横浜弁護士会新聞

back

1999年10月号(3)

next
論壇
修習期間短縮と当会における弁護修習の実情
司法修習委員会委員 橋本 吉行 
一、本年四月に司法研修所に入所した五三期司法修習生は全体で七九七名であり、この期から修習期間が従来の二年から一年半に変更となった。修習期間短縮については賛否多数の議論が噴出したテーマであり、司法改革の流れの中で今後さらに検証していかなければならないが、ここでは四カ月から三カ月に短縮されたことにより大幅にカリキュラムを入れ換えた当会の弁護修習の取り組みの実情を報告する。
二、弁護修習の柱は個別指導担当弁護士のもとに生の事件処理に接することにあるが、事件のバラツキを補いまた弁護士の使命と職務についての理解を深めることを目的として合同修習も必要である。しかも今回の改革では、法が対象とする分野やその周辺分野に関連した施設等において修習生が自ら体験し参加することを通じて社会の実相に触れる機会を得るよう社会修習を五日程度実施することを司法研修所や日弁連から求めてきている。カリキュラム策定上は期間短縮の中でもいかに修習内容の質的水準を維持するかという点に腐心したが、修習後半は個別事件の帰趨も見え修習生にとって事件処理の醍醐味を体感できる機会が増えるので、合同修習は弁護修習前半に多く実施することとした。
三、合同修習としては従前消費者保護等の一般講義を七コマ用意していたが、これを六コマに減らし、また各日一コマ宛であったのを一日に二コマ実施する日を二日設け、講義日数としては七日から四日に減少した。その結果法医学などは他庁の実施状況を踏まえ割愛することとなった。しかし取り上げたいテーマは目白押しで、民事執行・民事保全・倒産処理、知的財産法、少年問題、税務会計等本年実施できなかったものも多く、今後夜間修習(修習生には任意選択の方法になろう)の実施も検討されなければならない。
四、今回声高に導入された社会修習については、その位置づけ、内容が必ずしも定まっているとは言えないが、当会としては知的障害者施設における介護の一泊体験学習を取り入れた。これは修習生二〜三名が施設に行き職員と同じ立場で障害者の作業、食事、入浴等の介護を行うものであり、本年が初めての試みでその成果が期待されるところである。また支部に修習生を一日滞在させ各支部の特色を生かした見学等を実施する支部修習も今年から始めている。このほかにも県環境科学センター、損保協会見学等を実施した。
五、具体的に報告したい事項は多数あるが、紙面の都合上省略せざるをえない。五三期の横浜配属は三五名であるが、五四期から修習生全体の数は一〇〇〇名となり、横浜地裁の庁舎建て替えが終わると横浜には一挙に六〇名を越える修習生が来るものと思われる。いかに実のある弁護修習にするかは今後の創意工夫にかかっているところである。

シリーズ司法改革 その4
横浜商工会議所 對馬好次郎会頭に聞く
−裁判官の任用システムとして現状はキャリアシステムとなっています。これを法曹一元として弁護士などの経験者から任用すべしとする意見もありますが、いかがお考えでしょうか。
 弁護士から裁判官に任官させるシステムも必要だと思います。キャリアシステムのエリート裁判官だけでは市民感覚から遊離するのではないでしょうか。特に権力から独立しているかどうかが重要です。独立していないと本当の意味での法の支配にならず、法治的国家になってしまい危険です。権力や人事権から独立して、きちんとした判断の尺度を持った人材に裁判官になって頂きたいと思います。
 法曹一元として弁護士から裁判官を選ぶとすると弁護士の教育も必要になります。人間としての成長を実現するシステムを作っておかなければなりません。
−最終的な市民参加という意味で参審制も視野にいれるべきですが、いったいこれは可能でしょうか。
 陪審制は、情報メディアから隔絶された人や例えば民族意識にとらわれない人が選ばれないと偏頗な結果となりかねません。大いに研究する必要があると思います。
−経済界から見た場合、司法の現状についてどの様な問題点がありますか。
 問題は二つ。第一は裁判が長いということ。とりわけ特許関係などはスピーディーな解決が求められます。時間がかかると訴訟費用も膨らむし、解決しても時間の経過によっては無意味になってしまう。
 第二は、立法、行政に対する事前チェックができないかということ。例えば、大店法が廃止されて街づくり三法が制定され、政令指定都市では市が運営して街づくりをしていくことになりました。こうした場合にその取扱者の決定の尺度が地域市民から見た街づくりという法の目的に合致しているかどうかの事前チェックができないでしょうか。事後チェックでは間に合いません。
−規制緩和・市場原理・自由競争を司法の分野にも持ち込もうとする意見がありますが、どのようにお考えでしょうか。
 注意しなければならないのは、一人勝ちすると最終的には市民が犠牲になるということ。ここに自由競争の限界があります。アダムスミスは、「国富論」の前に「道徳情操論」という書を著していますが、彼の言う自由とは相手をつぶしてはいけないとしてそこに一つの限界を置いています。また、原則自由競争で最後は「見えざる手」によるということですが、その場合でも「国家に必要とされる司法をのぞいて」という限定が付きます。非常に面白い指摘で司法の役割を言い当てています。
−弁護士会の司法改革ビジョンについてのご意見をお聞かせ下さい。
 私たちの意見とさほど大きな違いはありません。但し、市民に身近な司法と言われても、具体的なことが良く分かりません。弁護士の感覚と市民の感覚との食い違いがあると思います。
 また、全く素人の市民が司法に参加すると、法の支配が覆され、法治国家になってしまう危険性もあります。
  (注)「法の支配」と「法治国家」
    「法の支配」とは、市民の権利・自由を保証する法によって、権力 (行政)を制限しようという考え方です。「法治国家」はさまざまな 意味に用いられますが、ここでは、法の内容の是非を問わず、法律の 根拠があれば市民の人権を制限してもよい(「悪法も法なり」)とい う考え方として使われています。
−現在、弁護士の広告は広く規制されていますが、どのようにお考えですか。
 弁護士の広告は自由化すべきだと思います。悪徳弁護士の広告が問題になり、そうすると業界全体の信頼性の問題にはなり得ますが、だからといって広告規制は必要ないと思います。
−法曹人口をもっと増やすべきだとの意見についてはどのようにお考えですか。
 法曹人口を増大させる必要性はあるのでしょう。問題は人材育成システムの拡充です。ロースクールも偏ったものになっては困ります。人間の生きる倫理をどこに置くかという哲学的発想は、企業経営や人間が生きるために必要なことですが、特に司法に携わる人には必要でしょう。一般市民より高い倫理性が求められると思います。
 大学・大学院教育を充実させて、法を運営する人の中でも、本当の意味での幸福論(街づくり三法の基本にもあるような環境を中心とした幸福論)を身につけさせ、その前提で更に専門的な教育をして行かねばなりません。数の問題もありますが、重要なのは、人をどう作るかということです。
(インタビュー岡本秀雄会長) 

ご案内 広告規制問題と会員集会 10月27日に会員集会
 新聞その他マスコミ報道により既にご存知の会員も多いと思うが、去る五月一〇日、日弁連弁護士業務対策委員会から弁護士と業務の広告に関する最終答申書が日弁連に提出された。この最終答申書は、昨年五月一五日付中間答申書に対する各単位会の意見や昨年夏に実施した英仏における弁護士広告の実情調査の成果等を踏まえて、同委員会が検討を重ね作成したものである(乾俊彦会員が調査先の仏で帰らぬ人となったのは記憶に新しいところである)。
 最終答申書は、弁護士による法的サービスを受けるために必要かつ十分な内容と量の情報を広く国民一般に提供するという視点から、(1)弁護士個人の業務に関する広告は原則自由とし、例外的に許されない場合及び広告方法等広告に関する必要かつ基本的な事項については会規を新設して規定する(2)広告が許されない場合の例示や解釈の基準等についてはガイドラインを作成し、適正な運用に努める(3)弁護士会の広報活動については会則を改正して国民が弁護士を活用するための情報提供に努める、とするものである。
 ところで、現行の弁護士の業務広告に関する規程等は昭和六二年四月に施行されたが、これ以降、弁護士が置かれている環境の変化には厳しいものがある。また、国民の視点で弁護士個人の業務広告を見直した場合、現行の広告制度及び弁護士会の広告活動は、国民が必要とする情報の提供手段として極めて不十分と言わざるを得ない。国民がその権利の実現を図り、その権利が具体的に保障されるためには、利用者が必要とする情報が十分に提供されていなければならないことは当然のことである。
 そこで、十分な内容と量の情報を広く国民一般に提供するため、現行の広告規程を全面的に改め、弁護士の業務広告は規制を必要とする合理的な理由がない限り自由とする必要がある。これにより、広告の受け手である国民が弁護士による法的サービスを受けられ、弁護士へのアクセス障害を克服し、二割司法の改善が期待できるものと考えられる。
 ちなみに、答申は広告を一般的に規制でき、かつその必要性を合理的に説明ができる場合として、(1)弁護士の品位又は信用を損うおそれがある(2)客観的事実に合致していない(3)誤導・誤認のおそれがある(4)誇大又は過度な期待を抱かせる(6)特定の弁護士又は法律事務所と比較する(6)法令や会則等に反する広告、の六項目を挙げている。
 今期理事者は、司法改革をテーマに掲げているが、広告制度の見直しは弁護士へのアクセス障害を克服し、より身近で親しまれる弁護士(会)というスローガンに合致するものと考える。しかし、会員の業務に直接的な影響を与える重要なテーマであることに鑑み、弁護士の業務の広告を原則自由にすることの是非、または原則自由としたときの制度の運用のありかた等について、会内合意と意見集約を計る必要がある。そこで、一〇月二七日(水)午後二時より五階大会議室において会員集会を開くことにした。多数会員の参加と活発な意見交換を期待するものである。
 なお、日弁連は、本答申を受け既にワーキング・グループを編成し、会則改正案・会規案及びガイドラインの策定作業を開始しており、本年度中に臨時総会を開催のうえ最終的な意見形成を行う予定とのことである。
(副会長 佐藤 修身) 

▲ページTOPへ
内容一覧へ