横浜弁護士会新聞

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2005年10月号(2)

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日南ひまわり基金法律事務所での3年間の任期を終えて
吉 川 晋 平 会員
応援して下さる人達がいるという有り難さ
 横浜弁護士会と会員の皆さんのご協力・ご支援に感謝します。
地方には弁護士への需要が沢山ある
 3年間の相談件数は1317件(うちクレサラ672件)。受任件数が692件(うち破産238件、任意整理213件、個人再生32件)。過払金請求、数知れず。その他国選17件、当番弁護士出動71件。その結果、3年間で相応の収入を上げることができました。
法律を知らないで損をしている人が大勢いる
 親の借金は子にも支払い義務がある、子の借金は親にも支払い義務があると思っている人が結構います。相談で支払い義務はないと教えてあげると、ホッとして帰ります。
地方は法の支配がいまだ十分でない
 紛争が生じたとき、声の大きい人、お金のある人、そして子供が出世した人が力で勝ちます。そこに、都会の弁護士が乗り込んで法による解決を図る訳ですから、公設事務所弁護士は、このような人達にとっては疎ましい存在となっています。
地方は疲弊している
 何と言っても職がありませんし、あっても給料は極めて低額です。職員採用面接の際の、国立大学を卒業しながら小売店の店員をしている女性の一言が忘れられません。「大卒に相応しい仕事がしたい」。
 刑事事件も貧しさ故の犯罪が多い。いま食べるものがないために犯してしまった窃盗。賽銭泥棒が何人かいました。お金がないために、無車検・無保険の車に乗った罪に問われた被告人。覚醒剤・児童買春は、一件もありませんでした。
政治が極めて身近
 バブル崩壊後の内需拡大政策に躍らされて住宅ローンで自宅を建てたが、支払えなくなり破産や個人再生に追い込まれた人が大勢います。農水省や農協が推進する農政に乗ったがために、多額の借金を抱えてしまい返済は不可能、だが保証人に迷惑がかかるので身動きがとれなくなってしまった人。漁業も林業も同様です。任期中に日南市長選がありました。新人が現職を破った熾烈な選挙戦でしたが、大勢の人が旗幟を鮮明にして応援していました。
地域社会が音をたてて壊れている
 親子・兄弟・隣人・友人・知人間の金銭貸借が非常に多い。殆どがサラ金の返済に使われ、最後は返せなくなります。
 農協・漁協は、親兄弟・一族郎党の保証を取り、雁字搦めにします。地場のサラ金は、返済が遅れるとすぐに保証を強要します。信金の債務整理資金は、保証人の資力のみを当てにして貸し付けます。保証関係の紛争が多発します。
 このために家族関係が断絶し、人間関係が破壊され、地域社会が崩壊しています。ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへと変貌しつつあるのでしょうか。
 この崩壊を何とかして止められればと、もがいた3年間でした。

クレサラ相談 無料化のその後
小野 仁司 会員
 平成17年4月1日より、法律相談センターの相談のうち、クレサラセンターの相談が無料になりました。昨年度まで、クレサラ相談が減少傾向にあり、法律相談センタークレサラ部会ではこの減少傾向に対する原因の究明と対策を検討していました。自己破産を含むクレサラ事件自体の減少、司法書士会が無料相談を行っているのでそちらに流れたのではないかという指摘、電車等の広告をしている法律事務所に流れている指摘等がありました。そして、さまざまな対策が考えられ、さまざまな意見もありましたが、最終的にクレサラセンターを無料化することになりました。
 現在のところ、相談数は増加傾向にあり、また、当初懸念されていたキャンセル率も増えていません。
 先般、日弁連の多重債務者救済事業拡大に関する全国協議会で近隣会等からの報告を聞く限り、無料相談にすると増加傾向が出るが、有料相談だと顕著な減少傾向が出るとの報告がありました。
 なお、弁護士会のクレサラセンターの市民の評価はその質が求められることも言うまでもありません。今後とも会員のご協力をお願いします。

独占禁止法研究会 学生に戻って勉強中
畑中 隆爾 会員
 専門実務研究会の中に独占禁止法の研究会もできると。そりゃ、結構なことだ。どれ、一つ僕も参加してかじってみようかな。てな感じで、参加希望欄にマルをつけたら、なぜか幹事という役どころを負わされた。
 そんな恨み節はともかく、独禁法とは、よく名前は聞くが、日常あまり縁がなく、勉強する機会もない。多くの弁護士にとってそんな法律ではないかと思われるが、せっかくの機会だから勉強してみようという者たちが集まり、当研究会が発足した。
 しかし当初、独禁法に疎い者たちが寄り集まっても烏合の衆で、一体何をどう研究すればよいのか、先行き不安だったのだが、誠に時宜にかなって強い味方を得て、問題は一発解決した。長年第一線において独禁法の実務と研究に携わってきた鈴木満会員が、本年2月から横浜弁護士会に入会しており、そのレクチャーを受けられることとなったのだ。
 現在、独禁法のいろはから、テーマごとに実務に即して詳しく教わっているところであり、われわれはまさにゼミを受ける学生状態で勉強している。新しく法律を学ぶ知的な楽しみは懐かしくかつ新鮮であり、また、経済的な世界に対する視野の広がりも感じることができ、大変有意義な勉強をしていると思える。
 注意してみると、カルテルや不公正な取引方法など、独禁法がらみのニュースは日常頻繁に新聞に載っているし、最近では橋梁工事をめぐる談合の問題が連日大きな社会問題として報じられている。このようなニュースも、独禁法を理解してみると、また深い視点から見ることができるような気がするのである。
 独禁法は来年1月からその機能を強化した改正法が施行されることとなっており、今後ますます注目されるはずの分野であるし、特別法である景品表示法や下請法も重要な機能を果たしており、日常業務や相談と関係してくることも十分考えられる。実務家としての懐を広げるのに、格好の研究会なのではないかと思う次第である。

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