横浜弁護士会新聞

back

2002年11月号(4)

 
私のホビー 27
会員  中村文也
私のコレクションから 錦絵「民法発布宮城弐重橋御門出之図」
 幕末から明治にかけての錦絵は別名赤絵ともいわれ、人物、風景、建物、祭、制度など目につくあらゆるものが主題となっている。
 浮世絵師の受けた印象、認識がその主題を飾るのである。
 私は、法制史を研究する課程で、社会的事件を理解するのに赤絵をコレクションすることになった。この中から珍しいもので法制史に関係のある赤絵を一点ご披露したい。
 赤絵といわれる由来は、それまでの植物性の赤や紫のものから、外国の色岩油具のような紺が入ってきて一段と目立つようになったからだ。
 明治二二年は明治憲法が発布された記念すべき年であるので、当然のことながら、これに関する錦絵は非常に多い。憲法発布記念の絵が多種多様という事は、それだけ買い求める人が多かったこと、即ち「憲法」発布が、いかに大事件として当時の人々に受けとめられたかということだ。
 さて、ここに紹介する明治二二年一〇月出版の歌川国利画「民法発布 宮城弐重橋御門出之図」は、明治二三年四月公布(二六年施行されることになっていた)された、いわるボアソナード民法典の発布記念の赤絵である。民法発布を主題とした赤絵はこれが初めてである。尚現在のところ法典発布記念の赤絵は「憲法」と「民法」とを知るのみであって、「商法」「刑法」「訴訟法」などの錦絵は、まだ発見されていない。
 歌川国利は山村清助、号梅寿といい、弘化四年出生、明治三二年五三歳で没した。
 ボアソナード民法典(その後公布、施行された民法典と区別するため旧民法典ともいう)は、ボアソナード(一八二五〜一九一〇)が一〇年の歳月をもって編纂した民法典であったが、二三年四月に公布されるや賛否両論が一段と激しくなり、いわゆる「民法典論争」が行われた。断行派は梅謙次郎、岸本辰雄、磯野四郎、宮城浩蔵、杉村虎一ら(仏法系)であり、延期派には江木衷、穂積八束、奥田義人、山田喜之助(英法系)らがいた。
 論争の争点は法理論より、感情論、道徳論に及び、穂積八束の「民法出デテ中孝亡ブ」の一言が延期派への傾向を強め、結局明治二五年第三回帝国議会で「民法延期法律案」が圧倒的多数で可決され、ここにボアソナード民法典は葬り去られた。
 国利がこのボアソナード「民法」をどれだけ知っていたか今検索することはできないけれども、「民法発布」に目を向けたことに顕彰する価値がある。

私の修習日記
充実した職と食
第56期修習生 竹内 章子
 職と食に充実した弁護修習が夏の終わりとともに終わろうとしています。
 この三か月、見聞きするもの全てが新しく楽しく面白く、弁護修習の終了が寂しくてなりません。
 森法律事務所では、水地先生以外の先生の仕事も修習させていただき、そのおかげで満遍なく様々な事件を経験することができました。特に、保護観察処分に喜ぶ親子を見、私も自分のことのように嬉しかったこと、離婚という辛い局面に立たされているにもかかわらず、前向きに生きる女性の生命力の強さに励まされたことが印象に残っています。
 また、先生方の依頼者に対する接し方は全く異なっているのに、どの先生も依頼者から全幅の信頼を置かれていることも興味深く、自分の持ち味を活かして仕事をすることができる弁護士という職業の魅力を実感しました。中でも水地先生の丁寧な会話と明るい雰囲気は、依頼者をくつろがせていたように思います。来所時には不安げで落ち着きのなかった依頼者が、先生と会話するうち安心して、晴れ晴れとした表情に変わる様子を目の当たりにし、非常に感銘を受けました。
 食の充実に関しても一言。受験生活中の粗食に慣らされた私の胃は、軽く一・五人前はある毎日の食事に嬉しい悲鳴を上げ続け、この夏自分史上最高体重増加率を記録してしまいました。しかし、事務所の弁護士・事務局が皆一緒にとる昼食は、毎日にぎやかで楽しく、量のみならず質的にも豊かな食事で、弁護修習の醍醐味を食事面でも大いに味わうことができたと確信しています。
 このように短くも充実した弁護修習を終え、今は早く弁護士として仕事をしたい思いでいっぱいです。水地先生、そして森事務所との幸運な出会いに対する感謝の思いを常に心に留めつつ、今後は体重ではなく心と頭を成長させてゆきたいと思っています。
(指導担当 水地啓子会員)

新人弁護士奮闘記 第54期 西本 暁 会員
一生懸命やっています (ほんとうです)
 弁護士登録直後に担当した事件が二つありました。
 一つは会社の倒産事件。
 「とりあえず受任通知出しといて」とボスに言われるまま通知を発送したのだが、翌日以降、その会社の取引先から電話で怒鳴り続けられることになる。
 どういう方針かも分かっていない私は、「今会社はどうなってんだ」「解散登記とかするのかね」「車はどこにあるんだ」などの毎日のようにかかってくる何社からもの質問のほとんどに「さあ」と答え続け、最後に言われたのは「そんないい加減なことでいいのか!」(ごもっとも!)。
 今思い出しても冷汗が出ます(ちなみに、先日、きちんと事件処理は終了させました)。
 もう一つは先取特権に基づく物上代位による債権差押。
 一応起案した書面をボスに見せようとしたのですが、「私はやったことないから見ても分からない」と言われ(ボスは普段、私のどんなにつまらない質問に対しても、どんなに忙しいときでも、嫌な顔一つせず答えてくれています。念のため。)、先取特権なんて認められるんだろうかと思いながらとりあえず出してみることに。
 法律的な問題が一点あり、それをクリアできるかどうかが一番の問題だったのですが、当初裁判所からは「認められません」との返事。
 困った私は毎日のように書記官に「どうしてですか〜」「何でだめなんですか〜」「どうすればいいんですか〜」と電話をかけ続けたところ、ある日「いいことになりました」との書記官からの返事。
 差押は無事認められました。
 私が弁護士になって初めて裁判所に申し立てをした記念すべき書面でしたが、私自身の単純なミスも数多くあって、何度も書記官から訂正箇所指摘の電話があり(ほんとうに迷惑かけました)、差し替えの連続で、結局私が最初に出した書面は原型をとどめずじまいでした。
 あれから一年。
 少しはしっかりしてきたつもりですが、書記官や執行官に「これじゃあできませんよ」と言われると、「えーっ」とごねたり、「じゃあどうしたらいいんですか〜」と泣きつく状況に変わりはありません。
(タイトルは、私はよく「やる気なさそう」とか「熱意がない」などと言われるので、そうではないという思いをこめてつけました。)

弁護士フェスタ 開催迫る
 一一月三〇日(土)午前一一時から、開港記念会館や当会会館で弁護士フェスタが開催される。
 メインは、裁判員劇。裁判官役や被告人・証人役は大部分決定し、これから稽古を重ねていく段階だ。市民からの裁判員役への応募数は選考段階にある。
 裁判員劇は、有罪・無罪の判断が分かれる内容で、公開評議でどのような意見がたたかわされるのか興味深いところである。公開評議では、現職裁判官と元裁判官が裁判官役をつとめる予定だ。
 裁判劇傍聴、評決用紙による結果の判定に多数の市民の参加を期待したい。
 会員には、是非観客動員に協力していただきたいことと、法律相談担当員として当日協力していただけるよう重ねてお願いしたい。
 フェスタ当日は、DV問題・民暴対策・自立援助ホーム・犯罪被害者救済問題・弁護士費用敗訴者負担につきミニシンポが行われる。その他、各種展示や将棋の早指し、写真部・美術同好会の展示等盛り沢山の内容になっている。
 
 一一月二二日(金)には、国民の司法参加の歴史的意義を考えるプレ企画が、裁判員劇や制度の理解を深めるために開催される。午後六時一五分からの中坊公平弁護士と三谷太一郎氏による講演を内容としている。中坊氏は司法改革論議の火付け役の一人。三谷氏は、大正陪審法の制定史研究の大家で、今回は裁判員制度の歴史的意義について話していただく。
 
 会員の皆さんをはじめ、市民の皆さんにもフェスタ及びプレ企画に多数参加いただき、いわば「弁護士会の文化祭」を楽しんでもらって、これからの司法のあり方についても考えていただく機会にしてもらいたい。

訃報
お悔やみ申し上げます
長谷川正之 会員
平成一四年一〇月一二日ご逝去
享年六六歳
昭和一一年八月一一日生
昭和四二年四月六日当会入会

国費による被疑者弁護制度
当会の受入れ態勢は十分か?
刑事専門弁護士や公設事務所は必要か?
 標記のテーマについて会員を対象に日弁連刑事弁護センター委員と意見交換会を行います。
開催日時: 一二月六日(金) 午後五時〜午後七時三〇分まで
開催場所: 横浜弁護士会館五階 大会議室
主  催: 刑事弁護センター運営委員会

訂正とお詫び
 一〇月号三面「新人弁護士奮闘記」の藤田祐子会員は「54期」の誤りでしたので、訂正とお詫びいたします。

編集後記
 小田原での裁判員劇は大成功を納めたようです。各支部でもこれから色々な行事が予定されているようで,また今年も開催される弁護士フェスタでも,放火事件を題材にした裁判員劇が開催される予定です。
 司法改革の一環として,市民の司法参加が叫ばれています。弁護士を目指して勉学に勤しんでいた頃は,司法は民主主義には馴染まない制度だと教えられてきました。アメリカでも,陪審員制度の下で,あるスポーツ選手が無罪となり物議を醸したのもまだ記憶に新しいところです。果たして,大岡裁きを基本とする日本の風土に受け容れられるのだろうかなどと,つい批判的な目で見てしまいます。それでも,確実に司法の民主化の波は押し寄せて来ています。取り残されないように,弁護士も(私だけかもしれませんが)意識改革が必要なようです。
デスク 飯田 直久 一面担当 佐藤 裕 二面担当 澤田 久代
両角 幸治
三面担当 須山 園子 四面担当 畑中 隆爾

▲ページTOPへ
戻る
内容一覧へ