横浜弁護士会新聞

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2002年7月号(2)

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横浜家庭裁判所/小田原満知子新所長に聞く
 去る五月一八日(土)に当会五階の大会議室において、川崎子どもの権利条例の作成に携わった喜多明人早稲田大学教授、山田雄太前川崎市教育委員会人権共生委員会指導主事、条例制定子ども委員の吉田雪絵さん・嶋津絢子さんを招いて「学校・地域における子どもの権利の確立のために〜川崎子どもの権利条例制定から一年〜」と題して講演会が開かれた。川崎市では「川崎市子どもの権利に関する条例」が平成一二年一二月二一日に議会で成立し平成一三年四月一日から施行されている。
 それに先立つ一九九八年九月に条例の制定委員会が発足し、二年間にわたって市民および子どもの参加のもとで条例試案を検討・作成し、条例が制定施行されたが、この間の経緯と条例に込めた思いを四人の方に語っていただいた。
 市民や子ども自身の参加のもとで作られる条例の目的は、子どもを一人の人間として尊重し、権利侵害から守り自分らしく生きていくことを支えていこうというものである。
 条例は子どもの権利について大きく七つにまとめ(安心して生きる権利・ありのままの自分でいる権利・自分を守り守られる権利・自分を豊かにし力づけられる権利・自分で決める権利・参加する権利・個別の必要に応じて支援を受ける権利)さらに子どもの参加やいじめなどからの具体的な救済策として人権オンブズパーソン制度を明記している。
 反面、子どもの責任については前文にのみ謳われている。子どもの「権利」と「責任・義務」については試案の作成の中での大きなテーマであったそうだ。「権利と権利と謳うことによって、子どもがそれを履き違えたり悪用することになるのではないか」、市民サロンなどでも折からの神戸須磨事件の影響などから「罰則はどう作るのか」「権利を行使するのは義務をまっとうするものだ。」との考え方と「子どもには義務はない。権利は生まれながらに持っているものだと」との考え方で意見が真っ二つに分かれたそうだ。
 このままでは子どもの権利条例ではなく子どもの責任条例になってしまうのではないかとの危惧感の中で、その二つの考え方について子ども委員の中で議論をしたところ、「自分たちは生き生きと生活をしたいけれど、隣の子を不幸にする権利はないのではないか。」という結論が出たそうだ。
 これを聞いた大人たちは、自分たちはいつの間にか人権・優しさ、権利・わがまま、自己主張といったイメージをすり込まれていただけではないか、隣の子を不幸にする権利はないというのは大変分かりやすいことだと思ったそうだ。
 条例試案は各行政区で七回の市民集会と大きな市民集会を四回開催し、これらの議論の末に他者の権利の尊重は「義務」ではなく「権利行使のあり方論」でまとめることになった。自分の権利を知り擁護することができるならば、自分の周りの人の権利の尊重をそこから学ぶことができるという理念のもと、子ども「責任」条例ではなく子ども「権利」条例が出来上がったということだ。
 特に印象的だったのは子ども委員で条例試案作成に関わった津嶋さん吉田さんから「子どもの意見を聞くというのはそれを受け止める側の力が試される。その力がないと子どもはすぐに諦めるし、言葉を無くすし、切れてもしまう。でも、受け止める側の力があれば子どもから色々なアイディアが出てくるように思う。この条例に携わった大人たちは本当に良く受け止めてくれたように思う」との言葉であった。
 講演に参加された方も市のオンブズパーソン担当職員から一般の方まで幅広く子どもの権利条例に込められた試案作成者の思いや、特に参加した子ども委員の子どもの目線から見た話を聞けた貴重な講演会であった。
(子どもの権利委員会 井上泰会員)

新シリーズ 理事者室の窓
横浜を離れてからわずか4年
大きな司法制度改革の流れにしっかり対応していきたい
 小田原満知子新横浜家庭裁判所長の歓迎会が五月一三日午後六時から中華街の華正楼新館において三九名の会員の出席を得て開催された。
 小田原所長のプロフィールの紹介、池田会長の歓迎の挨拶に続いて、小田原所長が横浜地方裁判所民事所長代行から、静岡家庭裁判所長に転勤され横浜を離れてから四年という短い期間であるのに司法改革の大きな変化が訪れたことに少々驚いているとともに、しっかり対応していきたい旨等の挨拶があった。
 箕山常議員会議長による乾杯の発声と暫くの歓談の後、小田原所長と同期の大村武雄会員、大西千枝子会員、水上淑子会員、宗哲朗会員からそれぞれのエピソードを交えた歓迎の挨拶が和やかな歓談の雰囲気をさらに和ませた。
 横溝徹会員のたっての希望で歓迎の挨拶の後、青木副会長の挨拶により中締めとなった。
 開会の時土砂降りだった雨もいつしかあがり、小田原所長のように爽やかに歓迎会も締めくくられた。

支部だより 川崎支部
 五月二四日午後三時より弁護士会館五階大会議室において、栗山博史会員および山?健一会員を講師とする付添人実務研修会が行われた。少年法が改正され、実務上の問題点に対する会員の関心は高く、多数が参加した。
 尾立副会長の挨拶のあと、まずは栗山会員が受任時のスケジューリング、調査官面会の重要性、家裁への意見書提出のタイミング等、豊富な体験をもとに少年事件処理の秘訣を講義した。次いで山?会員が改正少年法施行後の横浜地裁および全国運用状況につき報告し、あわせて実例をあげ、検察官の過剰な関与などの問題点を講義した。また、少年はなかなか自分一人で判断できないので、事件受任の際は積極的に保護者と連絡をとった上で受任して欲しいとの要請もあった。最後に子どもの権利委員会委員長である影山秀人会員から本庁、支部あわせて身柄事件が年間二〇〇〇件となり、これに対する当会としての対応を円滑にするためにも、付添人活動への中堅以上の会員より積極的な協力を求める提言がなされた。
(小川 佳子)

私の新聞批評
 五月一三日午後三時から弁護士会館五階大会議室において、七二名(内修習生二名)の会員が出席し、成年後見人実務経験交流会が開催された。
 池田会長の開会の挨拶、延命政之会員の経験に基づく詳細な基調講義および質疑応答の後、精神障害一級の被後見人の手術の同意を病院から要求された事例、施設の入所契約に後見人として保証人になることを要求された事例、施設への面会、後見人の報酬、被後見人死亡後の対処等出席会員から貴重な実務経験が報告された。
 ちなみに手術の承諾については、ある家裁の裁判官は手術は家族の問題であり後見人はそこまで責任は持てないとの判断を示したとのことであり、入所契約の保証については後見人が成年後見人の職務を説明し保証を断ったとの報告がなされた。
 高齢者障害者の委員会輿石英雄委員長の会員の貴重な経験を元にマニュアルを作成したいとの挨拶で、充実した経験報告会が締めくくられた。

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