横浜弁護士会新聞

2009年7月号  −2− 目次

話の花咲き 笑いが絶えず 吉戒修一横浜地方裁判所所長歓迎会
 5月14日、横浜中華街萬珍楼において、吉戒(よしかい)修一横浜地方裁判所所長の歓迎会が行われた。
 岡部光平会長からの歓迎の挨拶と吉戒所長の華々しい経歴の紹介の後、吉戒所長から挨拶が行われた。
 吉戒所長からは、出身の福岡県でも「吉戒」という名前は珍しいことや吉戒の「戒」は人を戒めるの意であるが、自分は自嘲自戒するのが得意であり人を戒めるのは不得手である等といった話があり、会場の雰囲気が和んだ。
 その後、吉戒所長は、裁判員制度についても言及し、「刑事裁判の大きな変革期であり、この制度が円滑に運用できるよう弁護士の皆様にもご協力願いたい」と述べた。続けて、「民事裁判についても、新民事訴訟法施行から11年が経過し徐々にその成果があがってきているが、裁判員制度が始まったことで、民事裁判にも少なからずいろいろな影響があると思う」、「課題山積だが頑張っていきたい」と抱負を述べた。
 所長挨拶の後、吉戒所長と同じ修習25期の当会会員を中心に歓迎の挨拶が行われた。吉戒所長は話が司法修習生時代のことに及ぶと再度登壇し、「修習生時代はアルバム委員をしていたが、アルバムに載せる写真撮影の際、カメラにフィルムを入れ忘れた」との失敗談を披露した。この吉戒所長のユーモアたっぷりの話に会場は一気に盛り上がった。同期の会員からは、「吉戒所長をご招待して同期会を開催しよう!」という話も飛び出した。
 歓迎会の間、吉戒所長は、各テーブルを一つ一つ回り、今後の民事裁判のあり方といった大きなテーマから控訴趣意書の書き方といった極めて実践的な話まで各テーブルの会員達との間で大いに話に花を咲かせていた。
 地裁所長の歓迎会と言うと、とかく堅苦しいものと思われがちだが、会場内は笑いが絶えず、終了予定時刻を過ぎてもこの楽しい宴の余韻にもうしばらく浸っていたいという雰囲気が満ちあふれていた。これもひとえにこれまでに述べた吉戒所長の人柄の賜であることは言うまでもない。
 裁判員制度スタート元年に当たり、これまで以上に裁判所と弁護士会の連携が必要とされる現在、今年の所長歓迎会は、まさに今後の横浜地裁と当会との円滑な連携を予感させるものであった。
(会員 井澤 秀昭)

今までと違う発想で入念な準備を 裁判員裁判研修会
 4月21日と5月11日の2回にわたり、裁判員裁判における弁護活動に関する直前研修が実施された(両日の内容は同一)。同研修には第1回に91名、第2回に114名の合計205名が参加し、他の研修会と比較しても参加者が多く、会員の関心が高いことがうかがわれた。
 この直前研修では、「裁判員裁判で弁護活動をするに当たり、最低限知っておかなければならないこと」に内容を絞り、公判前整理手続や冒頭陳述、最終弁論等についての解説を行った。
 裁判員裁判では公判前整理手続が必ず前置され、そこで争点や証拠の整理、審理予定の策定が行われることになっている。公判前整理手続終了後は原則として新たな証拠調べ請求をすることができず、公判では公判前整理手続で策定された審理予定に基づいて連日開廷での集中審理が行われるため、公判前整理手続において適切な弁護活動を行うことが極めて重要になってくる。
 また、裁判員が加わった審理では、これまでの書面に依存した審理と異なり、その場で裁判員及び裁判官に主張・立証を理解してもらうことが必要になるため、証拠調べの方法にも工夫が必要になるほか、必要的とされる弁護側冒頭陳述や、最終弁論の方法についても、これまでとは全く異なった発想で入念な準備をする必要がある。
 直前研修では質疑応答も含め3時間という時間的制約の中で、これら最も重要と考えられるポイントにつき解説を行った。また、裁判員裁判ではこれまでと方法を大きく変えなければならないと考えられている情状弁護についても、基本的な考え方や裁判所の量刑データ検索システムで得られる情報を利用した弁護の方法について解説した。
 今回の研修は短時間で多くの会員に最低限の情報を提供することを目的としていたが、その目的をほぼ達することができたのではないかと考えている。しかし、裁判員裁判における弁護活動に十分に対応するためには更に相当の努力が必要と思われる。会員には今後も研修の機会を提供していきたいと考えているが、個々人の積極的な研鑽もぜひお願いしたい。
(刑事弁護センター運営委員会 研修部会 部会長 妹尾 孝之)

こんな仕事もやっています 横浜市包括外部監査委員の職務とは
仁平 信哉 会員
 包括外部監査制度の概要を教えてください
 包括外部監査制度は地方自治法に基づく制度で、監査委員が地方自治体とは独立した機関として監査業務を行います。監査委員の任期は3年で、自らの判断で設定した特定のテーマについて監査を実施します。平成18年4月から3年間、私は横浜市の監査委員として監査を行ってきました。
 包括外部監査委員の業務は激務なのでしょうか
 横浜市からは2月から召集される議会の開催までに外部監査報告書を提出してほしいとの要望を受けているため、その直前の12月から1月にかけては通常の弁護士業務を行うことは殆どできませんでした。休みも大晦日と元日のみで、私だけでなく事務所のスタッフにも事務所に出てもらっていました。
 監査業務についてもう少し詳しく教えてください
 報告書の提出から逆算し、前年の4月から5月頃に監査テーマを設定し、6月から8月頃にかけて現地調査を行います。その後、9月から各種データや数字の精査に取りかかります。
 監査の対象は膨大な範囲に及ぶので、私の他に、10名程度の公認会計士の先生方に補助者として参加してもらいました。
 任期中の3年間にはどのような監査テーマに取り組まれたのですか
 私の監査テーマは、平成18年度は「港湾」、平成19年度は「ゴミ」、平成20年度は「病院」でした。
 「港湾」の監査にあたっては、昭和32年から平成17年までの埋立事業の会計を全て合算する必要がありました。みなとみらい21事業についても膨大な資料を整理することになりました。
 また、「ゴミ」の監査にあたっては、ゴミのリサイクルシステムについて一から勉強をさせてもらいました。
 「病院」についても、昨今の新聞で多く取り上げられている分野であり、政策的な問題等に関する監査の在り方について多くの議論を重ねることになりました。
 なお、各自治体での外部監査に対しては、全国市民オンブズマン連絡会議による評価がなされていますが、努力の甲斐あって平成18年度の「港湾」、平成19年度の「ゴミ」について活用賞という賞をもらうことができました。平成20年度の「病院」については、評価結果を楽しみに待っているところです。
 3年間の職務を振り返ってどのような感想を持たれていますか
 行政サービスという役割からやむを得ない部分があるのかもしれませんが、地方公共団体には「採算性」という観点が希薄だと感じました。市民が納めた貴重な税金が適正に使われているかという点について、しがらみを気にすることなくチェックできたことは非常に意義のある業務であったと思っています。
 今後、外部監査委員への就任を検討している会員に対して
 外部監査委員の選任に際しては、公認会計士等との連携作業ができる体制がどの程度整っているかという点と行政制度に関する知識・理解がどの程度あるかという点が考慮されているようです。
 非常にやりがいのある職務であると思いますので、そのような点に配慮しながら経験を重ね、ぜひ多くの会員に外部監査委員として活躍していただきたいと思っています。

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