横浜弁護士会新聞

back

2001年6月号(1)

next
 「神奈川におけるロースクールを考える」と題する報告集会が五月一八日午後六時より、横浜弁護士会五階大会議室で行われた。
 当会は、すでに横浜国立大学との地域連係型法科大学院構想を打ち出して大学との協議を進めている。シンポジウムはこのような当会の動きについて、広く会員に報告して理解を求め、議論を喚起する趣旨で行われたものである。
 開始時間には一般会員の出席者が二〇名に満たず、一般会員の関心の低さが際だっていたが、次第に人数も増えて一時参加者は三〇名程度となった。
なぜ横浜国大か
 当会としてもロースクールに積極的に関わっていくべきだという須須木会長の挨拶によりシンポジウムは始まり、続いて山下光会員から、本年三月に設置された当会の法科大学院検討特別委員会の概括説明が行われた。山下会員は、同委員会委員長の立場から、ロースクールの設置は国民にとっても重要な影響を与える問題なので、会員からきたんのない意見を聞きたいと話した。
 次に会員、島崎友樹会員から、昨年夏以来の横浜国立大学との協議状況について説明があった。
 永井会員からは、昨年一一月中に神奈川県内の各大学に対して協議の申し入れを行ったが連携したいと回答したのは横浜国大だけであったとの報告があり、当初から国大とだけ連携することを考えていたわけではないことが強調された。
横浜国大との協議内容
 島崎会員からは、協議経過の詳細な報告があった。これによると、昨年来の協議で問題となった点は、県内のロースクールの特色は何か、カリキュラムや講師派遣をどうするかという点であるとのことであった。
 特色については、大学側が、横浜は国際経済都市であるという認識に立ち、国際経済法系という大学の特色を生かしたカリキュラム作りを年頭においていたのに対し、当会は、神奈川県内のニーズはむしろ市民や中小企業を中心とした市民事件にあり、市民法曹の育成に重点を置くべきだと考えており、両者の考え方に食い違いがあったことなど興味深い報告がなされた。
 また、秋には模擬授業が計画されているとのことであり、今後当会における講師候補者の確保が重要な課題となるとのことであった。
日弁連などの動き
 続いて藤村耕造会員から、最新の日弁連や文部科学省の動きについて報告がなされた。日弁連はすでにロースクールのカリキュラムについて司法試験合格者などを学生に見立てて模擬授業を実験的に行っており、藤村会員自身、この試みに大きな感銘を受けたとのことであった。
 さらに、文部科学省の協力学者らによるカリキュラム構想については、家族法を必修科目としている点を評価しつつ、基礎的法分野における体系的理解に重点を置いているなど従来の法学部教育の枠を出ていないのではないかという疑問を呈した。
 この報告を補足する形で、日弁連のロースクール設立運営協力センターの菅野正二朗弁護士から日弁連の考えについて報告がなされた。菅野弁護士によれば、当会のロースクール構想は、法学部卒だけでない多様な人材を確保し、プロセス教育を充実させるという日弁連の理想に近い形であり、その動向には注目しているとのことであった。
ロースクール実現のために
 続いて川島清嘉会員から、ロースクール実現に向けてはカリキュラムや教材、講師派遣の方法など課題が山積みしている旨の報告があった。
 その上で川島会員は、課題実現のキーポイントとして、ロースクールを魅力的なものにするためのアイディアを会員が積極的に出して欲しいこと、会全体が講師など負担の大きな会員を支えていくシステムが必要であること、とりわけ若手の会員に積極的に関わって欲しいことの三点が必要であると力説した。そして最後にロースクールは当会が社運(?)をかけた一大プロジェクトであり、何としても成功させなければならないという強い決意が述べられた。
本場ロースクール報告と質疑応答
 最後に日弁連の「百聞は一見に如かずツアー」に参加している渡辺智子会員から、ニューヨーク市立大学などの見学報告がなされた。
 渡辺会員からは、ロースクール内に事務所が置かれ、実務教官が監督しながら現実のケースを扱うクリニックなど、我々にとって馴染みの薄い本場のカリキュラムなどについて大変興味深い報告がなされた。
 その後全体について質疑応答の時間が設けられたが、既に時計の針は午後八時を過ぎていたため、二名の会員からの意見や質問のみが述べられた。会員からは、新司法試験はどのようになるのかなどロースクールと法曹養成の枠組み全体に関する質問のほか、横浜国大の最先端分野と市民弁護士中心の当会とはミスマッチではないかなどの指摘がなされた。
 今回の報告集会は、内容の濃いものであったが、そこで報告された情報は、既に当会の新聞や司法改革ニュースで報告済みのものが多く、目新しいものは少なかった。また、「神奈川におけるロースクールを考える」というタイトルや、広く会員の議論を喚起するという趣旨からすれば、二時間以上にわたって長々と報告者の意見に耳を傾けるというのはいささか疲労を感じるものであった。今後もこのような集会が行われるとのことであるから、質疑応答時間を増やすなど進行については改善が望まれる。
(岩田 武司) 

ドメスティック・バイオレンス7件
 四月七日午前一〇時から午後二時三〇分まで全国一斉女性の権利一一〇番の一環として、当会において女性の権利一一〇番を実施した。
 今年は初めて、財団法人横浜市女性協会(横浜市の外郭団体)横浜女性フォーラムとの共催での実施となった。
 また、相談時間を昨年より一時間三〇分延長した。
 相談は当会人権擁護委員会委員一二名が交代で担当するとともに、フォーラムから三名の相談員の応援を得、福祉等については、フォーラムの相談員が直接相談者に情報提供をした。
 離婚後も夫から探索されている、痣ができるほどの暴力を振るわれるなどの深刻な被害について、相談が寄せられた。
 相談件数は、一三件でうち七件がドメスティック・バイオレンス(DV)であった。
 残念だったのは相談件数が昨年を下回ったことである。おそらくこれは、広報が不十分だったためではないかと推測される。より広く一一〇番の実施を知ってもらうようにしていくことが今後の課題である。
 今年の特徴は、電話での相談だけで終了するのではなく離婚の法的手続を取るなどのため継続相談となったケースが四件あったことである。このことは、行動を起こそうとしている女性とアクセスできたことを示している。
 DV防止法が今国会で成立し、秋にも施行される。当会でも、DV事件に迅速適切に対応するための対策が必要となっている。
(人権擁護委員会 渡辺智子) 

山ゆり
 春の休日に、家族でお花見のついでに東京タワーへ遊びに行った。蝋人形館や水族館へも行ってみた。展望台からは東京が一望できる。中でも興味深いのは、展望台の窓の上に掲示されている昭和四〇年代の東京の大パノラマ写真である。つまりここでは現在と過去の東京を比較しながら眺めることができるのだ。東京は変わった
私も子供の頃、東京タワーへ行ったことがある。子供だった私は丁度この写真と同じ旧き東京の風景を展望台から眺めていたのかと思うと、不思議な気持ちになった
外へ出て、タワーの前で子供たちの写真を撮った。シャッターを押した時、昔、私も父に写真を撮ってもらったことを思い出した。弟と一緒に、自分たちとタワーのてっぺんまでが全部写真に入るように撮ってね、と頼み、父は無理して地面すれすれの低い姿勢で写真を撮ったのだった
そしてふと、その時の両親は今の私よりも若かったのだと知り、愕然とした。私はいつの間に子供の写真を撮る親になったのか。あの頃の壮年だった親はどこへ行ったのか
月日が経つのはなんて速いんだろう。まるでカメラのシャッターを切る間の一瞬の出来事のようである。
「ママ!」と呼ぶ声がしてふと見ると、確かに産んだ覚えのある子供たちが、私のスカートを引っ張って、そして駆け出して行った
それにしても子連れの外出はとても疲れる、仕事をしている方がよっぽど楽よぉ、とぼやきつつ、こんな一日は時間が経つのが妙に遅いなあ、などと思う春の休日である。
(岩田 恭子) 

▲ページTOPへ
戻る
内容一覧へ