横浜弁護士会新聞

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2002年5月号(2)

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総会に多数の意思を反映させよう
 三月一八日午後一時より横浜弁護士会五階にて会員集会が開催された。 議題は「総会における意思決定の方法」、具体的には「議決権の代理行使の是非」に関してであった。集会は須須木会長の挨拶に始まり、次に高柳副会長から総合改革委員会総会部会における検討結果についての報告が行われた。
 
 平成一一年度以降の総会の出席状況は別表のとおりであり、定足数の関係でいわゆる三〇分ルールの適用なしで開催した総会は「会名変更」が議題となった平成一三年一月二六日の僅か一回に過ぎず、しかも出席者数が一〇〇名を超える総会も僅か二回に過ぎなかった。
 このような最近の総会における会員の出席状況等に照らし、より多数の会員の意見を総会における意思決定に反映させるべく、「議決権の代理行使」の問題が浮上してきた。
 現行会則上は議決権の代理行使は一切認められないこととなっている(会則五〇条二項参照)。当会総合改革委員会の担当部会が会員からのアンケート結果(一九〇名中一六八名賛成)や他会の動向等を調査・検討した結果、同部会からは前記会則を改正し議決権の代理行使を認めるべきという意見が出されている。
 また、議決権の代理行使を認めた場合に派生する問題点とその検討の結果についても報告がなされた。
 第一に議決権の代理行使を認めた場合に代理人は何人の会員からの委任を受けられるのかという問題があるが、アンケート結果や委任者数を増やすと総会の形骸化に繋がる恐れがあるとの理由から部会案では三名となっている。
 第二に議決権の代理行使を認めた場合に代理人の氏名を明らかにしない委任状の効力をどのように扱うかという問題があるが、アンケート結果や会員の意見を総会に反映するためには受任者の氏名を明記する方が望ましいとの理由から、部会案では受任者の氏名を明記しない委任状の効力は無効としている。
 第三に議決権行使の制限の問題、具体的には「賛否を付した委任が認められるか」あるいは「賛否を付した上でさらに修正意見を付した委任が認められるか」という問題があるが、議事運営上の問題や他会の動向等から部会案では制限を加えるべきではないとされている。
 第四に代理人として議決権を行使しようとする会員の数を定足数に算入すべきかという問題があるが、部会内での検討が不十分であることや他会の動向等から部会案では算入には反対、今後三年乃至五年の実績に鑑み再度検討すべき議題であり、また会則に定める三〇分ルールを定足数と一緒に検討すべき議題であるとの意見が付されている。
 第五に書面での参加(書面投票ないし書面による意見の表明)の是非の問題があるが、他会の動向等から部会案では今回は改正すべきではないとされている。
 第六に決議に利害関係を持つ委任者と代理人に関する規定を設置すべきかという問題があるが、代理人と委任者の利害に関する議事につき会則上も明確にすべきであるというのが部会案である。その他部会案に関連ないし部会案が触れていない派生論点(議決権の分離行使の可否等)に関しても問題提起がなされた。
 高柳副会長からの上記報告の後に質疑応答や意見交換が行われた。
 出席会員から様々な意見が出されたが、その中でも特に、若手会員の総会や集会の出席率が極端に低いという当会の置かれた状況に照らし、若手会員の出席率を上げるためには如何なる方策が採られるべきかという点に議論が集中した。
 この点に関しては、若手会員の総会の出席率が高い福岡弁護士会においては登録年数五年以内の会員を義務的に弁護士会の総務に登用して早い段階から会務に興味を抱かせている例が紹介される等活発な議論がなされ、集会は終了した。
(大和田治樹 会員)
 

ひと えいちゃんはこれからも日弁連で考える
平成14年度日弁連副会長 須須木永一会員に聞く
 須須木永一会員が、三月一五日の日弁連代議員会において本年度日弁連副会長に選任された。当会からは四年ぶりの日弁連副会長である。
−当会からは四年ぶりの日弁連副会長ということですが
 当会からの日弁連副会長は、関東十県会の拡大理事会で副会長候補者として承認後、日弁連の代議員会で選出されることになっています。
 これまでは十県会の副会長枠は一名で、当会からの選出は一〇年に一度でした。今後は十県会枠が二名となり、当会からは一年おきに副会長が選出されることになります。
 私の副会長就任は一年おきの選出の最初ということで、その意味でも責任の重大さを感じています。
−副会長就任にあたっての抱負をお聞かせ下さい
 司法改革もいよいよ具体化・立法化の段階に入ります。来年度の通常国会には司法改革関連法案が少なくとも二〇本は提出されると言われていますので、法案への対応が重要な任務となってくるでしょう。
 副会長は内閣に設置された司法制度改革実現本部の各検討会に対応することになっていますが、私は仲裁をメインにADR、労働の各検討会を担当することになりました。
 具体化・立法化にあたっては、日弁連も現実的な対応を迫られることがあると思われます。そのような場合でも単に反対といって足踏みするのではなく、一歩でも理想に近づけるよう取り得るあらゆる方法を用い、日弁連の意見を反映させていかなければなりません。粘り強く立ち向かっていきたいと思っています。
−日弁連における当会の役割についてどうお考えですか
 当会所属の日弁連委員の方々は皆さん優秀で多大な貢献をされていますが、その背後に当会の姿が見えてこないという印象もあります。
 今後は報告会その他の方法で日弁連の状況を報告するとともに、当会の意見を日弁連に反映させていく方法も考えていきたいと思っています。
−当会会員へのメッセージをお願いします
 できる限りのことを精一杯やっていきます。今後、当会からは一年おきに日弁連副会長を選出していくことになりますが、日弁連における当会の地位を確固としたものにするよう努力したいと思います。
 今後ともご指導ご鞭撻をよろしくお願い致します。
 
 当会会長に引き続いての日弁連副会長就任ということで、くれぐれも健康には気を付けて頂きたいところだが、現在でも茶碗五杯は召し上がるという食欲で、一年間の激務も無事に務められることだろう。

医療訴訟について熱き議論 第6回民事裁判懇談会 
 三月八日、横浜地方裁判所において第六回民事裁判懇談会が開催された。
 前回で提訴から判決までの各手続きにおける実務上の問題点についての議論を終えたことから、今回は新しい切り口で専門訴訟としての医療訴訟がテーマに取り上げられた。
 法曹内部での意見交換のみならず、医師の率直な意見も聞くためオブザーバーとして横浜市立大学医学部第二内科教授梅村敏先生も招き、裁判官二九名、書記官一三名、当会会員四三名という多数の出席を得た。
 はじめに清水研一裁判官から近時の事件数の増加、専門性、審理期間の長期化といった医療関係訴訟の特徴や長期化の原因分析、裁判所の医療訴訟に対する取り組みなどが報告され、争点整理充実のための専門家調停委員の活用、鑑定に代わる双方の私的意見書等の利用、適切な鑑定事項のあり方等についての問題提起がなされた。
 これを受けて森田明会員が患者側代理人の立場から、患者側協力医を探すのは困難な現状であること、概括的に鑑定人の意見を聞く鑑定条項は残したいこと、鑑定人等の医師には医学上の適不適の問題と法的過失の判断とが混同されがちなことなどの問題点を指摘し、争点整理段階での専門家調停委員の活用については慎重にすべきとの意見を述べた。
 その後の意見交換の場では病院側代理人の立場から応訴態度決定までのプロセスについて実情が紹介されたほか、梅村医師からは、学会でも現在鑑定人推薦制度等医療訴訟への協力体制を整えようとはしているが、専門分化が高度に進んでいる医学界の現状や時間的制約から鑑定人の受任が困難な面もあるとの意見が出され、より時間的拘束の少ない協力体制模索の必要性も提案された。
 裁判官、弁護士、医師それぞれの立場から様々な意見が出されたが、救済されるべきケースは救済するというスタンスに立ち、相互に信頼関係をもって医療訴訟に取り組むべきという点では一致した。
 今回から二時間三〇分に時間を延長しての懇談会となったが、最後まで活発な意見交換が続き、盛会であった。
 (民事裁判手続運用委員会 吉川知惠子)

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