横浜弁護士会新聞

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2000年7月号(3)

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 本年四月から新しい成年後見制度がスタートした。従来の禁治産及び準禁治産制度に対しては、その名称が本人保護よりも治産を禁じるという意味を持ち利用しにくい、軽度の痴呆、知的障害などに対応できない、禁治産では日常生活に必要な行為もすべて取消の対象となり不便である、その効果が一定で硬直的である、後見人として配偶者や親族が必ずしも適切とは言えない、福祉関係機関などが財産管理をする必要があっても申立できない、一人の後見人では対応できない場合がある、宣告され戸籍に記載されることに抵抗があるなどの問題点が指摘されていた。つまり、意思能力が不十分な者が社会に適応するため積極的にこれを活用するには必ずしも十分なものではなかったのである。
 そこで、以上のような問題点を解消し、意思能力が不十分な者が正常な社会生活をおくれるようにするため、本人の自己決定の尊重、残存能力の活用、ノーマライゼーションの理念に立脚して作られたのが新しい成年後見制度である。
 すなわち、従来の禁治産を「後見」、準禁治産を「保佐」にそれぞれ改め、新たに軽度の精神上の障害に対応するための「補助」の制度を設けた。
 後見では、日常生活に関する行為は後見人の取消権の対象から除外し、本人の自己決定に委ね、後見人選任及びその事務処理に当たっても本人の意思を尊重する。
 保佐では、以上のほか同意を要する行為の範囲を拡張でき、特定の法律行為について本人の同意のもと代理権を与えることもできる。
 「補助」では、これを開始するのに本人の同意を必要とし、どの範囲で代理権、同意権を付与するかは当事者の選択に委ねられる。配偶者法定後見人制度を廃止し、最も適任と思われる者を選任する。一定の場合市町村長も申立ができる。複数の者又は法人が後見人等になることもできる。
 また、本人が判断能力のある時期に、判断能力が不十分な場合の療養看護及び財産管理の事務の全部又は一部について代理権を与える任意後見の制度が設けられた。そして、後見等が開始された場合又は任意後見契約が締結された場合、戸籍には記載せず、成年後見の登記がされることになった。
 この新しい成年後見制度が活用されるかどうかは、精神に障害のある者が進んで社会の中に出て活動できる社会的基盤を作れるかどうか、痴呆性高齢者や知的障害者が安心してこの制度を利用できるかどうかにかかっている。精神に障害のある者が最大限自己の意思決定を尊重されながら、かつ、適切な後見人、保佐人、補助人の協力を得て、その療養看護に務め、財産を管理し、社会に適合できるように行動するとき、精神障害者と健常者との垣根のない正常な社会が建設できる。
 この制度は、そうしたことを目指して創設されたものである。この制度を実質的に機能させることが今後の課題であり、家庭裁判所もこれを利用しやすい制度にして行きたいと考えている。

 六月二日、弁護士会館五階において、民事裁判懇談会が開催された(写真)。参加者は、佐藤横浜地方裁判所所長を含む裁判官一七名、裁判所書記官一四名、当会の所属弁護士四三名の合計七四名であった。
 昨年は、当会の新民事訴訟法運用特別委員会の委員と裁判官との間で、新民事訴訟法の運用について意見交換を行ってきたが、裁判官から幅広く弁護士の意見を聞きたいとの要望があり、また新民事訴訟法も施行後相当期間が経っていることから、本年度は、全会員に参加を呼びかけて、懇談会を設けることとなった次第である。
 当日は、新民事訴訟法の施行により弁護士はどう変わったか、という観点から、参加者がそれぞれの立場で、自由闊達に意見(本音?)を交換した。
 若手からベテランまで、様々な意見が出され、予定していた二時間では足りないほどであったが、民事訴訟手続の円滑な運用に向けての相互理解が深まる良い機会となった。
 懇談会の具体的な内容については、後日、民事裁判手続運用委員会から会員に配布される予定である。
 今後も二、三回ほど開催を予定しているので、会員各位の参加・発言をお願いしたい。
(民事裁判手続運用委員 田上 尚志) 

 5月23日、関内の割烹「福久」で、同会の準備会が開かれ、準備会メンバー26名のほか、会長経験者川原井、佐久間、横溝、村瀬各会員に加え、永井会長以下現理事者らも参加した。席上では、「横浜」という名称と歴史に敬意を表しつつも、少なくない県民に誤解を与えていること、行政の人事推薦などで不都合があることなど発言があいついだ。実現する会の代表には佐久間会員が選出され、今後、ひろく会員の理性と情感に訴える活動を展開するとのこと。

調査室いよいよ活動開始
 第二回常議員会は、通常総会、横浜地方裁判所小田原支部庁舎の建替え問題、住宅紛争審査会運営委員会、綱紀委員会への調査請求、パート職員採用に関連する各議案を除き、その他は全て人事案件である。
 第一号議案は、横浜弁護士会各種委員会委員の選任の件であり、調査室の嘱託、総務委員会特別嘱託委員、支部連絡委員会委員が選任された。このうち調査室は、新しく設置された委員会であり、初めて委員に報酬が支払われることになっている。この調査室は、権威主義の発生、官僚化への危惧が指摘されるなど、いろいろな意味で注目される委員会であるが、その初代の嘱託には、福田護、國村武司、中村俊規の各会員が選任された。
 第二号議案及び緊急議案の第二号議案は、日弁連各種委員会委員等候補者推薦の件であり、新民訴法の運用に関する協議会、情報公開法・民訴法問題対策本部、公設事務所・法律相談センター、司法改革推進センターなどの外、合計一七の委員会について委員を推薦し、三つの委員会については推薦しないことになった。
 第三号議案は、裁判所・行政関係各種委員会等委員の推薦の件、第四号議案及び緊急議案の第三号議案は、(財)神奈川県暴力追放推進センター暴力追放相談員以外の委員推薦の件となっており、それぞれ推薦者が決定された。
 第五号議案は、理事者にとっては最も神経を使う通常総会関係議案(総会の開催日時、場所、議案等の決定についての承認)であったが、常議員の理解よろしく無事承認となった。
 第六号議案は、横浜地方裁判所が小田原支部の新庁舎を建築するに当たり、弁護士待合室は設置するものの、これまでのような弁護士会の小田原支部が入ることは認めないとの意向を示していることに対する当会の対応を諮ったものであるが、常議員会は、この問題を単なる支部の問題としてではなく、当会全体の問題として取組む必要があるとの認識で一致し、この認識に基づき、理事者が今後の方針を更に検討することになった。
 第七号議案は、当会に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「指定住宅紛争処理機関」(神奈川住宅紛争審査会)が設置され、それを運営する委員会の設置に係る規則の制定に関する議案であるが、一部修正のうえ可決された。
 第八号議案は、依頼者から預かっていた金銭を当会会員が流用したという問題に関する議案である。この件は、未だ当事者等からの懲戒請求がなされた訳ではないが、理事者としては、会が覚知した以上、当事者等の意思にかかわりなく、会として綱紀委員会に調査を請求すべしとの意向により常議員会に諮られたものである。理事者同様、常議員会においても、弁護士自治を守るためにも、弁護士会自身が所属会員に対して毅然とした態度を取る必要があるとの認識で一致し、理事者において綱紀委員会へ調査を請求することになった。依頼者との金銭トラブルは、弁護士生命にとって致命傷となる問題であり、くれぐれも会員各自の自戒が肝要であることを痛感させられる問題である。
 その他の緊急議案としては、前記の神奈川住宅紛争審査会の運営委員選任、パート職員採用の件が議案として上程され、いずれも異議なく承認された。
(副議長 瀬古 宜春) 

常議員からズバリひとこと
 最初の常議員会のある日、今日は常議員会があってその後懇親会だから遅くなる、と妻に言ったところ、常議員会とは何であるか、と尋ねられた。常議員会とは常議員の会であるというようなことをごにょごにょ言って家を出た。私の認識はそんなものである。私の父親は他会で常議員会の議長をやったことがあるのだが、そのとき父親は、議長なんて事務局の用意した原稿を読んでいればいいんだ、といい加減なことを私に言っていたので、私の認識形成には何の役にもたたなかった。すでに二回ほど常議員会は行われているが、メンバーがかなり自由に発言して、結構面白い。今年は、常議員会の日程が変則なので、私は全回出席出来ないのだが、それが残念なくらい面白い。ちなみに、少なくとも横浜弁護士会の常議員会の議長は、事務局の用意した原稿を読んでいればいいというような、お気楽な仕事では全然ないようである。
(四五期  杉本 朗) 

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