横浜弁護士会新聞

2011年10月号  −2− 目次

神奈川県から暴力団を排除! ─暴力団排除条例制定─
 暴力団対策は、暴力団対策法の制定などにより一応の効果を上げてはきたものの、暴力団の勢力はまだまだ衰えることはなく、社会の様々な分野において悪影響を与え続けている。神奈川県においても、暴力団員等による銃器発砲殺人事件が発生するなど、依然として、暴力団が市民生活や企業・行政活動に対する重大な脅威となっている。
 このような背景の中、社会全体で暴力団を排除していかなければ抜本的な対策にはならないとの気運の高まりを受けて、福岡県を皮切りに全国47都道府県全てで暴力団排除条例が制定され、神奈川県においても、4月1日より暴力団排除条例(以下「県条例」という)が施行されている。
 県条例では、(1)暴力団事務所の新設の禁止(拠点の根絶)(2)少年の暴力団事務所への立ち入らせの禁止(人的資源の根絶)(3)暴力団への利益供与等の禁止及び県の公共工事等すべての契約からの暴力団等の排除(資金源の根絶)など暴力団対策が整備されている。また、県公安委員会は、暴力団への利益供与を行った事業者に対して、利益供与を行わないように勧告し、勧告に従わなかった場合は事業者名などを公表する、と規定されている。これは、暴力団の活動を助長する行為を禁止するとともに、事業者側から暴力団との関係遮断を促進することを目的としている。
 しかし、県条例だけでは、市町村の契約事務や給付金の給付等における暴力団排除などには及ばないため、神奈川県下の33市町村すべてにおいても、暴力団排除条例が今年度内に制定される予定である。当会からも、7月7日に、未制定の市町村に暴力団排除条例の早期制定を求める会長声明が出されたことは、県内全市町村制定に向けての大きな推進力となった。
 このように、神奈川県における暴力団対策は、暴力団排除条例によって県民と行政が一体となって社会から暴力団排除に取り組む体制が整備されたといえるが、実際に効果を上げられるかどうかは今後の運用にかかっている。
 我々弁護士としては、暴力団排除条例という新たな法的ツールを与えられたのであるから、県民や事業者が暴力団との一切の関係を遮断する法的支援を行い、神奈川県から暴力団を排除する一翼を担っていく必要がある。
 会員が具体的事案で悩まれた場合は、民暴委員会としてバックアップする体制はできているので、いつでも相談して頂きたい。
(民事介入暴力対策委員会委員長 菅 友晴)

原発損害賠償説明会を開催 被災者の悩みに寄り添いたい 自主避難者も諦めないで!
 神奈川県内で避難生活を送っている被災者を対象とした原子力損害賠償説明会・個別相談会が、当会東日本大震災災害対策チームにより、7月21日に川崎市とどろきアリーナ、8月6日に横浜市旭区のひかりが丘住宅で行われた。
 説明会では震災や福島第一原子力発電所事故で避難を余儀なくされた人たちの東京電力に対する損害賠償請求について、(1)救済の基本法である原子力損害賠償法(原賠法)の解説(2)原子力損害賠償紛争審査会が取りまとめた指針の内容に沿って誰に請求できるのか(3)どのような範囲の損害が請求できるのか(4)自主避難者の損害は請求できるのか(5)請求に必要な資料の収集と被災者が自身の損害を記録するための記録ノートの作成方法などの説明が行われた。
 県内には約1500名の被災者が生活をしていると言われており、この中には、原発事故のために自主的に避難している方も多くいる。しかし、紛争審査会が取りまとめた指針には自主避難者の救済が明言されていないために、自主避難者の中には被った損害について証拠集めを諦めてしまった方もいるという。
 そこで説明会では、指針にも自主避難者の救済について配慮する旨が述べられていること、原賠法も電力事業者に対して相当因果関係のある損害の賠償を義務づけていることを中心に説明が行われた。
 また、説明会の後は希望者に対して個別の法律相談会が実施された。
 一人でも多くの被災者の悩みに寄り添えるよう、説明会は今後も県内各地での開催が予定されている。
(会員 飯田 学史)

相隣関係を考える 関東十県会夏期研修会 in 浦和
 8月27日、浦和ロイヤルパインズホテルにおいて、約300名の出席者を得て、平成23年度関東十県会夏期研修会が開催された。テーマは「相隣関係をめぐる法律と実務─現代型相隣紛争解決」である。
 まず早稲田大学法学学術院の山野目章夫教授の基調講演が行われた。地役権はローマ法のservitus(セルビテュス)を語源としていることや、相隣関係の訴訟では請求の趣旨について悩むことが多く、個々のケースごとに考えて行かねばならないことなど、具体的な事例を取り上げての講演であった。
 次に、埼玉弁護士会の会員から各テーマにそって報告が行われた。囲繞地通行権、隣地使用権、私道へのガス管・水道管の設置の問題、震災と土地境界、日照権、公害等調整委員会の利用、眺望・景観の利益、マンションに関する近隣紛争等、いずれも身近な問題について詳細な報告がなされた。
 これら埼玉弁護士会の研究の成果は、「相隣関係をめぐる法律と実務─現代型相隣紛争解決の手引」と題する書籍となって出版された。相隣関係は、我々弁護士が日常の法律相談においても受けることが多い分野の相談であり、今回の研修会は、出版された書籍とともに大変参考になるものと思われる。
 来年の夏期研修会は新潟県弁護士会の担当で、テーマは「保証」についてである。
 より多くの会員の参加を期待したいとの新潟県弁護士会砂田徹也会長の挨拶で今年の夏期研修会を終えた。
(会員 岩田 恭子)

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