横浜弁護士会新聞

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2003年6月号(1)

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加速する司法改革実現
 今年度に入り、司法改革の実現に向けた動きが急速に進んでいる。今回はその一部について現状を報告する。
裁判官指名諮問制度
裁判官任命手続に外部の声を反映
 去る二月一二日、裁判官指名諮問委員会規則が最高裁規則として制定され、新しい下級審裁判官の任命手続の要領が規則化された。これによると、新任再任にかかわらず、全て任官志望者の適否の審議と情報収集を委員会が行うものとされ、最高裁判所に答申する。最高裁判所の裁判官指名と委員会の審議結果が異なる場合には、その理由を通知するものとされている。委員会の委員構成は、裁判官二、検察官一、弁護士二の法曹三者合計五名に対して学識経験者が六名とされ、委員会の過半数が法律実務家以外の人物とされることとなった。
 過去、任官拒否や再任拒否の問題が起き、裁判官任命の選考手続のブラックボックス化が問題とされ続けてきた。そして、このような選考手続制度などをもとにした裁判官統制が進んでいる、高裁や最高裁ばかりを向き、利用者である市民の方向を向いていない、などという批判の声が高かったのである。このような批判に対して答えるものとして、従来の最高裁の姿勢からみれば、とても考えられないような改革が今回示されたのである。
 この選考手続による裁判官任命は、本年一〇月二日から実施される。つまり、それ以降に新任ないし再任する裁判官については、全て対象とされ、毎年二〇〇〜三〇〇名の裁判官の選考を行うこととなる。裁判所の外の声が新任・再任の際に強く働くこととなるのであれば、裁判官の姿勢も最高裁よりも実際に裁判を受ける市民や我々弁護士に十分に配慮したものとなっていくのではないかと思われる。
 ところで、この指名諮問委員会を補助する機関として、各高裁単位に地域委員会(委員数は五〜七名、半数が法律実務家)が設置されることとされ、裁判官選考に必要な資料収集等を行うものとされている。再任となる裁判官が勤務先でどのような仕事ぶりであったのかといった資料を収集してまとめ、指名諮問委員会へ提供する役割を担うこととされている。
 指名諮問委員会が実質的な活動を行い、その本来の目的を充分機能させていくためには、地域委員会に対して、充分な情報を提供していく必要がある。裁判所から提供される情報にとどまらず、再任期まで一〇年間分の裁判所外からの日常的な情報収集・情報提供を行わなければ、ただ単に裁判所外の人間が選考手続に関与したというだけに終わってしまいかねない。当会でも、横浜地方裁判所管内の裁判官の情報を逐次収集・蓄積していく体制が必要である。
 地域委員会には、当会からも池田忠正前会長が委員に選任される予定である。
(司法制度改革実現本部 事務局長 小野 毅)

法科大学院
神奈川県下における設置への取り組み
 法科大学院(以下「LS」と略称する)の設置・開校に向けての準備が正念場を迎えた。開校予定は、来年四月。すぐそこに迫っている。
 平成一四年一一月、いわゆる法曹養成関連三法(「法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律」「司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律」「学校教育法の一部を改正する法律」)が成立した。これを受けて、今年中には各大学から文科省に対するLSの設置申請手続が開始され、今秋ころまでに設置認可が完了する。また、今年八月ころ、法務研究財団および大学入試センターが、LS入試の一環として位置づけられる統一適性試験をそれぞれ実施する。各LSにおける個別入試選抜は、来年二〜三月ころに実施される。
 当会は、平成一三年四月、会内に法科大学院検討特別委員会(以下「LS委員会」と略称する)を発足させ、県下におけるLS設置に向けて活動を開始した。同一四年二月一九日の臨時総会では「横浜弁護士会をあげて神奈川県内の法科大学院設立に取り組む決議」を採択している。
 同決議は、LS構想を、弁護士会が主体的に関与できる点でよりよい法曹養成機関となり、市民の様々なニーズに対応する多様な法曹が養成される可能性を秘めているとして積極的に評価し、当会が、県内に設立されるLSについて、その教育内容などに意見を述べていくとともに、当会代表として実務家教官を派遣することなどについても協力する旨決意を表明したものである。
 この決議を受けて、LS委員会は、LS設置を目指す県下大学のうち、要請のあった横浜国立大学、神奈川大学、関東学院大学との間でそれぞれ活発な協議を継続してきた。設置要請の内容を概観すると、三大学合計で、入学学生定員は一学年一六〇名程度、当会会員から派遣される専任実務家教官は一一名、非常勤教官は一〇数名にのぼる。教官予定者の具体的な名前はほぼ確定した。
 このような状況の中、当会にとって、(1)エクスターンシップ・リーガルクリニックの受入れ態勢の整備、(2)実務家教官のための講義内容・教材の開発、(3)実務家教官への財政的支援および奨学金整備などの検討は、急務である。
 特に、LS課程終了後の司法修習の期間短縮が予定されるなか、法曹の質を確保するためにエクスターンシップおよびリーガルクリニックが果たす役割は大きい。LS委員会で検討しているエクスターンシップとは、LS三年次の春期または夏期休暇期間における五〜七日間程度の法律事務所研修と弁護士会内集合研修をいい、リーガルクリニックとは、LS内部に開設される法律相談所における法律相談とその検討会をいう。
 従来からの弁護実務修習担当に加えてのエクスターンシップ受入れ担当会員の確保には相当な困難が予想されるところではあるが、受入れ日数は僅かのことである。来春からスタートする新しい法曹養成制度をよりよいものとするために、全会一丸となって、充実した受入れ態勢を整備したい。(なお、本稿は、本年四月末時点の情報による。)
(法科大学院検討特別委員会 委員 島崎友樹)

弁護士任官 非常勤裁判官
推薦制度が確立 当会から二名の候補者
 これまで当会では、弁護士任官を積極的に受け止める気運が高まっていたとはいえなかった。しかし、昨年から情勢は大きく変わった。
 日弁連が弁護士任官のアンケートを実施し、当会でも数名でワーキングチームをつくりアンケート結果などを参考に会員に直接働きかけをする活動をするなかで、二名の会員が任官の意思を表明した。最終的に関弁連の弁護士任官適格者選考委員会に推薦の申請を提出し、市民代表も参加している同委員会で弁護士会の推薦決定をうけた。現在最高裁による正式な採用決定を待っている状態である。
 ほかにも、関弁連の推薦手続に入ろうとしている任官希望者がいる。
 当会の弁護士任官もようやく本格的に動き始めた。しかし、まだまだ希望者は少ない。今後は、弁護士任官希望者が準備期間を経てスムーズに任官できるよう支援する「弁護士任官協力事務所」制度を発足させ、任官復帰が円滑になるよう弁護士会の規則改正を行うなど、迷いなく任官できる体制を整えることが必要になる。
 また、任官に適する人や任官してもよいと考えている人を推薦してもらう「他薦」の制度も有効であろう。今後は各委員会、研修所同期などに対して推薦依頼を出すなどの取り組みも必要になるだろう。
 一方で、非常勤裁判官の制度が実施に移されようとしている。家事・民事調停を担当する裁判官で、弁護士業務を続けながら、一週間に一日裁判官として勤務することが想定されている。東京、横浜にも配属予定であり、当会からも非常勤裁判官を出すべく、アンケートの回答などを参考にしながら、適格者に対して働きかけており、複数の候補者を日弁連に推薦する準備中である。
 理事者やワーキングチームのメンバーから弁護士任官の働きかけを受けたら、是非一度真剣にご検討いただきたい。今すぐでなくても、五年後、一〇年後の任官も含めて検討いただくようお願いしたい。また、任官に踏み切れない事情があれば、遠慮なくご相談いただきたい。担当者は秘密厳守で臨んでおり、その点の心配は無用である。
(司法制度改革実現本部 委員 藤村耕造)


山ゆり
 漱石のお弟子さんにがいる。幻想小説でも有名らしいが、私はもっぱらエッセイを愛読している
陸軍士官学校と海軍機関学校の教官、法政大学教授と多いときには三つの職に就き、相応の収入もあったはずだが、エッセイには貧乏話が多い。金策にかけまわるにも、人力車やハイヤーを使っていたそうで、貧乏話といっても悲惨な生活が切々と綴られているわけではなく、借金にまつわる話が淡々と語られていて、不思議なおかしみがある。高利貸しとの付き合いも長かったようだ
利息制限法は明治一〇年に成立している。意外なことに最高利率は、現行の利息制限法より低い。しかし、エッセイには、法政大学の同僚の法学士が借金をまけろという交渉に行ってくれたが、「あいつの様な人でなしに、まけて貰ったりせん方がよろしい。全額たたきつけておやりなさい」といきり立って帰ってきた話や、高利の利息が払えず俸給から家財道具にいたるまで差押を受けた話などが語られており、利息制限法の恩恵を受けていなかったようである
年末の数日間を大晦日の夜まで駆け廻っても金策がつかない。そこで、ハタと気がついた。「買いたい物もないし歳末旅行のつもりもない。お金がいるのは、借金取りに払うお金ばかりである。借金取りに払う金をこしらえるために、借金して廻るのは、二重の手間である。むしろ借金を払わない方が、借金するよりも目的にかなっている。じっとしていて出来る金融手段である。 イラスト
ヤミ金融被害が増えている。を読んで、ハタと気付こう。
(小沢弘子)

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