横浜弁護士会新聞

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2006年2月号(3)

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理事者からの『かけ橋』 冬きたりなば
 年明けしてからの本格的な寒波の到来や降雪もあり、寒さに弱い理事者にとっては辛い季節となった。救いは今年度、理事者室と隣の応接室に個別エアコンが入り、弁護士会館の空調が切れた後でも暖かい中で執務できることである。
 さて、今期理事者も早第4コーナーに入り、次期理事者への併走準備態勢へと入りつつある。今期は、司法改革の実行ということで今年10月から業務を開始する司法支援センターの問題(国選業務、法律扶助業務等が同センターへ移行するのに伴う諸手続及び事務局体制の整備等)に加えて、綱紀・懲戒手続の事務停滞事故発覚を契機に、会全体として会内委員会と会事務局との役割・事務分担のあり方、会組織と決定システムのあり方が大きな問題となった。これからの弁護士大増員時代を迎えて、会員一人一人が、弁護士自治の意義や公益活動・弁護士会会務について更に突き詰めて推考していく必要がある。
 今期中片付けておかねばならない課題も残りそうであるが、次期理事者にはスムーズに引き継ぎをしたい。
 ところで、今期理事者間でのメールのやり取り件数が既に2100件を越えた。もしも「メール」がなかったら…。
 残り2ヶ月余、気を引き締めて庄司丸を支え、待ち遠しい春を迎えられればと思いつつ会務に励みたい(1月記)。

神奈川の司法支援センター(1) 支援センターの必要性
日本司法支援センター神奈川地方準備会 委員長 山下  光
  司法支援センターの神奈川地方事務所支援センターは、約20名の職員を雇用のうえ、山下町の産業貿易センター10階(約176坪)で平成18年10月に開業する予定である。
 雇用する職員の半分前後は、弁護士会の職員を採用する方針であり、事業規模は、日弁連のシミュレーション等によると、少なくとも平成21年には民事法律扶助4500件、国選7700件、無料法律相談5000件を目標としている。
 弁護士会が永年にわたり血と汗で育て上げ、社会的に評価されている人権救済事業である法律扶助と被疑者援助事業を法務省の所管する支援センターに何故に引き渡すのかという質問を多くの会員から受ける。
 扶助協会の平成16年度の決算によると、事業の規模は約100億円を超える。一方、我々が当番弁護士を維持するために月額4200円の会費を支払っているが、その額は約10億円にもならないのである。
 我々は10億円弱を利用して、当番弁護士、被疑者援助、少年付添の事業をしているが、実際に逮捕、勾留されている被疑者は年間約15万人であり、とても前記の資金で賄うことは無理である。
 日弁連は、これらの事業は弁護士が身銭を切ってやることではなく、本来、国が行うべきであるということを主張し、被疑者国公選運動を進めていた。その念願がかなったのが支援センターである。
 また、支援センターの話が突然持ち上がったような意見を聞くが、民事扶助と被疑者国選を扶助協会が取り扱うという構想は、民事法律扶助法の制定を検討する段階で議論がされていた。しかし、機が熟さず、扶助協会は、認可法人ではなく指定法人を選択し、認可法人としては取り扱えない被疑者援助事業を取り扱えるようにした。それが民事法律扶助法が制定され、4年も経たないのに同法が廃止されたのは司法改革があったからに他ならない。時代は音をたてて流れているようである。
 次号では、支援センターの具体的な活動について報告したい。

こちら記者クラブ 被告人の涙に衝撃
 新聞記者になって4月で6年目、横浜で警察・司法担当になってもうすぐ1年になります。
 初めて裁判の記事を書いたのは、2年目になったばかりの勤務先の名古屋地裁。それまで裁判を実際に傍聴したことはなく、知識と言えば、学校の教科書や刑事もののテレビドラマぐらい。大学でも法律の授業を全く選択したことがなかったため、緊張と不安で胸が詰まるような思いで法廷に足を踏み入れました。
 さて、傍聴したのは覚せい剤取締法違反に問われた元中学校講師の女性の初公判。1字1句漏らさないようにメモを取ることだけで手いっぱいでしたが、緊張も吹き飛んでしまうくらい衝撃を受けたのは、家族もいる傍聴席の人目もはばからず、号泣を続ける女性の姿でした。
 罪を犯したとはいえ、真摯に反省して流す涙。記事の扱いはベタでしたが、生まれて初めての裁判は多くのことを感じ取り、考えさせられる場となりました。
 もちろん、その後に幾度となく傍聴した刑事裁判はきれい事ばかりではありません。例えば、最終意見陳述で「反省しています。どんな量刑でも受け入れます」と言いながら、内容に不服があるとあっさり控訴・上告する被告人。法廷の言葉は何だったのだろう……。
 刑事裁判を通して被告人の襟を正し社会生活に復帰させる。弁護士のみなさんのご活躍を期待しています。
(日本経済新聞社 社会部 今井 孝芳)

常議員会レポート第10回(平成18年1月12日)
 今回の常議員会も綱紀・懲戒事務の滞留問題が議論されたが、今回は、本件問題が弁護士自治の根幹にかかわることから、事務局職員に対する懲戒にとどまらず、当会としての宣言ないし総会決議をなすべきであるとの判断から、この件につき臨時総会において協議することが上程され、これを中心に活発な議論がなされ(議案9)、4時間に亘る長時間の会議となった。
〈議案〉
 横浜弁護士会法教育センター設置・運営規則の制定及び横浜弁護士会司法教育委員会設置規則の一部改正案を原案どおり承認した。同センターは、社会、学校等における法教育の普及を図ることを目的として、設置されるものである。
 日弁連からの「日本司法支援センターが制定する諸規則に関する意見照会」に対する当会回答案を原案どおり承認した。日弁連の要綱試案は、契約弁護士による刑事弁護活動の独立やその内容への干渉を許さないとの視点が乏しいとの観点から各論点に対し、当会の意見を述べるものである。
 日弁連に対する「高金利問題対策委員会」設置の要望書案を、一部修正の上承認した。同要望書は、「みなし弁済規定」の撤廃、制限利率の引き下げ等を求めるための対策本部を日弁連内に設置することを求めるものである。
 共謀罪制定に反対する会長声明を承認した。本声明は、組織的犯罪処罰法の改正案において「共謀罪」が追加され、今年1月に召集される通常国会で成立が図られようとしているが、法案によれば犯罪の実行の着手に至らない「共謀」それ自体を処罰の対象とすることになり刑法の基本原則に反する等の理由で反対するものである。
 横浜弁護士会会館外壁改修工事等追加工事につき、見積書どおりの追加を承認した。
 1名の当会入会申込者があり、入会を承認した。第一東京弁護士会からの登録換えである。
 緊急議案として、「ゲートキーパー立法」に反対する会長声明を承認した。マネーロンダリング等「疑わしい取引」につき警察庁への報告義務を負わせることは「国家権力からの独立性」という弁護士の存立基盤を揺るがしかねない重大な問題を孕んでいるとの観点から、反対することを内容とする声明である。
 横浜地検からの照会事項につき、回答すること及び回答案を承認した。
 平成18年2月8日(水)に臨時総会を召集すること及びその提出議題(1会則改正の件 2横浜弁護士会会館規則の一部改正 3医療観察法に基づく国選付添人に関する会規制定)につき、承認した。
 提出議題としては、上記3議案の他、綱紀・懲戒事務滞留問題に関する会決議の件が上程された。本件事案は、自治的懲戒制度が、弁護士自治の根幹にかかわることから単に担当職員及び管理職の懲戒にとどまらず、市民に対する信頼回復のために当会としての決議をなすべきであるとの趣旨で提出されたものであるが、その決議内容について常議員会メンバーを中心に検討を経た上で、1月30日、臨時常議員会を開き、再度上程し決議をすることとした。
〈報告事項〉
 理事者から、以下の報告があった。
 後記のとおりの人事推薦をしたこと。
 綱紀・懲戒事務滞留問題につき、担当職員及び上司1名については、12月9日、他1名の上司には12月12日に懲戒処分の執行がなされたこと。
 改正刑訴法の証拠開示制度に関し、当会法科大学院支援委員会が「開示証拠の法科大学院における使用に関する意見書」を日弁連に送付すること。
 平成18年度会員の公益活動・委員会活動につき、該当会員を免除したこと。当会「会員の公益活動及び委員会活動に関する会規」により、70歳を超える場合、健康上の理由がある等の場合は、会員の公益活動等が免除される。
人事案件
 ◆会外人事 ◇日弁連人事 ●関弁連人事 ○会内人事 (敬称略)
 ◆横浜地方法務局/筆界調査委員候補者(10名)
 清水規廣(28期),庄司道弘(30期),佐藤克洋(30期),武井共夫(33期)、(33期),大鹿明夫(39期),竹森裕子(40期),(42期) 、二川裕之(46期),柳川猛昌(51期)
発行責任者
横浜弁護士会常議員会 議長 木村 良二
編集責任者
副議長 伊藤 秀一

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