横浜弁護士会新聞

back

2005年7月号(2)

next
浮彫りになった課題−模擬裁判員裁判−
 「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、平成21年5月までに裁判員制度の導入が予定されている。これを踏まえ、5月17日、横浜地方裁判所、横浜地方検察庁、当会の法曹三者の共催により、模擬裁判員裁判が実施された。
 当日の模擬裁判では裁判官、検察官及び弁護人役にはそれぞれ現職者が、また裁判員役には裁判所委員会の委員である学識経験者が配され、被告人、証人役は司法修習生、当会の職員が熱演した。
 ケンカの末に発生した死亡事件を題材に(1)殺意の有無、(2)牛刀を突き刺す殺害行為の有無という争点について実際の裁判さながらの白熱した攻防が繰り広げられた。
 検察側・弁護側双方からはプロジェクターを利用するなど裁判員の存在を意識した手法が用いられ、その後、今回の模擬裁判の目玉ともいえる裁判官3名と裁判員6名による評議が行われた。
 評議は予定の3時間を大きく超えて約4時間半にわたって行われ、裁判員からは目撃者の位置等に関する鋭い指摘がなされていた。
 しかし、殺意はなかったのではないかという一部の裁判員からの指摘に対し、裁判官らは殺意ありという結論を前提とした「説得作業」に終始しているかのような印象を受けた。模擬裁判ゆえの時間、準備の制約もあったであろうが、「無罪推定の原則」を説く弁護側の弁論の直後に行われた評議の中で、有罪の結論ありきとも取れる議論が進められたことには、弁護士として非常に抵抗を覚えた。
 また評議における議論も、開始当初こそ裁判員から活発な発言がなされたが、長時間の評議による疲れも手伝ってか次第に裁判員による発言が少なくなっていき、最後は議長役を務めた裁判長の言葉ばかりが響くようになった。「こんな風にはなりたくなかった」と苦笑する裁判長の様子が印象的であった。
 評議の結論は、裁判官らを中心とする殺意ありという意見と一部の裁判員の殺意なしという意見が平行線をたどった末に多数決に委ねられ、6(うち裁判官3名、裁判員3名)対3(裁判員3名)で殺意ありという結論が採られ、被告人に対しては殺人罪として懲役10年の判決が言い渡された。
 模擬裁判終了後、一部の裁判員からは「専門用語がわからなかった」、「おかしなことを言っていなかったか心配だ」という感想も聞かれた。法曹に対する「気後れ」により裁判員制度が十分に機能しないとすれば問題であり、我々弁護士としても法教育に更に積極的に関与していく必要性を感じた。
 駆け足の感が強い法制化の中で、市民そして法曹三者のいずれにとっても手探りでの対応を余儀なくされているこの裁判員制度。各人がそれぞれの立場でどのように取り組んでいくべきなのか、更に議論を深め、準備を進めるきっかけになったとすれば、今回の模擬裁判は極めて有意義な機会であったといえよう。
 裁判員制度導入はすぐそこまで迫っている。

支部便り 県西支部 小沢 靖志 会員
「若年」幹事会は思案中
 本年4月から、私が当支部支部長を務めている。今年度は48期の私を始め44期から54期までの合計5名で構成する若年の幹事会である。月1〜2回程度のペースで支部会館に集まり、支部関連事務について話し合っているが、なにぶん皆、会務経験が少なく、「よくわからないなあ、…でいいんじゃないか…?…」の連続で、結局、支部の先輩の元幹事に意見を聞いて参考にすることになる(そのまま意見に従うこともある)。そんな頼りない幹事会であるが、それでも、5人で集まって支部関連事務に関わっていくことは有意義なことである。5人で担当すれば、一人あたりの負担も相当軽減される。何より、支部関連事務ひいては弁護士会の事務につき共通認識をもつことができる。当支部幹事は前々年度3名、前年度4名、今年度から5名となったが、増員の趣旨はおおむねこのような理由による。
 さて、私たちが幹事会を開いている支部会館は昨年3月に開館して以来1年以上が経過した。この支部会館は、通りに面しているわりには造りがしっかりしているのか、自動車騒音等はほとんど遮断され静謐である。反面、静謐なおかげで、法律相談・法律扶助の問い合わせ等で来館し、受付で話をされる市民の方々の声が他の人に聞こえてしまうこともある(もっとも法律相談スペースは防音仕様となっているのでこうした心配はない)。受付での問い合わせであるから、来館者は具体的な話はしないとしても、「離婚について…」「借金があって…」といった発言が他の人の耳に入ってしまうのが気分がいいはずがない。モニターを置いたり、BGMを流して消音する等の案はあるが、あまり効果的でなく、根本的な解決にならない。何かいい方法がないか、若年幹事会は思案している。

新人弁護士奮闘記
良き社会人、良き弁護士を目指して
 私が弁護士になってからの1年と8か月を振り返ると、弁護士としてこの上なく恵まれた環境にあったと実感させられます。
 委員会や弁護団に参加させていただくことが多いのですが、先輩方が易しい仕事から順番に割り振ってくれるので、少しずつ勉強しながら仕事に慣れていくことができます。また、委員会・弁護団活動を通じて、弁護士以外でも、市民団体・行政機関などで、社会に対して問題意識を持ち、より良い社会を作ろうと活動されている方々に出会い、教えをいただくことができます。まだまだ勉強不足で問題意識を感じることがなく、問題意識を教えてもらっている、という情けない現状です。今後はできる限り主体的に参加したいと思っています。
 翻って事務所を見れば、これまた恵まれた環境です。私が委員会や弁護団に参加できるのも、所長が事あるごとに、「外で勉強しなさい」と言ってくれるからです。事あるごとに、というのは私の主観で、実際には2回くらいしか言われたことがないのですが、所長が本当にそう思っているかどうかは聞かないことにしています。事務所の先輩弁護士も、温かく見守ってくれるどころか、口癖のように「戸張さん忙しいから」と言っては、私の仕事までやってくれ、甘えるにも程がある、と思いながらも甘えています。事務局も、何度も同じ事を聞く私に、手取り足取り丁寧に教えてくれます。
 このように、私は、どこに行っても何不自由ない恵まれた環境にあったのですが、思い返してみると、それでも失敗だらけ、謝ってばかりの日々でした。初心を思い出してみれば、何かしら誰かの役に立てればいい、と思って弁護士になったのですが、依頼者が心から喜んでくれた事件など数える程もないのが現実です。最近、少しばかり甘えすぎてきてしまったかな、と反省するようにもなりました。
 今後は、お世話になってきた方々への感謝の気持ちと、そんな方々の期待に応えていないという反省を胸に、良き社会人、良き弁護士を目指して、より一層の精進をしていきたいと思います。

▲ページTOPへ
戻る
内容一覧へ