横浜弁護士会新聞

2011年9月号  −1− 目次 

国民に必要な法曹で有り続けるために 市民シンポジウム「育てよう向日葵」〜法曹養成制度と司法修習生の給費制の維持〜
 7月20日、情報文化センター6階ホールにて、市民シンポジウム「育てよう向日葵」〜法曹養成制度と司法修習生の給費制維持〜が開催された。折しも同日夜には大型の台風6号が関東に接近・上陸するという不安定な天候の中での開催となったが、一般参加者47名、報道関係者1名、弁護士90名と多数の出席があり、ホールも開会前から活気に溢れていた。
 当会小島周一会長による開会挨拶が行われた後、第1部としてまず布川事件の元被告人で今般再審無罪を勝ち取った杉山卓男氏による報告が行われた。
 杉山氏は別件逮捕の恐ろしさや自白強要に至る取調の経過並びにご本人の心情等を生々しく語るとともに、自白強要の防止のため(1)取調の全面可視化、(2)検察官証拠の全面開示、(3)代用監獄の廃止を強く訴えられていた。無実の罪により約29年間も自由を奪われてしまった氏の実体験に基づく報告・提唱は別格の説得力があり、参加者の記憶に強く残るものとなった。
 また、布川事件に弁護団の一員として関わった東京弁護士会の三浦直子弁護士からは、再審無罪を勝ち取るまでの弁護団の活動や苦労が語られた。
 次に、東日本大震災の被災地に対する救援活動報告として沢井功雄会員から報告があった。同会員は、震災直後から自ら被災地や避難所に何度も足を運び、被災者の声に直接耳を傾け法律相談を行ってきた。のみならず、被災者と行政機関とのパイプ役を買って出るなど、従来の伝統的な弁護士的役割に留まらない精力的な活動を行っており、その報告はこれからの弁護士のあるべき姿を垣間見ることの出来る貴重なものであった。
 「問題があるから行く」のではなく、「問題があるかないかそれを探しに行くのが役割」であるという沢井会員の言葉は、全ての会員にとり傾聴に値するものとして多くの参加者の賛同を得ていた。
 第2部は、第1部で紹介された弁護士の公共的活動を受け、そのような活動・使命を果たす弁護士をいかにして育てるかという観点から、パネルディスカッション『法曹養成制度と司法修習生の給費制について』が行われた。ここでは法曹志願者の激減という現状をふまえた上でその現状と対策について、また給費制の必要性についてそれぞれ意見交換が行われた。
 なかでも林義亮神奈川新聞社論説主幹を筆頭にした法曹界以外のパネラーから出された「国民が必要とする法律家の育成は国民の負担とすべきであり、弁護士会はこの問題をもっと外部に向かって積極的に発信していく努力をすべき」という意見には、出席した全法曹関係者は耳が痛かったに違いない。
 第3部では、ビギナーズネット代表萱野唯氏、日弁連宇都宮健児会長、日弁連司法修習費用給費制維持緊急対策本部本部長代行川上明彦氏らによる挨拶がそれぞれ行われ、それぞれの立場から、給費制維持の必要性について熱心に語られた。
 最後に、当会若田順副会長が閉会挨拶で触れたとおり、休憩なし2時間半ぶっ続けのシンポジウムであったが、開会中殆ど離席者・退席者がなく、大盛況のまま閉会したのが印象的であった。
(会員 三橋 潔)

第17回弁護士業務改革シンポジウム開催 〜多数の会員の参加を〜
 日弁連主催の「弁護士業務改革シンポジウム」が、11月11日にパシフィコ横浜で開催される。
 業革シンポは、市民の法的ニーズに対応するため業務の拡充・改革を目的として、昭和60年に東京で開催されて以来、1年おきに各地の単位弁護士会の協力を得て開催されてきた。特に司法改革後は、弁護士人口の増大に対応した事務所経営のあり方や、弁護士業務の拡大等に焦点が当てられてきており、これまでは、日弁連の業務改革委員会の小委員会やPTが分科会を主催してきた。しかしながら、法曹人口の増大に加えて、弁護士が関わっていく業務の内容や、弁護士像も多様化してきており、業務改革は業革委員会だけの問題ではなくなってきている。
 そこで、今回のシンポでは、弁護士の業務を色々な角度・視点から捉え、今後の会員のみならず市民にも役に立つ情報を提供し、また弁護士の業務を見つめ直すために、両性の平等や高齢者・障害者の権利委員会等の協力を得て、11もの多彩な分科会が開催されることになった。
 事務所の経営や業務の効率化で悩んでいる会員には法律事務所のマーケティング(第1)、事務職員の育成(第3)、ITの活用(第5)といった分科会が、弁護士として働き方に疑問を感じている会員にはワークライフバランス(第9)が、新しい分野に挑戦していきたいという会員には地方自治体における弁護士の役割(第2)、第三者ガイドライン(第4)、高齢化社会におけるホームロイヤー(第10)といった分科会が、弁護士の利用促進や業務開拓に興味のある会員には弁護士保険の範囲拡大(第7)、中小企業のサポーター(第8)といった分科会が、民事裁判における権利実現の実効性に興味のある会員には民事裁判の活性化(第11)が、そして、将来の弁護士の業務に夢を持ちたいという若手法曹の会員には「夢」の実現!(第6)の分科会が、多くのアイデアやヒントを与えてくれる。
 横浜で行われる初めてのシンポを成功に導くべく、是非とも多数の会員が参加していただきたい。
※申込みは下記アドレスからWEB予約で申し込めます。
https://amarys-jtb.jp/symposium/
(日弁連第17回弁護士業務改革シンポジウム運営委員会事務局長 飯田 直久)

山ゆり
 7月11日、政府の地震調査委員会は、東日本大震災の影響で三浦半島断層群で地震の発生確率が高まった可能性があると発表した
私は3日後の14日に三浦半島に旅行に行く予定だった。選択肢は3つ。(1)出掛ける(2)中止する(3)行き先を変える。さて皆さんなら、どうされるか
地震の予知であれば(2)の方が大半か。しかし、発表内容は、調査委が今年1月、三浦半島断層群で最大M6.7程度の地震が30年以内に発生する確率を最大11%と評価していたのが、その確率が高まった可能性があるというものである。地震がいつ起きるかは分からない柿
果たして日本では、どの程度、地震の予知が可能なのだろうか。研究の進展を望むが、告知の責任の所在、国民の行動予測等、検討すべき課題も多い。イタリアでは、地震を予知できなかった政府の災害対策委員会のメンバーが過失致死傷罪で起訴されたと聞く
結局、私は地震発生時の対処方法を考えつつ予定通り旅行に出掛けた。幸い無事帰宅できたからよかったものの、いつ地震が起きるか分からない状況には変わりない。余震が続く中、得られる情報の中で防災対策をする他なく、迅速な情報公開を期待したい。
(大河内 万紀子)

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