横浜弁護士会新聞

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2003年3月号(1)

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臨時総会 会名変更の是非を問う 「横浜」弁護士会 「神奈川県」弁護士会
 来る3月11日午後3時より、当会会名の変更の是非を決する臨時総会が開催される。「会名変更」問題については、一昨年1月26日開催の臨時総会において賛成票が議決要件である出席会員の3分の2に達せず否決されたものの、過半数が変更を支持する賛否拮抗した結果であった。熱い議論が戦わされたことは記憶に新しいところであるが、改めて賛否両意見を紹介し、会員各位の判断の一助としたい。
会名変更に賛成
会員  清水 規廣
県民の声
 「私の勉強不足の為にオウム事件の時に横浜弁護士会の事を知りました。(今回知るまで)名前の通り横浜市内での弁護活動をされている方だと思っていました」(横須賀市内の主婦)。
 昨夏、四支部が県下の地方公共団体法律相談窓口に依頼して行なったアンケートのとき(回答数二〇六一人)に寄せられた声である。
 この声を無知な県民、例外的事象として無視してしまうか。しかし、過去のアンケートでも今回のものでも約六割の人が当会のテリトリーを知らない。横浜市の、横浜市内の弁護士会と誤解している県民も多い。単に知られていないだけではない。「今まで横浜弁護士会主催の催事や法律相談に参加したくとも横浜市内に住所や勤務地がないためあきらめていた」とか、ある市の法律相談窓口で市民に横浜弁護士会を紹介したところ「横浜市の弁護士ではなく地元の弁護士をお願いします」と言われた、小田原の弁護士が横浜弁護士会の報酬規程の説明をし始めたら「先生、小田原には弁護士会の報酬規程はないのですか」と言われたなどの話もある。
県民のアクセス
 「弁護士会は行政官庁のように市民のサービスを直接の目的とするものではない」とはもはやいえない。当会の法律相談センターやクレサラセンターの年間相談件数は一万五千人に達している。当番弁護士派遣も年間四千件に達しようとしている。国選、公共団体等の法律相談、市民法律講座など当会の弁護士派遣事業を含めると当会の事業にアクセスする県民は既に年間五万人を越えている。
 問題は、今後も続けなければならない弁護士会の事業活動をしてゆくうえで会名を変える必要があるか否かなのである。現在の会名は、横浜市内に事務所をもつ会員や横浜市民には余り不自由はないようだ。しかし横浜市以外の県民約五一〇万人の多くの人が当会のテリトリーを知らない。つまり「横浜市民のための弁護士会、横浜市内の弁護士団体だと思っていた」、「川崎市民には関係のない団体のように思える」では、相談センターや当番弁護士等のPRをしても効果は半減である。また、当会の事業活動の一端を支部会員にもお願いする以上、支部会員の意向も無視はできないと思う。
PR活動
 会名変更に反対する人から「面倒でもその都度説明すればいいではないか。会名変更にどれだけの費用がかかるのか」との反論がある。しかし説明に迫られる場面に多く出くわすのは、対外的な活動をする理事者であり支部会員である。その人達の多くが会名変更をお願いしているのである。また、その都度説明してきたのに県民アンケートの結果は約二〇年変わらない。
 県民に当会のテリトリーを一番手っとり早く知らせる方法は会名に神奈川をつけることではないか。また、私は、会名変更の有無にかかわらず、費用をかけて当会のテリトリーだけでなく当会の事業活動の内容をもっと県民にPRする必要はあると思う。昨夏のアンケートでもその要望が多く寄せられた。
 平成一二年度以降、会財政は黒字だからできるはずだ。
神奈川県弁護士会
 会名変更を実現するには、総会で三分の二以上の賛成を得なければならない。一番賛成の得られる名前は何か。「県」付の名称は、その昔、桃井元会長や武藤元会長が提唱されたときから付いていたし、また、神奈川県弁護士協同組合とのバランスもある。二年前の総会で過半数をとった実績もあるので一番賛成が得られやすいのではないかと思っている。他会からも「県立の弁護士会」と誤解されているとの話はおよそ聞かない。
 しかし私は神奈川弁護士会ではダメとも思わない。もし、総会で修正動議を出す会員がいれば審議の対象とすることに賛成し、会名変更を前提とした議論をしたい。
会名変更に反対
会員  黒田 和夫
なぜ横浜弁護士会か
 私は、本来、名称というものは自らの名前であるから呼称として一貫していればよく、他に依拠して決めるものではないと思うが、呼称としての周知性をも考慮すべきであるとしても、 「横浜弁護士会」は、明治二六年五月一日の設立以来一一〇年に及ぶものであって、坂本弁護士事件等を通じ広く日本全国に周知されている名称であるから、会名を変更する必要はないと考える。
 その理由は、次のとおりである。
 「横浜」の名称は、単なる行政区を意味する「横浜市」と同義でない。昨年開催されたワールドカップでも「横浜」の名は全世界に対して呼称されたが、諸外国において「横浜」と「神奈川県」いずれが通用する名称であるかは云うまでもない。会名変更を求める意見は、「横浜」という名称を「横浜市」と矮小化した上で、同じ行政区を意味する「神奈川県」と対比して「神奈川県」の方がより広範囲な名称であると主張している。この理屈は、「横浜」=「横浜市」という前提があって初めて言えるにすぎない。
 二一世紀という、インターネット等によりグローバルな時代が加速度的に実現されつつあることを踏まえると、この時期にあえて「横浜」から「神奈川県」に変更しようとする意見は、将来にわたって永続的に名称が使われるということを考慮していない、時代に逆行するものであると言わざるを得ない。
 一〇〇年以上の伝統を持つ名称を変更するというのであれば、今後も長期に使用が期待できる名称が必要である。道州制も議論される中、本当に「神奈川県弁護士会」という名称はその使用に耐えうる名称であろうか。
 さらに、そもそも、弁護士会は司法の一翼を担う団体であるにも拘わらず、行政区を基準に名称を考えるという発想自体に疑問がある。我々の職域は「神奈川県」というような行政区で制限されていないからである。それ故、「横浜地方裁判所」「横浜地方検察庁」に対応するのは「横浜弁護士会」である。
 もっとも、「浦和地方裁判所」が「さいたま地方裁判所」と改称されたことを指摘する声もあるが、裁判所も「埼玉県地方裁判所」というような「県」などの名称は当然のことながら付していない。あくまで司法と行政との間に一線を画している。
神奈川県弁護士会への会名変更の必要性と緊急性
 平成一三年一月二六日に四三〇名もの会員が討議に参加して、「神奈川県弁護士会」に会名変更を求める案が否決されてから二年である。変更を求める会員たちも、議決を求めた以上、その議決に従う意思も当然に併せ持っていたのであるから、新たに会名変更を求めるのであれば、少なくとも、直ちに変更しなければならない程の必要性を具体的に主張すべきであろう。
 この点について、変更論は、先の議決時と同様に「アクセス障害論」に依拠して必要性を述べているように思われる。すなわち、「神奈川県内に事務所を構えるには当会に入会せざるを得ないから、その会名も神奈川県全体を表示するのが公平」という主張である。
 しかし、これは事務所の所在地と、弁護士が活動する地域とを混同するものである。我々は行政から独立して業務を行うのであり、神奈川県内に事務所があるからと言って神奈川県に所属しているわけではない。業務の対象は日本全国はもとより世界に及ぶ。
 それよりも、いま一番問題となるアクセス障害は、当会の法律相談センターでさえも一週間程度待たされるという点である。弁護士を知らないことではなく、弁護士が直ちに対応できないという点であろう。
 執行部は当会の財政事情について黒字であると説明するが、これは法律相談センターの長期の未収金を回収した結果によるもので一時的なものにすぎない。
 構造的に赤字体質にある当会の厳しい財政事情の下で新たな出費を伴う会名変更をしなければならない緊急性もまた、全く存しない。

山ゆり
 法律事務所の法人化が法律で承認され、従たる事務所の設置も可能になった。しかし当初の予想に反して、横浜では法人化の動きは鈍い。一人の法律事務所よりも気の合う仲間との共同事務所を開設することが多い昨今なのにである
 そこで、私なりの法律事務所法人化の利用の仕方を考えてみた。まず、私と勤務弁護士とで事務所を法人化し従たる事務所を私の出身地(田舎)近くの地方裁判所支部管轄内に設置する。つまり、本店が横浜、支店が田舎にと想定してもらえればわかりやすい。従たる事務所に私が支店長として勤務することが、ここでの大きな利点である。事務所会議は、本店に月一回出張してこなし、本店での問題点や支店での問題点を討議し終了後はおいしいお酒を酌み交わす
 従たる事務所の支店長には実は大きな役目が課せられている。それは、本店採用の新人勤務弁護士の二年間にわたる支店研修の個別指導弁護士として携わらなければならないこと。従って、支店長は少なくとも弁護士経験一〇年を経た者をもって当てなければならない
 支店研修の基本的な目的は、新人弁護士に民事刑事の各事件をそれぞれ終了するまで、支店長と一緒に担当してもらい、事件の筋や訴訟の流れ、依頼者からの事情聴取の仕方や方法を一つ一つじっくりと学んでもらうこと、また弁護士過疎地域での弁護士の業務活動を通じて、弁護士に必要な超我の奉仕の精神を学んでもらうことにある イラスト
 このような法人化利用は邪道であろうか。司法改革は法曹一人一人が汗を流すことにあるらしいが、どうせ流す汗なら好きな場所で流せたらと思う。
(岡部 光平)

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