横浜弁護士会新聞

2006年6月号  −1− 目次

国選弁護はどうなる? 弁護士会は、日本司法支援センターにどう対応していくのか

国選はすべて日本司法支援センターが運営主体に
 本年10月から、被疑者国選弁護制度が始まる。まずは「死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪の事件」で被疑者の資力が50万円以下のものが対象となる。この被疑者国選も、従来の被告人国選も、本年10月以降は、日本司法支援センター(以下「支援センター」という)が運営主体となり、裁判所の求めに応じ、裁判所に対して、「国選弁護人契約弁護士」の中から、国選弁護人候補者を指名して通知することとなる。
国選弁護をするには支援センターとの契約が不可欠
 従って、今後、支援センターと国選弁護人契約を締結しないと国選弁護事件はできないし、支援センターから国選弁護人契約を解除されると国選弁護はできなくなる。
 ところで、このように国選弁護制度に重要な役割を果たすことになる支援センターとは果たしてどのような組織なのか。
 支援センターは独立行政法人通則法が準用される法人である。支援センターの長である理事長は法務大臣によって任命される。また、支援センターの業務の仕方を定める業務方法書・法律事務取扱規程・国選弁護人契約約款はすべて法務大臣の認可事項である。
 更に、契約している国選弁護人に対する措置(契約解除、一定期間の指名停止)は9名からなる審査委員(裁判官1名、検察官1名、弁護士2名、有識者5名)が決定する。これらのことから「官営国選制度である」との批判や支援センターによって弁護活動の独立が侵害されるのではないかという強い警戒心を抱くものもいる。
弁護活動の独立のために支援センターに対する監視を
 当委員会としては、支援センターが国選弁護人の指名通知を裁判所に対して行うという制度ができた以上は、被疑者・被告人の権利保護の観点から、これらの者が適時適切な弁護が受けられるようにするため、国選弁護制度の円滑な運用に協力する必要があり、今後も当会会員への協力呼びかけを積極的に行っていく責務を負っていると考える。
 しかし一方では、法務省や支援センターが提示する国選弁護制度の枠組み自体やその運用が刑事弁護活動の独立をおびやかすことのないように監視していく必要がある。
 具体的には次のような方法が考えられ、これらは本年5月末に公表される予定の支援センターの業務方法書にも定められ実現する見込みである。
 (1)当会としては、従来どおり、被疑者国選については当番日ごとに、被告人国選については公判日ごとに担当者を割り振った「国選候補者推薦名簿」を作成し、これを支援センター神奈川県支部に提供し、この名簿に基づき順次国選弁護人候補を指名していく運用を求めていく(国選弁護人契約は弁護士会としてとりまとめていくことになる)。この準備のために、本年4月以降、国選弁護人の選任について今まで一部の支部や簡易裁判所で行われていた裁判所によるいわゆる「一本釣り」を廃止し、全件について担当日制を導入することとなった。
 (2)当会の提出した名簿に登載されていないものから支援センターに直接国選弁護人契約の申込みがあった場合には、支援センターは、当会に当該申込者との締結について意見を求めた上で申込みの許否を判断する。
 (3)支援センター神奈川県支部との間で、協議会を設け、弁護人の指名通知について恣意的な運用がないか監視していく。
 (4)国選弁護人について苦情があった場合に支援センター地方事務所長から当会に対し調査を依頼してもらうようにし、当会はこれに対し調査をし、その報告と意見を出していくようにする。
 (5)今後、支援センター地方事務所との間で、これらについて「国選弁護連絡協議会(仮称)」の設置や運用に関する「協定書」の締結について協議を進めていく予定である。
   ◇  ◇  ◇
 我々弁護士の悲願であった被疑者国選弁護制度が支援センターを運営主体として始まることについては、様々な思いや意見があろう。しかし、どんなに制度が変わろうとも国選弁護を担うのは、我々弁護士である。弁護士しかいない。今一度、被疑者・被告人の権利擁護という我らの使命を自覚し、弁護活動が脅かされることのないよう会員の協力のもと、弁護士会一丸となって取り組んでいきたいと考える。
(刑事弁護センター運営委員会委員長 木村 保夫)

国会へ行ってきました
 平成16年11月に当会有志で日本弁護士政治連盟神奈川支部(通称「明日への会」)を立ち上げ、その1周年企画として、「国会へ行こう」と題して本年3月2日に24名が参加して、国会見学を行った。
 当日は、当会会長からの要請で、参加会員は当会理事者とともに国会議員への陳情をまず行うことになった。県下選出の衆参両議員の国会事務所を順番に訪問し、弁護士会が共謀罪、ゲートキーパー立法について断固反対の意見であることを説明した。面会時間は極めて短いため、陳情内容を簡潔に説明し、議員の記憶にとどめてもらえるよう多人数で来たことをアピールした。国会会期中であるにもかかわらず議員本人が対応して下さったところもあり、議員側も弁護士会の意見に関心を持っているようだった。弁護士会の意見を立法に反映させるためにはトップダウンだけではなく、地元選出の議員に直接伝えることも重要であると感じた。
 参議院議員食堂にて昼食後、当会会員である千葉景子参議院議員の事務所の協力を得て国会見学をスタート。ガセネタメール騒動もほぼ終息した衆議院予算委員会における締めくくり質疑を20分程傍聴した。野党議員の質問に、小泉総理大臣、与謝野金融大臣、谷垣財務大臣が答弁に立った。その後、参議院議長応接室に特別に入室させてもらうなど、参議院内を見学した。さらに千葉議員のご配慮にて、参議院副議長公邸で夕食会を持った。麻布十番の一等地にありながら敷地面積4800uに、滝や茶室をもつ優雅な庭と品格ある洋館において楽しい時間を持つことが出来た。
 明日への会は設立して1年、会員数126名と未熟な組織ではあるが、対外的には地元選出の議員や地方自治体の長らと積極的に意見交換をし、また会内的にはこうした催しものを行って、弁護士の立法過程への関与の重要性を訴えるとともに支部会員の拡充に努めていく予定である。
(服部 政克会員)

山ゆり
 弁護士にとって手離せないのが手帖。手帖がないと業務ができないと言っても過言ではない。だから、手帖なしで日程の打合せができる依頼者がいると、ちょっと驚く。
最近は、電子手帳とかパソコン等を使っている弁護士も多いようだが、旧人類の私はやっぱり紙の手帖が使い易い。ぱっと開いて書き込んだり確認できるのは紙ならでは。弁護士会の協同組合に入っているので、無料でもらえるのもいい(ちょっと宣伝)。筆記具はゴルフ場でもらったスコアカード用鉛筆が手帖にはさめて便利(ちょっと恥しいか)。
弁護士の手帖は一般的にスケジュールが一杯入っていて真黒のことが多い。私はきれい好きなのであまり書き込まないよう努力している。金曜日の仕事を終えて手帖を見たとき、翌週が真白なのが理想。「西コース8時30分」とか書いてあるともっといい。
2年位前から、業務用の手帖とは別に暦帖を第2の手帖として使っている。干支、二十四節気、雑節、七十二候等が記載されたものだ。書く内容は暑かった寒かったとか、どこで何の花を見たとか風邪をひいたとか仕事と関係ないことばかり。日頃、色々な暗い事件を扱ったりニュースで見たりして暗澹とした気持ちになることも少なくないが、この手帖のおかげでやはり日本に生まれて良かったという気持ちになる。
 
(沢藤 達夫)

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