横浜弁護士会新聞

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2003年3月号(2)

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日弁連で活躍している人たち 日弁連業務改革委員長 インタビュー 高橋 理一郎 会員
 当会の弁護士業務対策委員会の委員長も歴任され、日々弁護士業務の改革に取り組まれている高橋理一郎会員に、昨年の六月から委員長を務められている日弁連業務改革委員会の活動等についてインタビューした。

 業務改革委員会というのはどのようなことに取り組んでいるのですか―
 この委員会は以前弁護士業務対策委員会といっていましたが、二一世紀を迎えたのを機に名称を改めました。
 というのも、もともと、この委員会は、弁護士の法的問題への関与の低さ、業務範囲の狭さ、国民からのアクセス障害、そして弁護士の経済的基盤の脆弱さなどから、裁判業務を中心とする伝統的な弁護士業務の拡充強化に活動の重点がありました。しかし、その後国民の間で、そうした裁判中心の紛争解決から、社会の隅々まで公正で透明な法による規律、紛争予防が求められるようになり、日弁連でも一九九四年以降弁護士業務改革運動を広義の司法改革運動と位置付けたことから、裁判外での紛争解決、紛争予防、そして法的指導、監視等での弁護士の役割をも視野に入れた弁護士業務のあり方とそのための改革に取り組むようになったものです。

 委員会の活動内容について教えて下さい―
 これまでの活動は大きく二つに分けることができます。
 一つは、法の支配の徹底、法的正義の実現のためには、利用者である国民の弁護士に対するアクセス障害を取り除かなければならないという観点からの取組です。こうした活動の成果は、報酬規定の改正、弁護士法人法の成立、リーガルアクセスセンターの創立、偏在解消に関する日弁連決議とその後の公設事務所の開設などといった形で実施されています。
 もう一つは、弁護士の経済的基盤の安定なしには、十分な活動がなしえないという観点からの取組です。これは、実態調査を実施し、その結果を広く社会に知らしめることと、事務所の経営システムや業務の改善のための書籍等を出版することで、その啓蒙に努めてきました。

 現在はどのような課題にとりくんでいるのですか―
 弁護士業務改革六か年計画に続いて、新たに「弁護士業務改革新三か年計画」に取り組んでいます。
 これは、それまでの、個人開業から集合化・協働化へ、そして開業弁護士から開業しない弁護士をも視野に入れた弁護士業務のあり方を展望し、かつあらゆる分野での多様な活動を維持することで、社会の隅々まで法によるルールの浸透を図り、法的サービスの供給能力の増大や専門性の強化等にも取り組んでいこうという活動です。
 このように、当委員会は、昨今の弁護士制度改革論議の中で、今ほど弁護士が国民に期待されている時代はないという認識から、国民にとってより一層信頼され、必要欠くべからざる存在としての弁護士をめざしてその活動を行っています。

 シンポジウムも開催されるそうですが―
 一一月一四日に、第一三回弁護士業務改革シンポジウムを鹿児島で開催する予定です。
 今回のシンポでは、「激動の中の弁護士業務改革」(仮称)というテーマで、弁護士の行政分野への関わり、ITを活用したアクセス促進方策、そしてパラリーガル等事務職員の活用方策等を議論してみたいと考えています。このシンポは、業務改革委員会と他の九委員会等から推薦された五〇名の委員と若干名の幹事で準備していますが、この委員長も私が兼ねています。また、当会からも数人が委員として参加し、熱心に取り組んでいますので、是非とも当会からは多数ご参加頂きたいと思います。
■  □  ■
 高橋理一郎会員からお話を伺い、今後の弁護士業務のあり方を十分に議論していかなければならないことの重要性について改めて認識させられた。
 高橋理一郎会員には、引き続き日弁連業務改革委員会にてご活躍されることを期待したい。
 (インタビューアー 大和田 治樹)

山田尚典会員 叙勲祝賀会
「日本の国の歴史の重みを感じた」
 一月二九日、ホテルニューグランドのレインボールームにて、この度の秋の叙勲に際し、勲四等旭日小綬賞を受けられた山田尚典会員の叙勲祝賀会が催された。
 山田会員は、当会の平成二年度会長、日弁連常務理事等を歴任され、これらの功績が評価されて今回の授賞となった。
 祝賀会は、その冒頭池田会長からの挨拶があり、当新聞の「私のホビー」欄に以前山田会員が寄稿されたオートバイの趣味に関するエピソード等が紹介された。
 引き続き、山田会員から挨拶があり、叙勲を受諾するまでの心境、授賞の感想、今日に至るまでの弁護士業務の回想等を述べられたが、その中でも、皇居で天皇陛下にお会いした時にわけもなく胸にこみ上げてくるものがあり、日本の国の歴史の重みというものを感じることが出来たという話は特に印象深かった。
 山田会員の挨拶の後、池田会長と副会長から花束や記念品の贈呈が行われ、次期会長である常議員会議長箕山会員の発声の下乾杯がなされた。
 その後は、列席者の中から多数の祝辞が述べられ、山田会員の人柄や功績等が紹介されたが、その中でも山田会員の筆頭門下生でもある遠矢会員のモノマネ付きの(結構似ていた?)、債権者集会における混乱が山田会員の一言に一挙に収束したという話や日下部会員からの山田会員の弁護士一年目における失敗談等の話は印象に残った。
 祝賀会は、山田会員の豪放磊落なお人柄を反映してか、終始和やか雰囲気で行われ、青木孝副会長からの中締めの挨拶により、盛況の内に幕を閉じた。
 山田会員から一言。
 私本人が、国から勲章をもらうような働きをしたものではありませんので、平成二年度、会員の皆様のご推挙を得て横浜弁護士会の会長、日弁連の常務理事をやったことで頂いたものです。でもそのお蔭で私にとって良いことがありました。一つは皇居で天皇陛下にお会いした時、わけもなく胸にこみあげてくるものがあり、日本の国の歴史の重みというものを感じることができたことと、今日皆様に祝って頂いて、入会以来一番嬉しい思いをしたことです。ありがとうございました。

司法試験合格者事前研修 クールな頭脳と暖かいハートを持て
 平成一四年度司法試験合格者(第五七期司法修習予定者)を対象とした事前研修が一月三〇日および三一日に当会で開催された。
 事前研修の目的は、修習期間の短縮を補完するため、合格者が司法研修所に入る前に実務の現場を少しでも肌で感じてもらい、四月からの本格的な修習に問題意識をもって臨んでもらおうというものである。
 神奈川県出身者または居住の合格者のうち、希望者に対しておこなっている。本年も合計八一名(三〇日は四六名、三一日は三五名)の多数の参加者を得ることができた。
 事前研修の内容としては、午前中は刑事事件の法廷傍聴とその事後講義、午後は司法修習ガイダンス、当会員との懇談会と、ほぼ一日をかけて行われた。
 刑事法廷傍聴においては、初めて法廷傍聴をする参加者もあり、法曹三者と自分の未来を重ねながら傍聴している姿があり、傍聴態度は真剣そのものであった。傍聴後には、裁判官との質疑応答がおこなわれた。
 事後講義では、傍聴事件の弁護人または検察官にも参加してもらい、捜査段階における証拠収集・弁護活動など法廷にはあらわれない部分の話を聞くことができた。参加者からも立証方針・弁護方針についての意見?が出るなど活気あふれる議論となった。
 午後は、池田会長の挨拶に引き続き、川島清嘉会員(元研修所民事弁護教官)による司法修習ガイダンスがおこなわれた。参加者との応答を繰り返しながらガイダンスをすすめていくところはまるで研修所での授業を思わせるものであった。最後に、川島会員は「クールな頭脳と暖かいハート、そして執念を備えた法曹家になって欲しい」との言葉で締めくくった。
 その後の懇談会は、参加者を一〇名程度のグループに分け、当会会員五名および修習生一名が参加し、小人数での和やかな雰囲気の中で質疑応答がおこなわれた。この頃には参加者の緊張もとけ、参加者からは「弁護士の仕事のやりがいは何ですか?」など一瞬こちらが躊躇してしまう純粋な問いかけもあり、当会会員が答えに窮する場面もあった。また、懇談会後には希望者を募り、事務所見学も行われたようである。
 さらに二月二一日には、阪田勝彦会員、小宮玲子会員による刑事事件講義、少年事件講義が行われた。
 司法改革の問題は山積みではあるが、これから法曹界を担っていく人材の品質保持・向上がよりよい法曹界を築くための前提であることは言うまでもない。そのための事前研修としてどんなことができるのか、来年度以降も当会ならではの事前研修の内容を盛り込んでいければよいと思う。
(司法問題委員会 事前研修部会 野木大輔)

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