横浜弁護士会新聞

back

2002年4月号(3)

next
新シリーズ えいちゃんは考える
 弁護士法二四条には、「弁護士は、正当の理由がなければ、法令により官公署の委嘱した事項及び会則の定めるところにより所属弁護士会又は日本弁護士連合会の指定した事項を行うことを辞することはできない」と定められています。これは国選弁護とか破産管財人などの職務についてのことを主として念頭におかれて、弁護士の義務として定められたものでしょう。ただ、運用では個別に各弁護士の承諾をとってその職務に就くよう要請されており、職務を行う意思のない会員は全て断ることもできているのですが、本来は、弁護士の義務であることを忘れてはならないと思います。
 近年、当会に対しても弁護士会全体の中で重要な職務、例えば司法研修所の教官や、司法試験委員などについても是非出してほしいという要請が来ます。また、平成一四年度からは日弁連の副会長職を二年に一度は当会から出すことになりましたし、日弁連・関弁連の要職の選出を求められることも多くなりました。また、平成一六年度からは毎年何名かずつの法科大学院の教授・助教授なども出していくことになります。
「大きな負担」が原因?弁護士会の支援体制が必要
 しかしながら、現実に重要な職務に当会の会員を選出していくことは困難です。平成一三年度中でも、司法研修所教官や司法試験委員、あるいは最高裁判事の推薦を何度か求められてきましたが、現実には一人も推薦できませんでした。日弁連副会長には、不肖私が出ることになりましたが、立候補者続出という訳でもなく、二年後四年後のことを考えると明るい展望という訳には参りません。一時は関弁連の十県会で一人(当会からは最低二年に一度)の副理事長を選出して欲しいという話もありましたが、総論としては賛成できても具体的人選ということでは、戦々恐々としていたものです。法科大学院の教授助教授についても、人選に困難を来しています。
 これらの職務は、職務の負担の大きさに比して、報酬は無報酬か微々たるものであり、経済的にはとても割の合わないものでしかないかもしれません。しかも、いわゆる「名誉職」とは違い、きちんと職務を遂行することが求められるものであって、余りにも負担が大きいからかもしれません。
 とはいえ、これらの職務は弁護士会全体として、あるいは当会として、必ず選出して行かねばならない職務です。当会全体として、中長期的に人材を発掘していく作業、そして、当会として推薦するからには会全体としてその人を支えていく体制を作っていく必要があると思います。当会は今や会員数一〇〇〇名になろうという、全国六番目の規模の大単位会です。いつまでも東京大阪に任せておけばいいという訳にはいきません。幸いにして、総合改革委員会や人事委員会などで、これらを検討していくと聞いていますが、会をあげて取り組んでいく必要があることだと思います。
(須須木 永一会長)
イラスト作者より一言
会員 岩田武司
 イラストを描く前にAちゃんの事務所に押し掛けて数枚写真を撮らせてもらいました。Aちゃんの顔はわりと特徴がはっきりしているので描きやすかったです。逆に会長になってからは直接お会いする機会が減ったので、正月号の紋付き袴姿のときには苦労しました。

臨時総会
「綱紀・懲戒制度の改革に関する基本方針の件」について激論
 平成一四年二月一九日、当会会館五階において、臨時総会が開催された。
 須須木会長の挨拶の後、議長に岡本秀雄会員、副議長に森田明会員が選任された。
 第一号ないし第三号議案は、弁護士事務所の法人化を認める法改正に対応するため当会の会則と会規を改正し弁護士法人会員会規を制定する件であり、一括して賛成多数で可決された。
 七号議案は綱紀委員会委員選任の件である。会員から選考委員を選任しその決定をもって新委員を定めるべきとの動議が出され可決された。選考委員会はその場で、須藤公夫会員を綱紀委員会委員に選任した。
 第五号議案は、「神奈川県内の法科大学院設立に向けての決議の件」である。会財政逼迫のおり当会から法科大学院に教官を派遣し経済的にも応援する場合、当会の財政に影響するのではないかという質問が出された。賛成多数で可決された。
 第六号議案は、「司法改革実現にむけての決議」の件である。この議案については、司法制度改革審議会の路線を既定のものとする決議である、弁護士自治や刑事司法を危うくする等の強い反対意見が出された。会員から本総会ではこの議案を決議すべきでないという動議が出されたが動議は否決された。賛成、反対の熱心な議論のあと、第六号議案は賛成多数により議決された。
 第四号議案は、二月二八日に開催された日弁連臨時総会の議案について事前に当会の総会で会員の意見をはかり、それに従って当会の持つ一票を行使したいという会長の意向によって議題とされた。本件は議事の都合上最終議題とされた。
 激論が戦わされたのは、「綱紀・懲戒制度の改革に関する基本方針承認の件」である。これまでの綱紀委員会の参与員を議決権を有する外部委員にするなどの綱紀・懲戒制度の根本を変更する基本方針に対し、強力な反対意見が複数の会員から出された。
 反対の立場からは、翼賛体制に組み込まれて行った戦前弁護士の轍を踏まないためには、自主懲戒権を含む弁護士自治が不可欠であること、綱紀委員会で弁護士は厳しい意見を出しており、綱紀・懲戒制度を変更しなければならない立法事実は存在しないこと、政府が弁護士の自治を奪おうとしているにすぎないことなどが指摘された。
 賛成の立場からは、自ら改革をしなければもっと酷い改革が行われる危険があるので、弁護士自治を守るために必要であるという意見が出された。
 充分議論がなされた後議決が行われ、議決時の出席数六二名中、賛成三五名、反対二二名、棄権三名であった。数が合わない理由は不明である。
 これまで、日弁連総会における当会の議決については理事者が決めており、常議員会の意見を参考にしたことはあっても総会で議論されたことはなかった。
 今回は、意見の別れる非常に重要な問題であると同時に、たまたま総会の日程が近かったこともあって総会にかけられたものである。

常議員会レポート第13回:平成14年3月7日/第14回:平成14年3月26日

第13回常議員会

●日弁連照会「国費による弁護人の推薦等に関する準則の策定」に対する当会回答について議論
 日弁連刑事弁護センターは平成一三年九月一八日に「国費による弁護人の推薦等に関する準則」(案)を作成し、単位会に意見を求めてきていた。この案においては、一定の用件に該当する者に対し、推薦を停止したり(一五条)、当会会員に対して助言・勧告をすることができるとの規則(一四条)があるために、一部の会員から「刑事弁護活動に対する権力からの介入を許し、刑事弁護人を萎縮させるものである」などの批判が出ていた。この問題について、当会では本年一月一六日に会員意見交換会を開催するなどして会員の意見を聞いている。当会では刑事弁護センター運営委員会が中心となって意見をとりまとめてきたが、同委員会としては両論併記の意見が妥当ではないかとのことであった。常議員会においても会員意見交換での意見なども踏まえ、両論併記で日弁連に回答するのが妥当であるとの結論になった。
●弁護士法人の届出に関する規則等が制定される
 弁護士法人の入会、変更、退会、解散などについての様式が定められた。また弁護士法人の非常駐法律事務所開設許可手続等に関する規定も定められた。
第14回常議員会
●司法改革推進計画に関する会長声明を出すことを決定
 本年三月一九日、政府は「司法制度改革推進計画」を決定した。この計画に対し、横浜弁護士会として、裁判所の人的体制充実の点で、表現が司法制度改革審議会の意見書より後退している、弁護士費用の敗訴者負担問題で実質的に意見書と反対の表現となっている、刑事裁判制度の具体的な内容について触れられていないなどの会長声明を出すことについて議論した。日弁連で出せば十分ではないのかなどの意見も出されたが、地域地方計画との関係で単位会が声明を出すことの必要性から声明を出すことが決まった。
●裁判所新庁舎に対する要望書が提出されたことが報告される
 当会裁判所庁舎建替問題対策委員会(木村良二委員長)は新庁舎の利用について会員にアンケートを実施した。代表的な意見を紹介すると、待合については椅子が少ない、狭いなど、事件案内については事件案内が小さい、両方の入口に事件案内が欲しいなど、庁舎案内については表示が小さい、各階の表示が分かりにくい、仮監の表示が分かりづらいなどである。これらの意見をまとめた裁判所新庁舎に対する要望書と題する書面を横浜地裁所長宛に提出したことが報告された。
●日弁連照会「弁護士倫理改正について」に対する当会回答について議論
 弁護士数の増加は必然的に企業・官庁等の組織に雇用される弁護士数の増加をもたらすと考えられている。その場合に、弁護士は雇用されている組織の一員としての立場と弁護士としての立場との間で難しい立場に置かれることが予想される。そのような事態を想定して、日弁連弁護士倫理委員会では弁護士倫理の改正に着手しようとしている。これに対し、当会弁護士倫理委員会では「弁護士倫理においてあるべき弁護士像を明記する必要がある」「多様化する弁護士の業務に共通する職業理念、行動原理等を明確に記載すべきである」「組織内弁護士の行動原理、行動原則を示す規定は是非必要と思われる」などの原案を作成し、常議員会においても原案通り可決された。
(副議長 湯沢誠)
常議員からズバリひとこと
 今年度の常議員会も、議論の激しいものだった。昔、昔のその昔一九八七年に出ていた常議員会では、若手のみならずベテランもあまり議論せず下拵えしているなあ、と感じた隔世の感がある。司法制度改革に関しての各種緊張の、しかし深い議論は歴史に残るだろうと思う。そして会員の不正について厳しい当会の伝統は、常議員会の議決を得て今年も新しい地平を刻んだ。自治権を守るための決断である。その他、県民集会を初め、さまざまな課題に果敢に取り組んだ理事者に敬服する。
 そして、次年度、神奈川県全域の強制加入団体として意味を持ち、支部会館の建設も視野に入れればも理論的には当然のことをしつつ、財政の確立を初めとしたその他の課題に果敢に取り組む理事者、常議員会を望む。
三五期 滝本 太郎

▲ページTOPへ
内容一覧へ