横浜弁護士会新聞

2009年12月号  −2− 目次

セーフティネット貸付研修会開催 改正により利用しやすい制度に
 9月30日、横浜市開港記念会館にてセーフティネット貸付研修会が行われた。
 改正貸金業法の成立に伴い、平成19年に政府の多重債務対策本部が策定した「多重債務問題改善プログラム」においてセーフティネット貸付の充実が謳われていたが、社会福祉協議会が行っている既存の生活福祉資金貸付は、連帯保証人が必要であったり、多重債務者の利用が事実上拒絶されるなどしていたため、利用しにくい制度となっていた。その制度が本年10月に大幅改正されるのを期に、この問題の第一人者であり、全国各弁護士会を行脚している村上晃弁護士(長野県)を講師に招き、研修を行った。
 改正の眼目としては、「総合支援資金」というカテゴリーが新たに設けられたこと、連帯保証人がいなくても利用可能となったこと、貸倒れ補填資金の積増しにより「貸渋り」が生じるのを防止したこと、債務整理費用が一時生活再建費の一つとなり、法テラスで援助の対象外となっている破産管財人費用の借入れが可能となったことなどが挙げられた。
 講師オリジナルの生活再建のための諸制度が一目でわかるチャートや、近く出版される予定のQ&Aも配布され、参加者にとって非常にお得な研修会となった。
 講師からは、全国それぞれの地域で関係者が協議し、この新しい制度を使い勝手のよいものとして育てていくとの観点が重要であるとの指摘があった。
 研修会当日は、その協議のスタートにふさわしく、制度の実施主体である県社会福祉協議会、受付窓口である市区町村の社会福祉協議会の担当者の方にも多く来場していただき、実施直前の準備状況が報告されたり、現場ならではの実務的な質問がされたりした。
 生活再建こそが多重債務問題解決の最終的な目標であることを、あらためて再認識させられた、非常に意義深い研修会であった。
(会員 佐藤 進一)

常議員会のいま 弁護士会への愛着が増します
会員 吉澤 幸次郎(56期)
 常議員会に出席するようになって約半年が経過した。常議員になるまでそもそも常議員会で何を議論し、何を決めているのかも良く分かっていなかった。おそらく、常議員経験の無い若手会員の大多数が私と同様ではないかと思う。実際に出席してみて、これ程多岐にわたる議案を毎回議論しているとは想像していなかった。
 淡々と議案を消化するだけでなく、時には厳しい意見が出て議論が紛糾することもある。そんな時、岡部会長を始めとする執行部の先生方や、議長・副議長の緊張感は何とも表現しようが無い程である。
 私のような若手?会員にとって、重鎮・大御所と呼ばれる?ようなベテランの先生方を前にしてしまうと、自らの知識・経験不足からついつい気後れして議論に全く参加出来ないことばかりだが、常議員会に参加して弁護士会運営の最前線に触れるだけでも非常に有益である。当然のように利用して便利さを享受している様々な制度を始め、各種人事等々、弁護士会の運営が実にこれ程の議論を尽された上に成り立っていることを知り、何となく弁護士会そのものへの愛着も増してきたように感じている。そんなことで、特に若手会員には是非とも常議員を経験することをお薦めしたい。
 さて、10月の常議員会は概ね順調に進行し、高柳議長が閉会を宣言した。執行部の先生方が一様に安堵の表情を浮かべる横で、早く終わって喜ぶ私の笑顔もあった……。

新こちら記者クラブ 評議は正義か
 裁判員制度が始まったが、以前から裁判員制度には疑問を感じることがたくさんあった。中でも最大の疑問は、同じ事件でも裁判体によって出る結論が違ってくるが、その振れ幅は今まで以上に大きくなる。それでいいのか、ということ。
 その疑問を解消するため、昨秋、ある地裁で行われた模擬評議に参加した。
 路上で被害者を殴って金を奪ったという事件。検察側は強盗致傷罪で起訴したが、弁護側は傷害と窃盗の罪と主張した。全国各地の地裁でこれと同じ事件で模擬評議をし、全て傷害と窃盗の判決だったという。私の裁判体もほとんどが傷害と窃盗で私も同じ意見だった。
 しかし、よくないことと知りつつも、私は違う判決を出してみたかったので屁理屈をこねて強盗傷害を主張した。
 すると、私と同年代の1人の裁判官が強盗傷害に同意したのだ。後でなぜ同意したのか聞いてみたら彼はこう答えた。
 「先入観を捨てて小西さんの意見を聞けば強盗傷害で納得できました。今までの判決の常識だと間違いなくこれは窃盗傷害です。これからは違います。我々裁判官が民意を反映させる意識を持たないと何も変わりません」。
 裁判官が民意を取り入れる意識を強く持つ。これが裁判員制度導入の最大の成果なのではないか。
 最後に彼は私の疑問にこう答えた。「9人で知恵を絞り議論しつくした結論はどんな結論であっても正義だと信じています」。
 あれから1年、私は、彼の言葉を思い出しながら、裁判員裁判を取材している。
(テレビ朝日 報道局ニュース情報センター社会部記者
 神奈川県警担当  小西 弘哲)

後見業務の基礎知識〜就任後の実務〜 成年後見業務連続講座 第1回
 10月5日、当会の高齢者・障害者の権利に関する委員会が主催する研修会が開催された。当委員会では、全3回の成年後見業務に関する連続講座を予定しており、今回が第1回目である。当日は当委員会の宮下京介会員が講師を務め、45名の会員が参加した。
 近年の高齢化社会により、弁護士が成年後見人に就任する機会が増大している。この研修の目的は、今後、積極的に成年後見業務を担ってもらいたい若手からベテランまで広い層を対象として、成年後見制度の基礎をしっかり学んでもらうことにある。
 講師からは、介護認定制度など高齢者福祉において必須の基礎知識や、成年後見人に就任してからなすべき作業手順が丁寧に解説された。そのような基礎知識に加え、金融機関への就任届出の注意点や成年後見人口座の必要性など実務面のポイントについても事例を交えてわかりやすく説明がされた。
 また、後見業務の中でも重要性が高い居住用不動産の処分の許可制度や、実務上、問題になることが多い後見人による「医療行為への同意」の在り方などが解説された。
 我々弁護士が行う後見業務は、財産管理業務が中心になるので、身上看護の実施や医療同意の権限などについて一定の限界がある。そのことを関係者に理解してもらい、福祉関係者や医療関係者から適切な協力を得る必要が高いと思われる。
 連続講座については、今後第2回目を11月26日午後1時30分から、第3回目は横浜家庭裁判所審判官を招いて1月25日午後3時から予定している。
 当会に対しては、家庭裁判所から第三者後見人の候補者を推薦して欲しいという依頼が数多く寄せられ、その数は年々増加している。積極的に上記の研修に参加した上で、沢山の会員に成年後見人候補者名簿へ登録頂くことを期待する。
(会員 佐賀 悦子)

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