横浜弁護士会新聞

2011年8月号  −3− 目次

子どもの人権相談研修会 いじめ問題を3回にわたって掘り下げる
 今般、子どもの権利委員会は、子どもの人権相談に関与するうえで必要となる基礎的な情報・スキル獲得に役立つことを目的として、3回連続で研修会を行った。
 1回目は、6月3日に「いじめの実態・被害者の気持ち」というテーマで、いじめ問題に取り組んでいるNPO法人ジェントルハートプロジェクトの小森美登里氏、武田さち子氏を招き、学校でのいじめの実態の話を聞いた。
 そして、子どもたちが、いじめによって深刻な状況に追い込まれることを踏まえ、被害者の側に立って保護する必要があることなど、子どもの人権相談において、いじめの事件が持ち込まれた場合に相談員が知っておくべき基礎的な情報を得ることができた。
 2回目は、6月13日、「いじめ事件等に関する学校交渉のノウハウ」というテーマで、第二東京弁護士会色川雅子弁護士から、同氏所属の委員会が作成したビデオを見ながら、いじめの事件を題材に弁護士が関与して学校交渉を行う場合のノウハウや注意点などの解説を受けた。
 いじめの被害にあった子どもへの対応の仕方から学校交渉における基本姿勢まで、詳細な説明があり、特に、学校は敵対する相手方ではなく、共に問題を考え解決していく存在であるということは、心に留めておかなければと思われた。
 3回目は、6月29日に「学校問題に関与する上での基礎知識」というテーマで、それまでの1回目、2回目の上記研修を総括するような形での研修が行われた。これまで全く学校問題に弁護士として関与したことのない人にも、全体的なイメージを描くことができるようにという観点から、Q&Aが組み立てられ、各パネラーが質問に答える形で行われた。
 Q&Aの後の出席者との質疑においても、実際の案件を通した質問があり、いじめ問題への対応の具体的示唆のほか、いじめ問題に内在する困難とその解決への可能なアプローチを共に考えるひとときとなった。
(会員 彌重 仁也)

常議員会のいま 無関心への懺悔
会員 若井 公志(59期)
 常議員となり既に数回の常議員会が開催された。当会支部の活動内容の拡充など組織上の問題や、震災関連などタイムリーに動かなければならない時事的な問題など、多様な議論がなされている。
 先日は、法曹養成制度についての日弁連の提言案に対し当会がいかなる意見を表明するかにつき、活発な議論がなされた。これまで司法修習で賄われてきた実務教育の導入部分を法科大学院にも求めるあり方や、実体法の基本的知識の習得に手一杯となり必ずしも実務教育まで手が回っていないという法科大学院の実情など、法科大学院において指導を担当されている先生からの現場の意見も伺いながら、議論を整理していった。
 恥ずかしながら私自身、こうした法曹養成の問題は報道等で耳にする程度で、細部にわたった議論を目の当たりにしたことはなく、弁護士増加の問題など今後自分自身にふりかかりうる問題以外の点については関心が薄かったように思う。
 このように、法曹養成制度の問題に限らず、眼前で展開される諸先輩方の活発な議論は、諸々の話題に無関心だった私にとって、多様で切実な問題を具体的に認識する場であり、大変貴重な時間である。
 ただの懺悔となってしまったが、今後も常議員会への出席を重ね、定足数死守という当初の甘ったるい意気込みを達成するだけでなく、勉強させていただけたらと考えている。

新こちら記者クラブ 死刑囚との接見
 私は横浜拘置所の接見室で、彼に問いかけました。もしあなたが裁判員として、あなたの裁判に判決を下すとしたら、どのような判決を下しますか?彼は少し照れ笑いしながら「やはり死刑ですね」と言いました。
 昨年の秋、裁判員裁判で初めての死刑判決が下された法廷。被告が傍聴席に振り向き、被害者遺族に深々と頭を下げた光景は、私の10数年の取材の中でも、忘れられない記憶となりました。
 判決後に面会した被告は、罪の重さを実感し、死刑判決を受け入れる覚悟を固めていました。彼は、自らの家族にも、弁護人にも「控訴はしない」と伝えていたのです。死刑判決を下した裁判員についても「人間味のある裁判をしてくれたことに感謝している」と言いました。しかし、控訴期限が迫ったある日の面会では、頭では死刑判決を受け入れながら、心には強い葛藤と恐怖を抱いている様子が伺えました。
 弁護団による控訴前日の夕方、被告と接見を終えて、拘置所から出てきた主任弁護人は、目を赤くし、興奮した状態で、詰め寄る私や新聞記者の問いかけに、「人間の命を何だと思っているんだ」と一喝して帰って行きました。裁判員裁判初の死刑判決が確定するかだけにとらわれていた私は、その時はっと「命の尊さ」について考えさせられた瞬間でありました。
 先日、事件から2年が過ぎ、被害者の命日を前に被告は控訴を取り下げ死刑判決が確定しました。
(テレビ東京 瀬野 剛一)

横浜法曹懇談会 酒食とともに会話の花咲く
 7月6日午後6時、当会会館5階において、今年度の横浜法曹懇談会が開催された。横浜法曹懇談会は、法曹三者が懇親を深め合うため、地裁、家裁、地検、当会の順番で当番をし、昭和30年以来毎年1回開催されている伝統行事である。今年の参加者は、裁判官27名(地裁22名、家裁5名)、検察官15名、弁護士74名、修習生2名の総勢118名であった。
 当会の若田順副会長の司会進行により、今年度当番である地検の河村博検事正が開会の挨拶をされ、続いて当会の小島周一会長が、乾杯の挨拶を行った。さらに歓談の途中で、地裁の大坪丘所長と家裁の成田喜達所長が挨拶をされた。
 料理は寿司、中華料理、デザートなど豪華であり、飲み物もビール、ワイン、日本酒、焼酎など各種美味しいものが並べられた。懇談会の約1時間半はあっという間に過ぎたが、立場の異なる法曹三者が仕事のときとは異なる雰囲気の中、会話と料理を楽しんだ。

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