横浜弁護士会新聞

2007年7月号  −2− 目次

「伝説の教官」を目指して 大木孝会員に聞く
 大村武雄会員、川島清嘉会員に続き当会から3人目の司法研修所教官(刑事弁護)に大木孝会員が就任した。

教官就任の動機は

 漠然とした形では弁護士登録の当初から司法研修所での後進指導に携わってみたいという夢はありました。
 登録後、市民法律講座での講師や法科大学院での授業に従事する中で、分かり易い図解、分かり易い例え話が効果的であるという確信を得て、漠然とした夢が徐々に具体的なものへと変わってきました。
 そんな中、周囲の方々からの薦めもあって、司法研修所教官の大任に就くことになりました。

教官としての執務状況は

 6月以降に実施される起案資料の作成にあたっていますが、1本の白表紙起案のためには教官室の合議が10数回にわたって重ねられ、講義テキストや模範弁論要旨を揉みに揉んでいくという作業が行われます。
 特に刑事弁護教官室は新人教官に対するスパルタ式の教育が伝統で、合議の中で厳しい批判・検討に耐えるためには相当な準備が必要になります。
 週に1日か2日は和光市の司法研修所か霞が関の日弁連会館で合議が行われ、9時過ぎまで議論を交わすこともしばしばあります。

今後の抱負は

 激しい議論が飛び交う刑事弁護教官室の合議ですが、雰囲気に慣れるにつれ、図解等を駆使した自分のスタイルが周りにも浸透し、「大木色が出てきたね」と言われるようになってきました。
 当会からの12年ぶりの教官として「なんだ、わざわざ横浜から来て大したことないな」などと他の教官に言わせる訳にはいかないので、非常に気合は入っています。
 できれば色々な意味で「伝説の教官」と言わせたいと思っています。

会員に対して一言

 今回の教官就任にあたっては多数の先生方にご尽力いただき本当に感謝しています。
 また、私を快く送り出してくれた事務所のスタッフにもこの場を借りてお礼を言いたいと思います。
 私より期の若い会員も、私のように酒好きのチョイ不良(ワル)親父でも教官になれるということで、是非自信をもって司法研修所教官を含めご自身の目標に向って前進していただければと思っています。

法廷小説・映画がお好きとうかがっていますがお勧めの作品はありますか

 色々ありますが海外の作品には緊迫感あふれる良質なものが多数あります。
 小説では「情況証拠」(スティーブ・マルティニ)がお勧めです。
 また、映画ではやはり「12人の怒れる男」でしょうか。証拠構造を学ぶ最良の素材と言えますし、何と言っても「理」が皆を動かすというストーリー自体が刑事弁護に携わる者としてたまりません。
 激務の中、快く取材に応じてくれた大木会員であった。後進の法律家の養成という創造的な作業にあたる喜びに満ちた表情が印象的であった。
 

ご苦労さま&がんばれ
杉?茂会員 日弁連副会長退任慰労会・大木孝会員 司法研修所教官就任激励会
 3月に日弁連副会長を退任した杉?茂会員の退任慰労と、4月から司法研修所教官(刑事弁護)に就任した大木孝会員の激励を兼ねる会が、5月15日、横浜ロイヤルパークホテルで開かれた。
 挨拶に立った杉?会員は、激務に追われた日々を振り返り、「弁護士会と会員に恩返しを、との思いで全国を駆け回る生活だった」と苦労を語った。同会員はまた、大木会員の教官就任について触れ、「数年前から教官を目指したらどうかと話してきたので、本当にうれしい」と述べた。
 当会から3人目、12年ぶりの研修所教官となった大木会員は、就任までの苦労話を披露「司法試験合格が早かったわけでもなく、支部に事務所があることなど、ある意味でハンディを抱えた自分でも教官になることができた。多くの人に助けられた結果だ」と語った。その上で「横弁もこれだけの規模になり、常時、教官など、要職を供給できる体制になった。これからは、東京三会だけがポストを占める時代ではない。ハンディのある私がなれたのだから、ぜひ、自分に続く人が横弁から多く出てもらいたい」と述べた。
 会には約90人の会員が参加。地上70階からの華やかな夜景を背に、両会員の活躍をねぎらい、にぎやかに歓談した。
 


こどもの日記念行事講演 「学校教育これでいいの?」
 5月26日、当会会館にて、毎年恒例となった「こどもの日記念行事」が行われた。今年は、「裁判官Who ’s Who」等の著者で、教育・人権・司法等の問題に取り組んでいるフリージャーナリストの池添徳明氏を迎えた。土曜の昼時という時間帯でありながら、約50名の参加があった。
 中村俊規副会長の挨拶の後、栗山博史会員から、国会審議中の「教育三法」の概要について説明があった。その後、「学校教育これでいいの?『管理と統制』進む学校現場」というテーマで、池添氏が講演した。
 池添氏は、東京や神奈川での取材を通じて得た経験から、卒業式・入学式において「日の丸・君が代」が強制されている状況や、教育委員会などからの要求に応えようと現場の教師たちが疲弊・孤立している実情などについて、具体的に紹介した。そして、これら一連の動きを「管理と統制」というキーワードで捉える必要がある、と指摘した。なかでも、授業における「思想・良心の自由があるから、国歌を歌いたくない人は歌わなくて良い」との指導は、憲法教育として認められてよいはずなのに、東京都の教育委員会はそれも認めていない、という指摘が印象に残った。
 池添氏の講演の後、質疑応答に入った。現職の教師からの「現状を打開するにはどうすればよいのだろうか?」という質問に対し、「教師だけでの議論ではなく、保護者などを含めた広範囲の人々と共に考えていく必要がある」などの意見が出され、予定時間を大幅に超える中で会は盛況のうちに終った。
(会員 金子 裕子)
 


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