横浜弁護士会新聞

2007年12月号  −2− 目次

事務所探訪 No.3 法人化によるサービス向上を目指して 弁護士法人谷口綜合法律事務所編
弁護士法人谷口綜合法律事務所は、当会で初めて法人登録をし、相模原市内に2つの事務所を置いている。10月23日、相模大野駅前の事務所にて、谷口隆良会員、谷口優子会員に、法人化の意味についてお話を伺った。
 どうして弁護士法人を選択したのですか?
 利用者には、担当弁護士に故障等が生じたときに法人として他の弁護士が対応する、遺言の保管・執行を安心して任せられる等の利点があります。弁護士にとっては、先人弁護士が築いた信頼や実績を、法人を通して若い弁護士に継承させることができるという利点もあります。
 相模原市内に2事務所を置いている理由は何ですか?
 相模原市は、人口約80万人、面積は横浜市よりも広いのです。市内の南北に事務所を置くことで、依頼者の時間的・距離的負担を軽減させることができます。また、東京への通勤圏内の小田急相模大野駅近くと、地元経済に密着したJR相模原駅近くに事務所を置くことで、市民の幅広い需要に応えることができます。アドバイザー(法的助言者)に留まらず、地域産業の業務執行への参加を要請されることもあります。
 法人事務所を運営する際に留意している点はありますか?
 事務職員も交えて事務所会議を頻繁に行い、情報の共有化を図ると共に、双方代理になりそうなケースがあれば調整して回避します。弁護士会に対しては、法人としての会費も納付していますが、印紙税法上の非課税法人になっていないので、領収証等に収入印紙を貼る必要があります。
 その場合、所属弁護士の待遇にも違いがありますか?
 社員は年度始めに給与額を決定する定額報酬制で、社会保険に加入するのが、最大の特徴でしょう。これまで個人で掛けていた日本弁護士国民年金基金は脱退し、65歳に達すると加入期間に応じた給付を受けることになります。制度設計としては改善の余地が大です。
 今後の展望についてはどのようにお考えですか?
 弁護士法人が認められて5年ほどしか経っていません。弁護士自身が発想を転換し、弁護士法人が定着するためには、最低でもあと5年は必要でしょう。法人化による業務の永続性に対する認知度が深まれば、弁護士法人の存在意義は更に高まるものと確信しています。

私の事件ファイル(8) 頭より体を使う ―夜霧の第三京浜を行く―
会員 大村 武雄
 弁護士になって3年目の初夏の頃である。
 修習当時の指導裁判官から電話があり「親戚の知人である農家Aさんが、不動産業者Xにいいようにされた。難しい事件なので話合いで解決してほしい。」とのことであった。
 すぐにAさんに事情を聞いたところ、Aさんの住んでいる川崎郊外で宅地造成をしているXを信用したAさんは、代金をもらわずに1000坪以上の土地の所有権移転登記をしたが代金を払ってくれない。土地は売られてしまい、他の土地を渡すと言われたが一向に話が進まない、Xが渡すという土地は、同じ集落の農家BさんがXに売った土地らしいということだった。  
 早速Aさんが売却した土地を調査し、Aさんの自宅を訪れた。農家の事件は初めてなので、どのように対処したらよいのか戸惑いがあった。Aさんの自宅には、大きな池のある広い庭があり、手入れの行き届いた庭木や草花が植えられていて農家らしい趣のある庭であった。私の質問にAさんは、庭を案内しながら庭木の育て方を教えてくれた。  
 それから何回か自宅にうかがったが、なかなかつかまらないXが某日の夜にAさん宅を訪れることを聞いた。そのときに会わないとチャンスを逃すと思い、Xが来たら私に電話して待たせておいてくれ、すぐに行くからと話した。当日午後9時頃、AさんからXが来たとの電話があり、自宅から夜霧(スモッグ)の第三京浜の高速道路を車でとばし、約50分で到着した。Xと膝詰め談判をして深夜に及んだが、Bさんから買った土地を渡すという一札をXからとることができた。  
 その直後、Bさんと話合ったところ、Bさんは土地代金を何割かもらっただけでXに所有権移転登記をしたとのことであった。お互いに被害者だということで折半してその土地を取り戻すことになり、3か月で無事解決した。その土地は、2、3年後に高騰したため実害はなかった。  
 解決後、AさんはXから被害をうけた農家C、D、Eを紹介してくれた。話の糸口をつくるため、植物図鑑で勉強してれぞれの庭で質問をあびせたところ非常に喜ばれ、3名ともすべて一任するということになった。10日に1度は農家めぐりをするのが日課になり、Xを夫々の農家に呼びつけて交渉し、4か月ですべて解決した。  
 4年後、自宅を新築したが、Aさんは新築祝として山から掘り出した高さ5メートル位の実生の五葉松としゃくなげを贈ってくれた。それ以来、庭いじりは私の趣味の一つとなり、植物図鑑は愛読書になった。  
 それから十数年たって司法研修所教官になり、35期から38期の教え子に「頭のない奴は体で稼げ」と説いたが、それは自分に言いきかせる言葉でもあった。司法研修所を巣立って20周年、25周年の教え子の同期会に招かれた席で、教え子から笑顔で「体で稼いでいます」といわれると大変嬉しいばかりでなく、こみ上げてくるものがある。  

大いに胸躍らせて安芸の地に赴任 津田久敬会員赴任壮行会
 当会の津田久敬会員(58期)が、安芸ひまわり基金法律事務所に所長として赴任する。
 10月1日、ロイヤルホール横浜にて、当会主催の壮行会が開催され、50名の会員が参加した。  
 最初に、当会を代表して会長から、津田会員に対する激励の言葉があり、引き続き、津田会員から抱負が語られた。津田会員は、弁護士になった時点から公設事務所への赴任を希望しており、その希望が実現することに大いに胸躍らせているとのことであった。また、同会員は安芸市に地縁はないものの、何度も同地に赴くうちに、既にその大自然及び美味しい食事の虜になったようであり、赴任前から安芸の魅力について大いに語るなど、地元密着への意気込みを感じさせる挨拶であった。  
 その後、津田会員が所属している事務所の高橋理一郎会員から、津田会員の誠実な仕事ぶりが語られ、また同期8名からは同会員の修習生時代のお酒にまつわる珍事件が次々と語られるなど、同会員が周囲からも大いに愛される人柄であることが伺われた。  
 また、公設事務所所長経験のある吉川晋平会員から、公設事務所での成功の秘訣と同会員自身が所長になるに際して自らに課した3つの禁止事項が語られ、男性である津田会員には非常に参考になる訓示も含まれており、会場は大盛り上がりのうちに閉会となった。  
 津田会員は、11月17日から所長として執務を開始している。津田会員の今後の活躍に大いに期待したい。  


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