横浜弁護士会新聞

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2001年9月号(2)

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新検事正着任インタビュー
 新検事正は、大阪出身で東京大学を卒業。修習期は二一期。東京、金沢、千葉次席検事、最高検、公安調査庁次長などを歴任され、本年五月、横浜地検検事正に着任された。
 司法試験合格は、大学四年生のとき。同期の検事では一番若い方です。法曹を志したきっかけは特にありませんが、法学部に入った段階で周りが目指すべきは司法試験という雰囲気でした。
 大阪の実家で商売をしていたので、当初は弁護士を考えていたのですが、実務修習を経て後期修習の時に検事になることを決意しました。検事は何者にも拘束されず自分のやり方で仕事ができる、そういうところが決断の決め手でした。
 これまでの任地で思い出はいろいろありますが、印象に残っている事件の一つに、金沢地検時代の事件があります。
 第三セクターの使込み事件ですが、捜査の端緒が内部告発であり、私が直接告発者と接触しました。その後、強制捜査に移行し、逮捕者一〇数名、汚職事件などにも発展する大事件となりました。後任者により「中小地検の独自捜査」という論文にもまとめられ、若い時代に、小さい地検ながら独自捜査を経て事件を処理したという貴重な経験をしました。
 法務省矯正局には合計七年在籍しました。刑事施設法案の立法作業に携わりいい勉強をさせてもらいましたが、現在まで立法に至っていないのが残念です。
 最近の司法制度改革の議論については、検察庁として、国民の批判的な見方あるいは検察に対する期待というものを取り入れ、風通しのいい組織にすることが求められていると思います。
 若い検事には、国民の期待に応えるために、事件の関係者に対して捜査機関の立場や考え方を誠意をもってきちんと説明し、納得を得られるよう努力することが必要だと口を酸っぱくして伝えています。
 また、検察の仕事は、昔から「被害者とともに泣く検察」ということが言われていますが、今の検事にはその原点に戻り、実践して貰いたいと思います。
 但し、今の若い検事は大変忙しいため、これらのことを実践しようとすると、どんどん非人間的な勤務になってしまいかねないですね。そのために、検事の増員は不可欠だと思います。
 また、刑事裁判への「裁判員制」の導入などにより、国民に納得される捜査、公判活動がより求められ、審理の仕方も相当変わってくるでしょう。検察官が果たす役割は益々重大になることが予想されます。
 刑事裁判では弁護士の皆さんのより活発な活動を期待しています。それにより検察庁も活性化すると思いますし、国民に納得される裁判が実現すると考えています。
 横浜は始めての任地ですが、大変活気のある街という印象です。横浜地検も若い職員が多く、後進を育てるおもしろさを感じています。
 横浜弁護士会は、検察庁、裁判所を巻き込んで活動をしている活発さを感じますが、さらに被害者支援の問題など益々協力が必要な問題がありますので、検察庁として何ができるのか考えていこうと思っています。
* * *
 お忙しい中、「国民の期待に答えられる検察」という検事正の信念を率直にお話いただいた。
 ご家族は、奥様と男女の双子のお子様。お二人とも独立され、ご長男は宇宙物理の研究をされているとのこと。千葉にご自宅をお持ちだが、現在は官舎住まい。
 山登り、スキーと多彩な趣味の持ち主で、スポーツマン。
(特にゴルフは、オフィシャルハンディ18とのことであったが、七月末の法曹ゴルフコンペではハンディ15にて見事優勝された。)
(聞き手 広報委員長 岡部光平  広報委員 佐賀悦子)

各所に工夫が凝らされ好印象
 平成一三年七月一六日、横浜地方裁判所主催により、横浜地方・簡易裁判所新庁舎の見学会が行われ、横浜地方検察庁及び横浜弁護士会から二〇数名が参加した。
 新庁舎は新旧の時代の調和を試みた地上一三階建て地下二階の建物で、横浜市から市認定歴史的建造物とされている。
 見学会は最上階一三階の大会議室から始まった。MM地区や関内など周囲の素晴らしい景観を味わった後、地裁側より全体説明を受ける。
 その後、先ず九階のラウンドテーブル法廷及び和解室へ。
 いずれも現行の民事訴訟手続において重要でかつ利用頻度が高いことから、その数を旧庁舎より飛躍的に増加させている。部屋の大きさにもバリエーションを持たせ、事件に即応した迅速かつ充実した審理が提供できるよう工夫したとのことであった。
 五階の民事合議法廷及び四階の刑事単独法廷は、角を丸め曲線を用いた法壇や卓子を設置して、従来、冷たいイメージを持たれがちであった法廷内の雰囲気を和らげていた。
 また、地裁民事部、地裁刑事部、簡裁、事務局が混在しないよう、それぞれにフロアを割り振るとともに、部署ごとに例えば、民事は緑、刑事は青、簡裁は赤というようなフロアカラーを与え、その色を備品等にも反映させて、来庁者の視覚的な誘導を試みていた。
 二階の検察官待合室を見て、地下一階の同行室へ。勾留質問の部屋に設置された曲線を用いたテーブルが印象的であった。
 一階に戻って簡裁受付センターへ。
 簡易裁判所は、近年、受付相談者が増加傾向にあることから、受付センターの入口を透明ガラスの自動ドアにして開かれたイメージを持たせ、一方で、書記官室内には個室形式の相談室を設置していた。

 そして、一階大合議法廷(一〇一号法廷)は新民事訴訟法による裁判官五人の合議にも対応でき、八四の傍聴席が設置されており、旧庁舎の特号法廷のイメージが残されていた。

 最後に弁護士待合室だが、思ったより広く、依頼者との打ち合わせができる個室スペースも設置されており、見学者の感想は極めて好評であった。
(沢藤 達夫)

 七月一九日午後四時から当会会館において、当会と横浜地裁刑事部裁判官との懇談会が開催された。弁護士二六名、裁判官一三名が出席。当会提出の「国選複数受任の基準について」、裁判所提出の「当番弁護士制度の運用の実状」「否認事件における弁護側冒頭陳述」、という三テーマについて、活発に質疑応答・意見交換が行われた。
 「国選複数受任の基準について」については、裁判官から、事案重大・事実複数・証拠が膨大になる見込みある場合、という点が複数受任事件の共通要素として挙げられた。
 「当番弁護士制度の運用の実状」については、弁護士から、身柄拘束された被疑者の下には、再逮捕・再勾留、勾留中求令状等の別や、土日を問わず原則当番弁護士が派遣されること、土曜日曜の担当当番弁護士が神奈川全域をカバーするため苦労している、という運用の実状が説明された。
 「否認事件における弁護側冒頭陳述」については、弁護士から、冒頭陳述は争点の明確化という意義を有するかもしれないが、被告人の防御の利益には必ずしも資するものではない、という率直な意見が述べられた。
 日頃窺い知ることのできない裁判所の抱いている疑問点や、双方の苦労の相違点が浮かび上がり、大変意義深い刑裁懇だった。
 ほとんどの出席者が、引き続き行われた懇親会に参加し、更に議論を深めた。
(刑裁懇メンバー 中原都実子)

 七月六日午後五時三〇分から、当会五階大会議室で、裁判官二八名(地裁二四名・家裁四名)、検察官二三名、当会会員六九名、以上合計一二〇名の参加を得て、本年度の法曹懇談会が開催された。
 当番庁持ち回りの恒例により、本年度の当番庁である仁田睦郎横浜地方裁判所長の挨拶から開会となった。
 仁田所長は、本法曹懇談会は昭和三〇年から続く伝統ある法曹三者の会合で、本年度は記念すべき二一世紀最初の法曹懇談会であること、ここにおいて更に法曹三者の協力を得て、新しいハード(庁舎)の完成のもと、市民に充実したソフトを提供したい旨挨拶した。
 続いて、次年度の当番庁である原田和徳横浜家庭裁判所長が、楽しいひとときと法曹三者のますますの連携を期して乾杯の音頭をとった。
 その後、ザホテルヨコハマの料理を囲み、各所で談笑の花が咲いた。
 閉会にあたり、小野毅副会長から、この楽しいひとときが司法改革につながることを祈念する旨の閉会の挨拶で、本年度の法曹懇談会は終了した。
(広報委員 渡辺 穣)


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