗣政理事長)の定期大会が、九月二二日、千葉市幕張プリンスホテルで開催された。記念シンポジウムのテーマは、最近関心の高まっている「犯罪被害者支援と弁護士・弁護士会の役割」。
 はじめに、わが国の犯罪被害者の実態、アメリカ・イギリス・ドイツにおける被害者支援の現状などが報告された。続いて、桶川ストーカー殺人事件の被害者である猪野詩織さんの父親が体験談を披露し、マスコミからの取材攻勢によって深い傷を受けたことを訴えた。会場につめかけた出席者からは犯罪被害者の置かれた立場を知って、金銭的賠償だけでなく、心のケアの必要を感じたとの声が聞かれた。
 犯罪被害者への支援対策は、日弁連をはじめ多くの単位会でも取り組み始めているなか、当会でも犯罪被害者支援対策委員会が中心となり、支援センター設立の準備を進めているところであり、今後の活動が期待されている。
−関連記事四面に−


51期 中井 淳 
 横浜弁護士会に弁護士登録させていただいて早いもので一年半がすぎました。去年の四月に仁平先生のもとで弁護修業をさせていただくことになり、民事、刑事を含め多数の事件を経験させてもらいました。当事務所は、主に不動産関係、会社法務関係の事件が多いのですが、印象深い事件も多くありました。刑事事件では、海老名の方で器物損壊事件があり依頼者の方が勾留をされてしまった事件で、一日中海老名のファミリーレストランの一画を臨時事務所のようにして、修習生と一緒に示談交渉、警察との交渉などを行い、告訴を取り下げてもらって翌日に身柄解放がされた事件が印象に残っています。刑事事件の早期着手の重要性を身にしみて感じました。民事事件でもいろいろな経験をさせてもらいました。とくに建物収去の執行が印象に残っています。その建物は横浜の某所の建物なのですが、建物の「一部」の収去でありました。その収去にあたっては、建物を縦に切って建物の一部を取り壊すというもので、さらにその建物自体が土手の上に建っているというすごい状況でした。その中で執行官と相談をしながら、境界線に沿って建物を壊していく作業というのは、ある意味壮観でした。ただ、執行の過程で建物が倒れないか、土手が崩れないかなど非常に神経も使いましたが……。
 そんなこんなでいろいろな事件を経験させてもらい一年がすぎましたが、書類を書き間違えたり、依頼者から事件進行の遅さにおしかりをうけるなど失敗は枚挙にいとまがありません。また、自分の未熟さを一番感じるのは、事件の「流れ」が見えないところです。依頼者から相談を受け、ボスに方針を決めてもらえば、それに従って書類を作ったり、弁論をしたり、調停をしたりすることについては、最近はだんだん慣れてきました。しかし、依頼者からまず相談を受けた時点でこの事件はどのように進み、その中で自分としてどのような方針で臨むべきかについてまだ自信をもって決められないところに本当に弁護士としての未熟さを感じます。依頼者は何を望んでいるのか、相手方はどのように出てくるのか、この事件はどの方向に流れていくのかがまだ十分見えていない証拠ではないかとつくづく感じます。私自身当面の目標はこの事件の「流れ」が見える弁護士になりたいというところでしょうか。
 また、弁護士になってつくづく思うことは本当に幅広い知識を要求されるということです。司法試験で学んだことは本当に法分野の中では一握りの分野にすぎなかったことを感じます。忙しさに流されて十分な勉強をしていない自分にもどかしさを感じます。弁護士になる前は弁護士になったらあれも勉強しよう、これも……などと考えていたのですが、現実はなかなかできないものだと痛感しています。今後は自分の中で余裕を見つけていままでの自分を反省してさらに知識をつけていかなくてはと思います。
 うちの事務所は仁平先生を始め同僚の徳久弁護士、事務員さんも含め非常に明るい事務所です。弁護士になっていままでの考えられないようなストレスに押しつぶされそうな毎日ですが、このような明るい事務所に支えられてなんとかがんばっていけているという状況で、一日も早く一人前の弁護士になれるよう精進しなくてはいけないと感じます。


 去る一〇月一〇日、関東管区警察局長及び関東管区暴力追放運動推進センター連絡協議会より非弁・民暴委員会に対し感謝状と金一封が授与され、高原委員長が同委員会を代表して受領した。
 これは、非弁・民暴委員会の多年にわたる活動が評価されたものだが、暴力を背景にした輩は「エセ右翼・エセ同和」「フロント企業」などと称され、手を替え品を替え介入して来ており予断を許さない。表彰を機に、委員一同、民事暴力介入事案に毅然と対応する決意を新たにした次第である。
(非弁・民暴委員会副委員長 佐藤 修身) 

72条問題 ― 会員一人ひとりが真剣に考えてほしい
村事務局長ご苦労様でした
 一号、二号議案は人事案件。三号ないし五号議案は、九月六日の当会臨時総会で「業務広告原則自由化」が承認されたことに伴い必要となる関連規則の制定・廃止、改正の件であり、いずれも問題なく承認された。
 六号議案は、五三期司法修習終了予定者の条件付入会許否の件であり、合計二六名全員の入会が承認された。
 七、八号議案は、いずれも事務職員採用に関する案件であり、九号議案は、平成一二年一一月一九日にパシフィコ横浜で開催される「日英任意後見制度の動向について〜英国の経験と日本の今後」(主催:横浜市、その他各種福祉団体。後援予定・法務省、英国大使館等)を当会が協賛することについての承認を求める案件であるが、いずれも全員一致で承認された(ちなみに、協賛は一切の経費負担を伴わないもの、後援は一定の費用負担を伴うものという違いがあるようである)。
 一〇号議案は、当会の事務局長嘱託契約更新の件であるが、結局、更新しないことで事務局長と合意したとの報告がなされ、これを全員一致で承認した(村事務局長、ご苦労様でした)。
 その他、緊急議案としての行政関係等の人事案件が議決され(承認)、これにより議決案件は終了したが、その後、前回の臨時常議員会に引き続き、法曹人口、ロースクール問題及び弁護士法七二条問題(弁護士による法律業務独占の緩和)についての議論となった。
 前回同様、これは、来る一一月一日に開催が予定されている日弁連臨時総会に日弁連執行部が提案しようとしている決議案に対し、日弁連理事としていかなる対応をすべきかを考えるうえでの参考にしたい、との永井会長の要請により行なわれたものである。
 前回は、主として法曹人口、ロースクール問題に議論が集まったため、今回は、弁護士法七二条問題を中心に議論が進められたが、一定の要件のもとに司法書士、弁理士、税理士に訴訟への関与を認めようとする日弁連執行部の考えに対しては、いろんな観点からの疑問のみならず、反対や批判的意見が多く、人権擁護の観点から強く反対する意見も述べられた。
 ちなみに永井会長からは、日弁連執行部は、弁護士法七二条問題を総会の議決事項とは考えておらず、この問題は、日弁連理事会において採択されるとの見通しが述べられた。
 いずれにしても、現在議論されているこうした諸問題は、弁護士という狭い枠を越えた大きな問題であり、我々一人ひとりが真剣に考えなくてはならない問題である。
(副議長 瀬古 宜春) 

常議員からズバリひとこと
 今年、川崎支部枠からの選出で初めて常議員になった。会則第四章「機関」の第一節「役員」第二節「総会」の次に第三節「常議員会」とあり、総会に次ぐ意思決定機関だけに、審議事項は多岐にわたって複雑(会則第七二条)。議案の予習をしておかないと、理解、ましてや発言などできない。諸先輩方の活発な議論を目の当たりに、萎縮してしまうのである。名実ともに「常議員からズバリひとこと」を言えるようになるのは、いつのことやら…。
(四七期  横溝 久美) 

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