横浜弁護士会新聞

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2002年2月号(4)

 
新人弁護士奮闘記 53期 井上 雅彦会員
満足感だけでは事務所はつぶれてしまうので……
 私は、相模原市で弁護士登録直後から事務所を開設しました。当然最初は右も左も全然わからず、おまけに仕事もなく、まずは大好きなゴルフができるということで、横浜法曹ゴルフに参加させていただき、あわせて、「何でもやらせていただきます」と営業活動をしました。平成一二年のクリスマスの頃にはほとんど収入はなく、通帳の数字が減っていく現実にクリスマスどころではなく「苦しみマス」という感じでした。しかし、営業活動の甲斐あってか、平成一三年に入ると様々な事件を手がけることができました。
 印象に残っている事件として外国人の刑事事件があります。被疑者は、薬事法違反で逮捕されたのですが、私自身薬事法などという法律はお目にかかったことがないので、知りあいの先生にアドバイスを求めました。しかし、「まず起訴されると思うよ」と言われたので、とにかく足繁く接見に行き、被疑者には「たぶん起訴されると思うけど、正直に話してごめんなさいと言えば何とかなるかも」などと話しました。
 検事とも交渉しましたが、被疑者は法律に違反しているという認識がなかったので、かわいそうだから何とかしてください、とお願いしたようなものでした。でも、その甲斐あってか、罰金で済みました。内心「やった」と満足していました。
 ところが依頼者から「会って話がしたい」と連絡があり、奥さんと幼い子供を連れてきました。内心イヤーな予感がしました。奥さんは日本語が上手で、「有り難うございました。感謝しています。でも、仕事がなくなったのでお金がない。一〇万円でいいですか」と言ってきました。
 本当は起訴されなかった場合は三〇万円報酬をいただく約束だったのですが、可愛らしい子供の顔を見て「いいですよ」と答え、有り難く一〇万円をいただきました。子供と奥さんを連れてきたのは作戦だったのかもしれません。でも、「いいことしたな」という気分がしたので満足です。満足感だけでは事務所がつぶれてしまうので、今後は事務所がつぶれない程度の報酬はいただこうと思っています。

私の修習日記 第55期修習生
温かさを少年に
第55期修習生 望月 孝文
 私は、横浜弁護士会の柴田恭兵こと瀬古宜春先生の下で修習させていただいている。今回は、瀬古先生にご紹介いただいた山崎健一先生の下で一ヵ月にわたり見せていただいた少年事件について書いてみたいと思う。
 少年の非行事実は無免許運転・スピード違反・窃盗。世間一般に見られるような不良グループとの付き合いはない。
 八回に及ぶ少年との面接を通じて、会話の重点は非行原因に置かれた。「どうしてこんなことやっちゃったんだろうね・・・」山崎先生の問いかけに対し、少年は黙ったまま。長い沈黙が続き、聞こえてくるのは面接室の空調の音だけ。二人の間に真剣勝負に自分の入るスペースはなかった。「何とか少年に自分の力で答えを見つけて欲しい。」そんな山崎先生の気持ちがひしひしと伝わってくる。
 両親との面接。少年の家庭・生活環境が次第に明らかになってくる。これといった問題のない家庭。でも何か足りない・・・。
 調査官面接。調査官の深い洞察力にただただ唖然とするしかなかった。
 意見書の起案。面接を通じて、少年の長所がたくさん見えてきた。加えて、事案自体は軽微。しかし、何か物足りなさを感じる。この少年にとって今不処分とすることが長い目で見たとき本当にいいことなのか?真剣に悩んだ。思い悩んだ挙句、まっすぐ人の目を見て話す少年の瞳を信頼して、不処分の意見書を書いた。審判の結果は保護観察だった。
 手続を一通り見させていただき、調査官・裁判官と一体となって少年の更生を考える付添人のすばらしさを再認識した。人間同士が触れ合う温かさを感じた。その温かさを少年に伝えられるよう、自分自身もこれから精進していきたいと思う。
 最後に、稚拙な文章を一生懸命採用してくださった山崎先生、そして何より少年事件を最優先してくださった瀬古先生にこの場を借りてお礼を言いたい。
(指導担当 瀬古宜春会員)

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訃    報
お悔やみ申し上げます
田邊 尚会員

平成一三年一二月三〇日ご逝去
享年七一歳
昭和五年一一月二四日生
昭和三九年四月九日当会入会

編集後記
 広報委員兼社交委員として賀詞交換会・新年会に出席しました。長年に亘って活躍されてきた大先輩の元気なお姿を拝見し、本当に頭の下がる思いでした。
 能力のない私としては、せめて健康だけは維持して頑張ろうと改めて決意した次第です。
デスク 沢藤 達夫   一面担当 渡辺  穣
上山 智之
  二面担当 二川 裕之
      三面担当 佐賀 悦子   四面担当 小川 佳子

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